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28.終話 グリーに戻る

宿屋を引き払って、食料と水と少しの野菜を買い込んで、ヒューゴはロンドを後にした。最後までなんとなくなじめなかったなと残念に思った。


はやくグリーに帰りたいと思い、ドリシャーにまたがってできるところまで進みテントを設置して休むことにした。


「気楽でいいな」

小川でドリシャーが取ってきたホーンラビットを解体しながら、たまには野菜スープも食いたいなと作ってみた。


うーん。なにかが変だけどまあ、食べられないことは無い。けど、うまくはない。

俺には料理の才能は無いのかもしれないなと感じた。


肉を焼くのはうまくなったので、ドリシャーと一緒においしく食べた。夜は交代で見張り、テントで休んだ。



何日かそんな風に進めば、あっというまにグリーの国境に着いた。冒険者ギルドカードを出して、門をくぐると久しぶりの砂漠が遠くに見えた。


ここからは、目をつぶったって帰れるさ。ヒューゴもドリシャーもうれしくてそのまま砂漠に突入して突っ走った。


途中で疲れて、森に寄って1日休むことにした。ドリシャーは、レッドボアを探しに行った。俺はテントを張って、小川で体を洗ったり、洗濯をしたりして過ごした。


ドリシャーは気が済んだら帰って来て、テントですやすや寝てしまった。

ヒューゴはブラッシングをドリシャーが寝ているうちにすませた。



***

やっとダクタイに帰ってきた。ドリシャーから降りて手を首に添えて、街の入り口で冒険者ギルドカードを出した。よく知っている兵士なので、形ばかりのチェックで、顔パスみたいなもんだ。

「ヒューゴ。お帰り。院長が心配していたぞ」

「ほんと?じゃあ冒険者ギルドの前に孤児院に行ってみようかな」


「ドリシャーはこのまま森に行くから。街に戻るときは俺が迎えに来るから」

「おうよ。わかった。兵士みんなに通達しておくな」

ヒューゴは兵士に礼を言ってドリシャーと別れてひとりで街に入った。



「院長いるかい?」

孤児院で声をかけたら、新入りの子供が出てきて、ヒューゴの知らない子だった。


院長がくたびれてはいるが、にこにこしながらやってきた。

「おかえり。無事に帰ったんだな」

「うん。結局なにもわからなかったよ」


「そうか。残念だな」

「うん。でも、ひととおり見れたから満足さ」


院長に、街で見かけた自分とよく似た見た目の人たちや、通りかかりの商人の護衛をしたことや、冒険者ギルドで両親のことは何もわからず、剣に記載されていた人たちの情報しかわからなかったことを簡単に話した。


院長は、うんうん言いながら聞いてくれた。



冒険者ギルドに行くと、ヒューゴ宛にティモスバレッジ団から護衛の依頼が入っていた。

2日前に隣国から帰って来ていて、首都グリードの先のオアシスの街を、国境の森に沿って進んでいる。いつでも追いついてきてくれとのことだ


王都親衛隊からも入隊の要望が入っていた。首都グリードの詰め所は、いつでも空いているそうだ。


解体した魔物の毛皮や角を売って小銭を手に入れた。貸金庫を借りて、宝石類を預けた。目録はロンドの副ギルドマスターが書き出してくれたものがあったのでそれを出した。ギルドの職員がびっくりしてギルドマスターを呼んできた。とりあえず金貨20枚払って10年保管を頼んだ。


宿屋をひと部屋押さえたが、ドリシャーが帰ってきたら従魔用の宿舎をつかえるように頼んでおいた。


体を洗ってさっぱりして、洗濯して部屋でベッドに倒れ込んだ。ドリシャーは帰ってくる気配はない。


俺の生きる場所は、今はここなんだと実感する。


いつか父さんや母さんみたいに生きる場所が変わるかもしれないけど、でも今はここで生きていこう。


まずは旅団に雇ってもらおうかな。


そのうち、パーティを組めるような人たちに会えたら面白いかもしれないな。

ドリシャーが仲良くできるのが一番の問題だけどね。


そんなことを考えながら、うとうとと眠ってしまった。



夕方目が覚めたら、腹が減ったので食堂に向かった。

「よおー。おかえり」

バース隊長が手を振ってきた。10人全員が厚切りの肉を食っていた。宿屋の外には、猫が10匹伏せをしていた。


「迎えに来たよ。他に行っちゃう前に確保するからな」

「隊長。俺、旅団に挨拶に行こうかなって思っていたんだよ」


「そうだと思ったんだよ。お前さんは戦い方を知らなすぎるから、まずは1年間親衛隊で訓練しろ。

そのあとに、そのまま親衛隊を続けるもよし、護衛になるもよし、好きにしてみろ」

バース隊長が気持ちよく立ち上がった。


トリニティ副隊長は、首をふりふり声をかけて来た。

「好きにできるかどうかはわからないけど、君が戦えないのはわかるから、ドリシャーちゃんに負担ばかりかかる戦いにならないように、自分を鍛えるべきじゃないかな。それに、ドリシャーちゃんはその頃はじめての発情期に入るんじゃないかな」


ダイニさんとゴルディさんは何も言わずにこにこしている。他の隊員たちも、とりあえずじっとしますという風だ。


「ティモスバレッジ団に護衛の依頼をもらっていて、お世話になった方々ですので、お伺いをたてないと・・・」

ヒューゴが濁していると、バース隊長がにかっと笑って席を立った。


「では、これから全員で行くぞ!」

「?」


「これから、全員?隊長、俺、ハラ減ってます」

「そうか。では・・・、夜明けとともに出発だ。用意しろ」


「そんな、ドリシャー捕まえなきゃ。うわ、洗濯物乾かない」

あっ風魔法のブロアーのちょっと強い奴やってみよう。


ヒューゴは明日の朝に間に合うように、大急ぎで食料の用意をして、今日の夜のうちに森に向かいドリシャーと落ち合うことにした。



おわり

明日、追記を1話更新して終わりになります。

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