22.砂漠は暑くて寒い
プール
ドンマヒの山をおりて次の街に向かう前に、山の上の方に見つけた洞窟について、ダンジョンかどうかはわからないが、ドンマヒの街の冒険者ギルドに副団長に報告に行ってもらった。
次の街はプール。山から少し離れて進む、砂漠の中のオアシスの街だ。目印が無いときは、地図と方位磁石を使って進む。魔法のアイテムらしい。
あまりの暑さにマントを被って日陰を作る。
『暑い。大丈夫か?』
『うん。あついけど平気』
ドリシャーは平然と歩いている。
『すごいな』
この砂漠に個体的に適しているんだろうか?ドリシャーもグリーの民も暑さに強い。
(俺は情けないけど、慣れないんだよなぁ)
ラモンが目に入ったが、俺と同じでマントで日陰を作っていた。
「暑いですよね」
「暑いもんは暑い。体力を消耗するわけにいかないからなぁ。あいつらは何か体のつくりがちがうのかな」
泣きごとのようにラモンがつぶやいた。
グリーの民の見張りは、帽子もかぶらず生き生きと見回している。
「今日中にプールの街には着けないから、途中でテントを張って休むからな」
副団長がみんなに聞こえるように声をかけた。
ラモンがため息をつきながらヒューゴの肩に手を置いた。
「冷えるんだよね。砂漠の夜は。街にテントを張る時よりずっと冷える。中に一枚多く着ておけよ」
「わかった。ありがとう」
夕方早めにテントを張って、交代で見張りに立って休んだが、ドリシャーが一緒にいてくれていたので、くっついたら温かくて何事もなく朝を迎えられた。
(ドリシャーってそんなに強いのかな。魔物が寄り付かないものな)
夜明けとともに、簡単な食事と用を済ませて、交代で休みながらどんどん進んだ。二日目の夕方にはオアシスのプールの街に到着した。
副団長が見張りの兵士に声をかけて、詰め所に入っていった。兵士が来てくれて、みんなのギルドカードを確認してくれた。
街に入り、みんなくたくただったが、中央広場にテントを張って、簡単な食事をして、今日のところはそこで休んだ。トイレもあったので、女性陣は大喜びだった。
ドリシャーも街に入り、テントの隅で休んだ。
翌朝、夜明けとともに舞台を組んでポスターを張った。
ドリシャーも山も森も回りに無いのでテントの隅でずっと寝ていた。ヒューゴは丁寧にブラッシングしたが、毛玉がいっぱいできていて時間がかかった。
(けっこう自分で毛づくろいしてても、からんじゃうところがあるんだな)
ドリシャーは旅団のみんなとも慣れてきて、ちゃんと頼めば、すこし触っても怒らなくなった。(あくまでもすこしだけど)
マリカラが抜けた毛の片づけを手伝ってくれた。
「もうすぐお別れだね」
「そうだな」
「この後は、隣国のベルナに行くんだって」
「そうか。俺はガイダントに向かうよ」
「そうなの」
「また会えるといいな」
「そうだね。この抜け毛もらってもいい?洗って布で包んで針刺しにしたいんだ」
「へえ。そんな使い方もあるんだ。でも臭くない?」
「よく洗うから大丈夫だよ」
マリカラは嬉しそうに抜け毛を麻袋に詰めていた。この袋ごと洗うのかな。麻袋は充分ケモノ臭かった。
(これはこれで、魔物除けになるかもな)