11.森の泉
バクハダを出立し、森に沿って進んだが、今日は森の端で野営することになった。
ドリシャーの気配のせいか、ロックバードが逃げていくのを見張りが大声で団長に報告した。
団長のティモスは、ひそかにヒューゴの報酬UPを決めた。
熱い砂漠の中の行進で、みんな暑さに疲れていたので、涼しい森の中で2日くらい休もうということになった。
『休むの?』
『ああ』
『つまんない』
『そうだな。狩りでもするか?』
『やる!』
『待ってろ』
「団長。ドリシャーが退屈しているので、狩りに行ってもいいですか?」
「おおいいぞ。気をつけてな」
「はい」
退屈していたドリシャーと体力のあるヒューゴは、団長に許可をもらって、狩りに行くことになって、森に突進していった。さっそくレッドボアを仕留めた。
『でかいな』
『うん。食べきるのに一日くらいかかる』
『みんなで食べようよ。ドリシャー。料理人を連れてきてさばいてもらおう』
『料理人?』
『うん。生で食べるよりずっとおいしい料理を作ってくれるんだよ。ドリシャー用に特別にデカいステーキを焼いてもらおう』
『生よりうまいの?』
『うーん。生を食べたことがないからなぁ。でも俺は大好きだよ』
『食べてみたい』
『それには料理人を連れてこなくちゃなんだけど、遠いからなぁ。乗せてくれないか?』
『ヒューゴ以外はいやだ』
『うまいステーキ。特大でどうだ?』
『うまいやつ。。。。うまいやつ。。。一回だけだよ』
『よし。行こう』
旅団に戻って料理人を探し出して、レッドボアを解体してほしいとお願いした。
「すこし距離があるので、ドリシャーに一緒に乗ってもらいたいんだ」
「乗る・・・って」
料理人は青い顔と赤い顔を交互にしている。なかなか器用だ。
「ドリシャーにおいしいステーキ特大をごちそうすると約束してくれ」
「わ わかった。最高級のスパイスとハーブを使った特大ステーキを一番にごちそうする!」
料理人は最終的に赤い顔で叫んだ。
ドリシャーに一緒に乗せてもらって現場に行って、そのままレッドボアを解体してもらった。
肉や牙や毛皮はアイテムバックに入れて、旅団へ持ち帰った。
料理人は約束通り一番最初に、ドリシャーに特大の厚切りのステーキを焼いた。血も滴るレアに、秘伝のスパイシーソルトとハーブを振っていた。
ドリシャーはほぼ二口で食べた。
『うまい いつもよりずっとうまい』
『これからは料理した肉を食べるようにするか?』
『いつものも、温かいうちは結構うまい。今のは、たまに食べられればいいよ』
『そうか。今、見ていて焼き方は覚えたよ。あとは振っていたスパイスとかハーブを教えてもらって、コンロとトングとフライパンとお皿を買えばできるなと思ったから、街に着いたら探してみるね』
『うん』
翌日はロックバードを狩って、料理人に褒められた。
ロックバードは、旅団から近かったのでドリシャーとヒューゴで協力して運んだ。途中で声をかけたら、みんな出てきてくれて運ぶのを手伝ってくれた。
「こうなると野菜がほしいなぁ」
料理人はがぜん張り切って、森に入って野草を探した。ドリシャーとヒューゴは護衛に付いた。
水辺でみつ葉をたくさん見つけて、下ゆでしてからいろいろ調理して肉料理の付け合わせにしていた。
森の中に交代で行き、川の水で体を洗い、ゆっくり休んだ旅団のみんなは、とても元気になった。
ラモンとバイドンとヒューゴは交代で護衛に付いたが、川への女性たちの護衛には、一番年配のバイドンが付いた。
2日間あるので、洗濯したり、薬草を探しに行ったり、ゆっくり休んだり、演劇の練習したりと好き好きに時間を過ごし、2日間の休暇が終わる頃には、みんな意気揚々と元気になっていた。




