9.従魔のルール
オアシスの街 トシリーニ
ヒューゴを背に乗せてドリシャーがゆっくり歩いて街の入り口に着いた。
バレッジ副団長が、城門の兵士に声をかけて、詰め所に入っていった。
手続きが終わってバレッジ副団長が帰ってきた。
ヒューゴが呼ばれ、街に着いたらドリシャーから降りて、首に手を当てながら歩くように言われた。
なるほど。いろいろルールがあるみたいだ。
ドリシャーをまだ冒険者ギルドで獣魔登録していないので、冒険者ギルドに行った。バレッジ副団長が一緒に来てくれた。
(ピンキーちゃんの)バース隊長から連絡が入っていたため、獣魔登録は簡単にできた。
そして、バース隊長は俺のランクをEランクからCランクにあげるよう指示を出していて、冒険者ギルドカードが交換になった。
***
「ティモスバレッジ団」
「勇者ウィズドンと獣魔シャー 聖剣ウズとの出会い~
闇の王に盗まれた聖なる石ナイラを取り返す旅へ」
人気女優カラファウムは、王様の娘で、ウィズドンと恋人役だ。
のぼりを上げて、羊皮紙のポスターを張り、広場に大きなテントを張った。
上演の時には、ヒューゴは出演者の護衛をやった。ファンからの花束や、貴族からの招待の手紙や、イチャモンやらからガードする役だ。
バイドンとラモンとヒューゴで上演中はぐるぐると歩き回った。
占い師オクトムバスチウムは、テントの一角で気配を消している。貴族から何通も招待の手紙が来ていた。
いずれティモス団長か、バレッジ副団長が同行して行かなければならないだろう。その護衛も誰かが行くようだろうが、ヒューゴはまだ成人したばかりで経験が浅く、貴族の付き合いはよくわからないので、ラモンかバイドンの仕事だろう。
ドリシャーは、近くの森で食事中だ。
連日、超満員で大盛況だった。みな楽しそうに目がキラキラしていて、屋台もいっぱい出て、おいしいにおいに満ち溢れていた。
「ヒューゴ」
ティモス団長から声をかけられた。
「ドリシャーだが、貴族と会っておとなしくしてくれるか?」
「いや!おそらく絶対無理です。まだ、団員の数人が、やっとなでられるところまで来たところで、それでも長くさわると唸られます!」
「そうか。ざんねんだ。もふもふを触りたいという貴族の方がいてな。お断りしておくよ」
「ありがとうございます!」
***
獣魔の大猫は、勇者ウィズドンの獣魔シャーとともに憧れの的だ。
ヒューゴは、子猫に干し肉をあげたときまさか獣魔になってくれるとは思ってもみなかった。
通常は力でねじ伏せて獣魔となるはずなのに、ヒューゴはドリシャーと戦ったことはない。
よくはわからないけど、ドリシャーとの生活はといつも満ち足りていて、もう離れることは考えられないことは確かである。
---「父さんの愛した女性「ドリー」とウィズドンの獣魔「シャー」で、おまえの名前はドリシャーだ」
ヒューゴはドリシャーとの出会いを思い出しながら、かがり火の明かりをたよりに、テントの一角でドリシャーのブラッシングをしていた。マリカラがやってきて手伝ってくれたが、ドリシャーが触ると唸るので、主に抜けた毛の始末だ。
「今日は大盛況だったね。屋台の串焼き食べた?うまかったよ」
「うん。バレッジ副団長がいっぱい買ってきてくれて、みんなで食べた。おいしかったね。
はぁ~、わたしも早くセリフ付きの役をやってみたいなぁ」
マリカラは、「街の住民」とか、「通りかかりの魔物」とかそんな役をやっている。
「俺からしてみれば、今のマリカラの役だって俺には無理だぞ。どきどきで心臓止まっちゃう」
「何言ってんの?ドリシャーとあんなすごい戦いをしてるのに」
「戦いは必死だからなぁ。でも舞台は俺には絶対無理。とけちゃう」
「あはは」
ブラッシングも終わって、じゃあねと別れた。ドリシャーは気持ちよさそうに寝ていた。
『おやすみ』
『おやすみなさい』
ヒューゴはドリシャーを枕にして、マントをかぶって休んだ。




