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23.ダクタイに戻る

プールの街を出てしばらく進むと、遠くに森が見えてきた。もうすぐダクタイだ。やっと帰ってきた。道中、魔物は時々来るが、盗賊には合わなかった。


『森が見えてきた。行ってもいい?』

『街に着くまで待ってくれよ。ダクタイに着いたらすぐに行っていいから』


『わかった。赤いイノシシ食べるんだ』

ドリシャーがわくわくしているのが分かった。



ダクタイの街に着いて、副団長がいつも通り手続きに行く。この街では宿屋に泊まるようだ。


『もういいぞ』

『やった!』

ドリシャーは、さっさと出かけて行った。


俺は旅団とここで別れることにした。団長が報酬を麻袋に入れてくれた。ずしっと重かったので中を見たら、予定より多い金貨が入っていた。


「多すぎませんか?」

「ドリシャーの分だよ」

団長がにこにこしていた。


「ありがとうございます」

「このあとどうするの?このまま護衛を続けてくれると嬉しいんだけど」

副団長もやってきた。


「隣国のロンドに向かいます。父と母の故郷を見てみたくて。そのあとのことは何も考えていないんですけど、隣国に行くのにドリシャーを連れて行くのって無理ですかね?」


「冒険者ギルドカードにちゃんと登録してあるから問題ないけど、泊まる宿屋とかを探すの苦労するかもね。

場合によっては、小さいテントとかを持って行った方がいいかもしれないね」


「なるほど。あとで道具屋を見に行ってきます。あと、占い師に借りた金貨を返したいんですが、会えますか?」

「借りた金貨?」


「はい。神殿で鑑定するのに金貨2枚必要であきらめようとしたら、貸してくれたんです」

「そうか。宿屋にいるはずだから行って来たらいい。しばらくは休んでいるだろうからな」

「はい。行ってきます」

ヒューゴは一礼して宿屋に行こうとしたら、団長に腕をつかまれた。


「いつでも雇うから帰ったら冒険者ギルド伝えてくれよ。ギルド間で連絡もらうようになっているからね」

「ありがとうございます」

ヒューゴはもう一度礼をして宿屋に向かった。


占い師のオクトムバスチウムに会いに行ったら、けがの治療が済んだ二人の護衛が付いていた。

ふたりは俺に礼を言って握手してくれた。


「この街を救った英雄の子供なんだってな。よその国から来たのに戦ってくれてありがとうな」

「・・・はい。あの、占い師に借りたお金を返したいんですが」

ヒューゴはすこし誇らしかったけど、顔に出さないように気を付けて金貨を2枚見せた。


「いま聞いてやるよ。待ってろ」

護衛が急いで聞きに行ってくれた。


「入っていいってよ」

「ありがとうございます」


扉を開くと椅子に深々と座ったオクトムバスチウムがいた。くたびれているみたいだけど、にこにこしていた。

「なんだい。返しいくれるのかい」

「うん。報酬出たから。助かりました。ありがとうございました」

ヒューゴは金貨を2枚手渡して礼を言った。


「ずいぶんあらたまってまぁ」

「世話になったときは、きちんとしろって孤児院の院長に言われているからね」


「そうかい。元気でな。また一緒に旅ができるといいねぇ」

「そう言ってもらえると嬉しいです。これからガイダントのロンドに向かうけど、帰ったら冒険者ギルドに連絡することになっています。そうしたらまた会えるかも」


「年寄りの楽しみだよ。土産話をたのむよ」

「うん。わかった」

土産話と言われてびっくりした。俺の話を聞きたいっていう人もいるんだなとちょっと嬉しくなった。


帰りがけにニンスイが、手書きでヒューゴが書いた借用書を返してくれた。すっかり忘れていて礼を言った。

「忘れていたよ。ありがとう。世話になったな。またな」

「またね。きっと会いましょうね」

ちょっと気恥しかったけど、出された右手に握手して別れた。


占い師の部屋を出て、宿屋のカウンターに向かった。

孤児院に俺の居場所は無いから、おれも宿屋に泊まろうと聞いたら、もう部屋がいっぱいで空いていなかった。


仕方なく冒険者ギルドに向かった。ドリシャーの獲った魔物の羽や皮などを売りに行った。みな、旅団の料理人がさばいてくれたものだ。

「こんどは、そのまま持ってこれねぇか?骨とか爪とか他にも使える部材があるんだよ」

「俺のアイテムバックだとそこまで大きいのは入らないよ」


「そうか残念だなぁ。大き目のアイテムバックが出たら押さえておくが、値段がなぁ。

金貨200枚で中サイズ、500枚で大サイズ、1000枚で特大サイズがよく取引される価格だが、その時によって前後するけどな」


(そんなに稼げるわけないじゃん。でもそうだよなぁ。ドリシャーが魔物を獲っても今までは旅団の料理人が解体してくれたけど、俺には無理だよなぁ)



孤児院に行ってみて、泊めてもらえないか聞いてみたら、部屋は無いけど、院長の仕事部屋の椅子を並べて泊めてくれることになった。稼いだ金の一部を院長に渡した。


孤児院では、仲の良かったやつらとは一人も会えなかった。奉公に出たり、ダンジョンにチャレンジしたりしているそうだ。


院長と一緒に風呂に入って、背中を流しあったが、院長はこんなに歳をとっているんだなとあらためて感じた。


「俺さ、父さんと母さんのために泣いたことがないんだ。なぜなんだろうな」

急に俺がそんなこと言い出すから、院長はびっくりしていた。


「そうだね。なぜなんだろうね」

院長はゆっくりほほえみながらヒューゴの頭に手を置いた。


その後は、ドリシャーのことや、親衛隊に会ったことや、神殿の様子や、旅団の人たち、占い師の話しをしながらゆっくり風呂に入った。


院長はうなずきながら、時折感心しながら微笑んでいた。


(父さんと母さんの故郷に行って帰ったら、しばらく旅団に雇ってもらおう。魔物の解体は必要だからな。旅団は他国にも行くけど、ドリシャーも行けるのかな?だめならグリーの国だけでも雇ってもらえるといいな)


仕事部屋の椅子はがたがたで、壊れないようにそっと並べて横になった。すこし補強すれば安定するかもしれないから、明日やってみようと考えていたらいつの間にか眠ってしまった。

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