雨と糞
6/16実話です。
汚い表現があります。
ご注意ください。
下腹部に違和感、不意をついて湧き出るじとっとした脂汗。これから始まる激闘の幕開けだった。
梅雨、しとしとと雨粒が傘を打つ早朝。
ゆうべのサシ飲みの末、友人宅に厄介になった私は家路についていた。
地方の大学に通い始めて3年、留年したので2年生である私は、自分の車を持って以来目をやらなかった街並みを悠遊と見ていた。
自堕落な生活を送る私にとって、朝の散歩というだけで特別感があり心地好い。
山と海が近いためよく見ると独特な街並みであるこの土地は、辺境のため娯楽はないが、のんびり暮らすにはちょうどよかった。
目に映る山麓には雨のためか普段は見れない霧がかかっており、それもまた私の散歩に特別感を与えた。
国道に差し掛かる頃、ふと下腹部に違和感を覚えた。
「食べ過ぎたか、、、」
昨晩の居酒屋で柄にもなく2人前も食べたためか、今日は腹がよく動く。そばに海鮮定食、魚の煮付け。日本酒によく合いとてもうまかった。
さほど危機感のなかった俺は、ほとんど気にすることなく少しだけ道を急いだ。
異変に気づいたのは家まで半分を切ってからだった。
腹の音が体に響く。首元を汗がつたう。括約筋が痙攣
を始めた。
何かがおかしい。
腹痛持ちの私には馴染みのある感覚だった。
下痢だ。
下り龍には2種類ある。
長時間の我慢ができるものとできないものだ。
今回は後者らしい。
私は覚悟を決め、けつに力をぐっと込め下唇を強く噛み、拳を握って気合を入れ、なるべくお腹に負担をかけないような歩幅で闊歩を始めた。
通り道の大学裏門まできて、今日が日曜日であることに絶望した。
裏門がしまっているのである!
どんな早朝でもE1棟だけは開いていることを知っていた私は一縷の望みをかけてそこを目指していた。
あてが外れた私は焦燥感と腹痛に苛まれながらも、私は懸命に自宅への道を急いだ。
大学の近くには主に学生用のアパートがたくさんあった。部屋の数だけトイレがあると考えた俺は、こんなにもたくさんのトイレが近くにあるのに使うことのできない現状を嘆いた。
ふと近くの建物が目に入った。ピンク色のそれは以前大学に遅刻しそうになったとき、一度だけ駐車場を借りたところだった。
その日はちょうど中間試験があり、大学に学生駐車場がないため、時間のなかった私は背に腹は代えられないと自分に言い聞かせながら無断でその駐車場に車を停めたのだった。
帰りに車を取りに行ったとき鳥のフンが車についていたのを忘れない。鳥には括約筋がないのだと軽蔑した自分を思い出した。
過去につぶやいた私の言葉を今の私が反芻する。
そうだ。俺には括約筋がある。
鳥畜生とは違うのだ!
奮い立つ闘志とは裏腹に、容赦のない下り龍が私の体を着実に蝕んでいた。
裏門を通り過ぎ下り坂に差し掛かった。
家まであと少しだ!1階に住んでいて良かった!
心からそう思った。
窮屈な姿勢で坂を下る。
我が家に着く
鍵を開ける
震える右手で自分の部屋の重いドアを開けた。
こんな駄文を読んでくださりありがとうございます。