鷲の時艱は至らない
久しぶりに小説を書き始めました。
塾に行って暇つぶしに考えた時に「第二次世界大戦でもし日本が先に原子爆弾を完成させていたら?」とふと思い、それをここに書き綴ります。
1942年6月 東京-三宅坂
MI作戦は失敗に終わったことにより、参謀本部の空気は張りつめていた。
上層部は理解していた。これは敗戦の予兆であると。
「MI作戦は失敗した。空母を四機失ったということはどうなるのか理解ぐらい誰でもできるだろう。」
淡々と述べ、頷きあう参謀達。しかし、突然ノック無しで男が入ってきた。
「ここは関係者以外は立ち入りを禁じているはずだが、どこの奴だ?」
そう問いかけると、男は見渡しながらこう言った。
「私もあなた達と同じですよ。報告に上がりましたもので」と、笑いながら言ってきた。
そして男は設計図らしきものを取り出した。
「これは米鬼の技術者の一人が漏洩した物です。まだ未完全な設計図段階ですがね」
設計図を見る限り、参謀達は「弾頭か?それとも暗号機械か?」と問い詰めあう中、男はもう一個の紙を取り出した。
「こちらは私達技術者が開発し量産している新たな爆弾の設計図です。先程の設計図を複製し、改良したものです」
精密に作られていると素人でもわかる設計図だった。この爆弾の威力は今存在する爆弾をはるかに超えると男は言う。
「この爆弾は一工夫されてるんですね。この中心に原子って書かれていますでしょう。この原子が引き金となって最大の火力を発揮します」
参謀達は目を光らせた。この兵器を使えば米鬼の忌まわしきMI作戦の汚名を返上できる。
「もちろん、貴方たちが望むように作ってください。既にハワイ近くに配備しています。後は貴方たちの指令だけです」
そうして男は去っていった。
一人の参謀司令官は即座に通信で命令を下した。
「アサヒ ヨゾラ キアイ タカラ ネガイ ミナト」
男の兵器設計図には「ネガイ」とはしっこに書かれていた。
同月 明朝六時十分 真珠湾
真珠湾には轟音が響いていた。サイレンと航空機のエンジン音だった。
「No way...」
そう問いかける暇もなく、ハワイは日本と米鬼の戦場と化した。
ホノルルビーチは地獄と化し、叫びがどこまでも響いていた。
市街地は炎に包まれ、多くの人は第二の真珠湾攻撃と非難しながらも逃げていた。
真珠湾付近では、日本の空母で既に待機していた。
「真珠湾で使うのですね?もし戦況が悪化したら即座に行くということでよろしいですか?」
司令は頷いた。通信で声が響く。
「ネガイ サクラサクヤ」
そして司令は即座に命令を下した。
「願をすぐさまハワイに投下せよ」
そして空母から願を持つ戦闘機が出動した。
一方ハワイでは
次第に米鬼が優位になり、日本の空軍のパイロットは追い詰められていた。
「このままでは我々は死んでしまう。いつになったら願いは届くのか...」
そうつぶやくと、通信が響いた。
「エド サクラサクヤ」
そのことを聞いたパイロットは目の色を変え、即座に退却した。
米鬼は「腰抜けのジャップだったか」と嘲笑っていた。
しかし、一機の航空機はハワイ上空を飛んでいた。
彼は叫んだ。
「願投下!」
その瞬間に大きなものが切り離された。市民たちは気づかなかった。それが終焉であるという事に。
上空500米で大きなものは光を放った。
ハワイ諸島は存在を失った。
米鬼が完成させた原子爆弾の設計図は漏洩し、大日本帝国によって開発されていた。
ハワイへ投下したことによって、太平洋の要衝を一瞬にして蒸発させ、アメリカ合衆国の地図を永遠に書き換えた。
東京-三宅坂
新聞やラジオでは既にこの事が多く回っていた。
「真珠湾戰、完全勝利 布哇消滅
これによりアメリカは50州持つ国から49州持つ国へと変わってしまった。
資源は多く確保できたと軍部は正式に発表しており...」
ラジオでこの事が響いていた。
参謀達は顔を見合わせていた。
「これで、MIの汚名は返上できる。米鬼はもう終わりだろう。既に都市の爆撃準備が整っている。」
しかし、誰もが心の奥底で知っていた。この勝利は、世界の均衡を崩すものだと。
アメリカ-ワシントンD.C.
