3.ワイバーンの群れの討伐
ダクタイ
冒険者ギルドでは深刻な問題が起きていた。
「ワイバーンの群れがこちらに向かっている!」
「Cランク以上の冒険者は全員出動だ。街を、家族を守るぞ!」
「おう」と答える複数の真剣な声。
このとき、冒険者と元冒険者のCランク以上が全員徴収された。
出動した冒険者の2/3は死亡した。ジス(アキヒ)とルイーゼ(ヒュウ)の二人はその戦いで帰らぬ人となった。
帰ってきた両親の損壊がひどかったらしく、ヒューゴにはカバーをした布越しからしか合わせてもらえなかった。
***
街を守った英雄の子供として、30人近い子供が孤児院に引き取られた。ヒューゴは7歳。その中のひとりだった。
両親の武器とアイテムバックは、孤児院に取り上げられてしまった。
ジスはアイテムボックスを持っていたが、死亡と同時に何も取り出せなくなってしまった。
ヒューゴは孤児院の畑を耕しながら、父ジスを思い出していた。
「隣の国のロンドのダンジョンで結構儲かったんだよ」
とよく言って、アイテムボックスからきれいな宝石を見せてくれた。
「4人のパーティでよく冒険したんだ」
と楽しそうに話していた。
「母さんには言うなよ。悲しませたくないからな。母さんはヒューゴを生んでくれた大切な人だ。・・・でもな、ここだけの話」
とこっそり耳にひそひそ話。
「母さんと結婚する前にすっごい美人と結婚していたんだ」
と自慢していた。
「ドリーはすごい綺麗だったんだ」
と遠い目をして言っていた。
ヒューゴはなんとなく胸がズキンと痛み、父さんのその姿を忘れられなかった。
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ヒューゴは孤児院で読み書きと計算を教えてもらった。成績はやっと及第点という程度だった。毎日木剣で素振りと的打ちをやり続けた。
8歳になったら仲間でパーティを組んで、近場で薬草採取や弱い魔物狩りをして冒険者ギルドに売って小銭を稼いだ。
属性が火魔法らしく、攻撃に使ってみたらできたので、少しずつ訓練している。
スキルはよくわからなかったので、いつか神殿に行って「鑑定」してもらいたいなと思っていた。結構お布施が高いみたいなので金額次第かなと思った。
大人になったら、両親の出身国の隣国ガイダント王国に行って、いつかロンドに行ってみようと心に決めた。
父ジスと母ルイーゼの故郷とダンジョンを見てみたいと思うようになった。
(ダンジョンは、実力が無いと死んでしまう。まずは実力をつけてからだな)
***
ヒューゴが14歳の頃、森で薬草を探していたら小さい猫を見つけた。手持ちの水と干し肉を分けてあげたらものすごい勢いで食いついてきた。
「父さんの愛した女性「ドリー」とウィズドンの獣魔「シャー」で、おまえの名はドリシャーだ」
(母さんごめん)心の中で優しかった母に謝った。
(でも父さんの秘密の話がどうしても忘れられないんだ。あの目が)思い出したら、胸がズキンとした。
小さい猫をなでながら名前を付けて、ふところに入れて温めたら、腹が膨れたからか、すやすや寝てしまった。
できるだけ毎日森に生肉や干し肉を持って行った。小さい時はいちどに少ししか食べられなくて、昆虫とかも捕まえて食べていた。
ぶーんと飛ぶ丸くて小さい虫をジャンプして、ピョンぱくと食べるのが面白いみたいで、よくピョンピョン飛び跳ねていた。
「ドリシャー」と呼ぶと、
『なに。ヒューゴ』と頭の中に聞こえた時はびっくりした。
(これって聞こえるのか?)
しばらく待って考えただけだと返事が無い。
『聞こえる?』
ドリシャーを意識して念じると
『聞こえるよ』
と返事が返ってきた。
(・・・なんだこれ)
ヒューゴは、孤児院にある魔物の本を読んでみようと思ったが、もしかしたらテイマーかもしれないともうっすら感じていた。
しばらくしてドリシャーは、自分で狩りができるようになると、小さい獲物から大きい獲物まで採って食べていた。




