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20. 女の子の涙と脅威

砂漠の東 山際の街 ニシシハ

ティモスバレッジ団は、首都グリードでの興行を終えて山沿いの東の町ニシシハに向けて出発した。

往路は砂漠西側の海側を通ったが、復路は砂漠東側の山側を行く予定だ。


ニシシハの街に着くまでの道は、魔物は時折来たが盗賊には合わなかった。

すんなり到着したニシシハの街は、山に近いので水が豊富で、麦畑が広がっている。王都の食を支えているのか、いろいろな野菜も多く栽培されている。


また副団長が街の入り口で衛兵に挨拶して入って行った。しばらく皆で待っていると、柵で囲われた街の様子がよく見えた。


小さい街ではあるがにぎやかで、大人はみんなよく働いて、子供は楽しそうに大人の手伝いをしている。



副団長が衛兵とともに戻り、街の中央の広場に案内された。広場にテントを張り、看板を設置した。


テントを張った横に、首都でいろいろと買い込んだ商品も並べられた。道すがら少しずつ販売していく予定なのだそうだ。


料理人が野菜をいっぱい買い込んできた。さっそく調理された煮込み料理やスープやら野菜料理がとてもうまい。


ドリシャーは街からすぐ出て、山に向かうというので、一緒に街の出入り口に向かった。

ドリシャーと別れて広場のテントに戻ろうとしたら、7~8歳の女の子が、小さな家のドアからすこし離れたところで立ちすくみ、涙と鼻水でぐしゃぐしゃで、泣きすぎてくたくたになっていた。


ヒューゴは、どんなつらいことがあったんだろうとどきどきしながら聞いた。


「なぜ泣いているの?」


「コックローチがいるの、ひっくひっ・・・」

扉を指さして、辛そうにしゃくりあげる。


見ると、女の子の手のひら程度、まだ大きくなっていないコックローチが、だれかの駆除魔法にやられたのだろうか、よろよろしてそこにいる。


「やっつけてあげるから泣かないで」

「~~~」

こくこくうなづきながらしゃくりあげている。


ヒューゴは、短剣を出して、サクっと切断して、使わなくなった麻袋に入れた。

「俺が持っていくから、もう大丈夫だよ」

「~~~」

こくこくうなずきながら家の扉に飛び込んでいった。


どれだけ長いことそこに居たんだろうか。


ヒューゴはいいことをしたのか、どうでもいいことをしたのかよくわからないけど、旅団の女の子たちはとてもたくましいので、不思議な感じがした。



***

テントでの演劇が終わって、ヒューゴが警備の仕事に立っていたら、あの泣いていた女の子が母親と手をつないで、にこにこしながらテントの客席から出てきた。


(おっ、笑ったらすごいかわいいなぁ)


「本日はありがとうございました」

ヒューゴは母子の両方に声をかけた。

女の子はヒューゴに気が付いて、気恥ずかしそうに会釈をしてきた。



(いいね。笑ったらこんなにかわいいんだな)

ヒューゴは手を振ってテントに戻った。



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