ホワイトハウスでは連絡が途切れたハワイに苛立ちと焦りを感じていた。
「何故だ、何故ハワイから連絡がこない!既に日本軍と攻撃し撃退したと言っていたのに、何故だ...!」
そして最悪な通信が来ていた。
「Hawaii has completely vanished.」
ハワイ完全消滅の知らせだった。表現ではなく、物理的に消滅していた。
死者・行方不明者合わせると40万人越えだった。
そして通信ではこのような連絡も来ていた。
「There is a high possibility that weapons under development have been leaked.」
開発中兵器が漏洩した可能性が高いとの事だった。
このままでは本土に攻撃が来てもおかしくない。
そう感じた時にはもう遅かった。
カリフォルニア地域ほぼ全域に爆撃されていた。
特にサンフランシスコの被害は甚大だった。
日本が開発した原子爆弾である願が投下されていた。
これによりカリフォルニアは一部が欠けてしまった。
翌年にはニューヨーク・ワシントンにまで願の被害が及んだ。
死者は数百万人を超えていた。
軍事都市や主要都市がどんどんと爆撃されたアメリカは降伏を余儀なくされた。
1943年6月 旧ハワイ諸島海上空母 希
アメリカ外交官とアメリカ大統領であるジョージ・W・ブッシュ、日本側は落ちこぼれの外交官のみだった。
アメリカは降伏宣言書に調印し、完全降伏した。
これにより、アメリカの複数地域が日本の支配下に置かれることになった。
このアメリカ降伏のハワイ宣言により、連合国はどんどんと傾いていく。
既に、連合国では混乱が広がっていた。
イギリス ロンドン
「おい!ニュースを見たが一体ハワイ宣言とはどういうことだ!ミッドウェーで勝利したんじゃなかったのか!」「イギリスは大丈夫なのか!」
叫ぶ老若男女であふれていた。
この事態にイギリスは大混乱だった。
チャーチルたちも混乱していた。
「おかしい!あり得ない!こんなのプロパガンダだろ!そうだと言ってくれ!」
「全てがうまく行っていたはずなのに、覆されるだと...?」
全員叫んでいるが、虚しい声しか響かなかった。
ドイツ ミュンヘン
既にヒトラーはアメリカ降伏の知らせを聞き、即座に日本側と連絡をした。
「ハワイ宣言によってアメリカが降伏したのはしっているが、例の新兵器をソ連に落としてほしい」
この連絡をきっかけに、日本軍は独への支援とソ連への攻撃を開始した。
満州近くからロシア方面に航空機を出動させた。
ソ連 モスクワ
モスクワでは比較的平和な生活が続いていた。
青空を眺める市民、談笑をする警察官。
「ハワイ宣言が出されたらしいが、俺達にとっては知ったこっちゃねえ。ドイツを殴り殺せばいいだけだろ?」
他愛のない会話が聞こえる中、一人は空を見ていた。
「...あの飛行機みたいなものはなんだ?」
空では轟音が響いていた。
「願投下」
そうして大きなものが下へ向かっていった。
空を見ていた市民は眺めるだけしかできなかった。
「あぁ、神よ。これは現実か」
そしてモスクワ一帯が火の海と化した。
空を裂く閃光。人々の心にも恐怖の影が落ちた。
それは単なる兵器ではない。世界の秩序を根底から揺るがす願いだった。
モスクワの子供たちは泣き叫び、母親たちは必死に逃げ惑った。
だが空の光と地上の炎、全てが現実であることを誰も否定できなかった。
日独軍とソ連の戦いはソ連の惨敗に終わり、ソ連も降伏宣言であるニュルンベルク宣言を出した。
ソ連は独領ソヴィエトシティとしてナチスドイツに併合された。
ドイツ ベルリン
日独伊三国同盟を調印した場所であるベルリンで、状況の完全把握をする為の会合が開かれた。
既に枢軸国側が優勢で、アメリカの多数の地域が日本によって併合され日本領亜米利加に。
ソ連は日本とドイツの共同作戦により、ドイツに完全併合されソヴィエトシティとなった。
イタリアも軍事作戦を開始し、アフリカ一部地域を併合していた。
「ここからは枢軸国じゃない。枢軸圏と化すだろう」
枢軸圏の絶対時代宣言だった。
自分の思想が少し交じってるかもしれません。
暗号以外やハワイ宣言以外は出来る限り再現史実に近づけています。