【6】
入院中は穏やかな時間が流れていた。
ー心を癒やすには良い場所かも。
トイレの帰りに窓をながめ、青空を見る。広い庭があって、皆、横になったりしていた。手紙でも書こうと思い、ナースステーションを訪れる。
「あの、便箋と封筒をください」
中学の時の同級生に今の現状を書こうと思った。その子は井上レミといい、いつも連絡をとりあっている仲だった。
「ーはい、どうぞ」
「ありがとうございます」
ようやく、明るい声が出せ、ホッとする。ここでの生活は悪くはなかった。食生活もしっかりしており、少しふっくらとしてきた。
ーなんて書こうかな。
自分のベッドに戻り、テーブルに向かう。いろんなことが頭に浮かび、どれを書こうかまよったが、素直に入院していることを書くことにした。
ー写真も送ろうと。
看護師を呼び、スマホに撮ってもらう。後で両親にプリントアウトしてもらおうと、楽しみに手紙を書き始めたのだった。
「ーどうもありがとうございました」
貴子は母親と一緒に頭をさげる。無事、退院することができるのだった。
「気をつけてね。薬を飲むのを忘れずに」
仲の良かった看護師に言われ、貴子はしっかり頷く。病院を後にすると、向かったのは大学だった。今日から寮生活に戻るのである。
「ーただいま」
自分から声をかけると、寮の皆が注目してくる。室内は暖かく、冬の香りはまだ近くになさそうだった。
「大丈夫?」
皆、貴子に近寄ってきたりする。しかし、どこか、よそよそしかった。
ーしょうがないか。すぐ忘れるだろうし。
貴子は1人納得すると、笑顔を浮かべながら、皆に声をかけたのだった。
それからは雄也が居る部活は避け、バイトと学業に集中することにした。
ー次の恋をしよう。
もう前を向くしかなかった。女が居るように、男もたくさん居る。雄也だけが男じゃないのだ。
ーまたおしゃれして、綺麗になろうと。
学生生活を楽しく過ごしたいと、貴子は気持ちを切り替えたのだった。




