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14.神殿にお参り

まだ、交代まで時間があるので、神殿に向かうことにした。街の中心に王様の大きな居城があって、街の北のはずれに神殿がある。


乗合馬車が巡回していて、銀貨2枚で行くことも帰ることもできるようだ。


宿屋の前で乗合馬車が停まったので急いで乗り込んだ。銀貨2枚渡したら、手にスタンプを押された。帰りもこのスタンプを見せればそのまま乗れるそうだ。


すでに数人乗っていた。若い男女のカップルや、黒い髪の老人男性と付き添いの若い男、冒険者だろう20歳過ぎの男性。


この馬車で、グリーの民の特徴がないのは、ヒューゴと黒い髪の老人だけだ。


「冒険者初めの、聖なる石と聖剣にお参りか?」

冒険者の男性に声をかけられた。グリーの民独特の浅黒い肌、白い縮れた短い髪、大き目な獅子鼻だった。


「はい。成人したので。冒険者登録したばかりです」


「初々しいのう」

白い肌で、白いものが混じっているが黒い髪の老人がつぶやいた。

「おじいちゃんもお参りしたの?」付き添いが聞いた。


「いや。わしはよその国から来たから神殿には行ったことが無かったのだ。死ぬまでにいちど行ってみたくてな」

老人は弱々しく笑った。


付き添いの男は、全体的にグリーの民の特徴はあるのだが、肌の色だけすこし白っぽかった。


若い男女のカップルは二人で、外を指さしてはあそこに行ってみよう、あれはおいしそうと楽しそうにしていた。


「おふたりは神殿に婚姻の申し込みかね?」

老人が聞くと、ふたりで


「はい」とはにかみながら答えた。


いろいろな人が神殿をお参りするのだなと膝をかかえて外の景色を眺めた。いろいろな店があって、お客さんが行き来している。みんな歩く速度が速くて、急いでいるように見える。


洋服が欲しいな。ドリシャーに乗っても楽な奴。ゆったりとした服と下着を探してみようと思ったけれど、金はそれほど持っていないので、報酬をもらってからかな。


そんなことを考えていたら、神殿の入り口に到着した。

降りると、あまりの大きさに唖然とした。端が見えないほど幅の広い階段の昇りつめた先に、石積みの入り口があった。

周りにこれでもかと、女神様とか花とか水とか動物とか魔物とか何かストーリーがありそうな配置で彫ってある。


(これはちょっとよくわからないな。聖なる石ナイラと聖剣ウズをお参りしてさっさと帰ろう)


ヒューゴはたくさんの彫刻の中をどんどん進んでいくと、いちばん奥の魔石で照らされて、きれいなロープが張られている場所に着いた。

きれいに磨かれた大きな石に文字が刻まれているが、ロープの場所で結界が張られていて、手を伸ばしても阻まれてしまった。


つるつるに磨かれた石には


「聖なる石ナイラと聖剣ウズ

   この下に眠る    」


とだけ書いてあった。お布施の置き場所があったので、手持ちの銀貨を1枚置いた。


この地下のずっと深くに祀られているのだなと、左手を右の胸に置き頭を垂れてお参りした。


さあ、冒険者の始まりが終わったぞと颯爽と出口に向かった。


途中で「鑑定」の順番を待つ人たちを見た。近づくと、「鑑定 1回金貨2枚」と書いてあった。

(これならキッパリあきらめもつくな)とくるっと踵を返して出口を出た。

並んで帰りの馬車を待った。たくさんの人が待っていたが、馬車も次から次へと入ってきた。

(これなら、昼前に帰れるな。飯食って見張りの交代も楽勝だな)

と考えていたら、乗合馬車の順番が来た。手に押してもらったスタンプを見せて颯爽と乗り込んだ。


「おにいさん。この方をエスコートしてくれるかい?」

「え エスコート?ってどうすればいいの?」


「下に降りて、そうそう。で、手を取って支えてあげて、先に上がって引いてあげる。できるじゃん」

「はあ、言われた通りにやっただけです」


「じゃあ、この人も頼むよ」

「・・・」

ヒューゴは黙って全員を馬車に乗せた。というか、俺以外全員女性ってなによ。


とても賑やかな馬車の中、ヒューゴは膝をかかえて必殺寝たふりでごまかそうとしたら、

「おにいさんって、今朝大きな猫と歩いていなかった?」

ヒューゴより少し年上らしい女性にひそひそ声で聞かれた。


「・・・」だまってうなずいた。


まあ、そうだろうな。グリーの民の特徴の中、俺の鳶色の髪や目は目立つだろうから、もっと早くに出かけるべきだったな。



***

乗合馬車を降りて、宿屋に戻り食堂に行ったら、ちょうどお昼の営業が始まったばかりだった。一番乗りをしてしまった。


「こちらへどうぞ」

と窓際のカウンター席に案内してくれて、料理は1種類みたいでなにも聞かずに、食事のトレーが出てきた。たっぷりのお肉と根野菜のゴロゴロ入った白いスープと、白パンと蜜サボテンの身を甘露煮にしたものだ。


「うまい」

ひとり外を見ながらつぶやいて、もくもく食べていたらあっという間に無くなってしまった。


席を立ち、清算しようとカウンターに行くと、


「ティモスバレッジ団の方ですよね。食費はまとめていただいていますので、お支払いは結構ですよ」


と言われた。そんなこと団長も副団長も言ってなかったけどなぁ。


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