【4】
「ー申し訳ありませんでした」
翌日、学校の応接間に貴子と雄也、それにそれぞれの両親が呼ばれた。全員、ことがことだけに、深刻な顔つきをしている。中間にゼミの先生と校長先生が入っており、頭を下げたのは雄也の両親だった。
「おい、お前も頭を下げろ」
男親に言われ、雄也が無理矢理頭を下げてくる。貴子はそれを怯えた様子でながめてくる。好きだけど、怖かった。また殴られるんじゃないかと思うと、緊張するのだった。
「…今後一切、娘と関わらないでください」
貴子の父親がかたい声ではっきり言う。2人で別れ話になるのではなく、大人達によって、無理に別れさせられそうだった。
「…あの」
「お前は黙ってなさい」
男親にたしなめられ、貴子は渋々と口を閉ざす。せっかく、勇気を出して言おうとしたのに、封じられてしまった。
「2人とも良い大人なんだから、分かるね」
ゼミの先生達に言われ、両方納得がいかないまま、頷く。貴子の目からは自然と涙が溢れてきた。心拍数もどんどんあがっていく。暖かくもないのに、額から汗が流れてきた。
「…貴子。おい、貴子!!」
両親の声が遠くなる。意識を保つのが難しく、気絶してしまったのだった。