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コスプレイヤー、異世界に転生しました  作者: 叶夢
一章 王都襲来編
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九話 悠里、窮地に陥る

「用が済んだら、飛んで逃げるつもりか?」


「そうさせてもらいたいけれど、私が逃げたらブルームを滅ぼすつもりでしょう?」


「ああ、魔女さんとその仲間たちと対峙することになった腹癒せだな。」ウバは冷酷な笑みを浮かべて言った。


「それを私が許すと思う?」悠里は強く反発した。


「俺が魔女さんを殺せば、全てが肯定されるさ。」


どうやら、会話での解決は難しいようだ。悠里の魔法のステッキが勤勉な光を放ち始め、徐々に美しい弓の形に変化していく。これが、魔法少女としての新たな力であった。高鳴る鼓動を抑え、悠里は弓に魔力を込め、一筋の矢を生み出す。まばゆい光を放つその矢は、彼女の心に呼応するかのように空中で浮かび上がった。


矢を手に取り、悠里はウバを見据えて心を落ち着け、狙いを定めた。「光の矢ライトニング・アロー!」


矢は弓から放たれ、眩しい光をまといながら飛び出す。空中で華麗に枝分かれし、無数の光の矢となってウバを取り囲む。それぞれの矢は煌めきながら彼の心臓を正確に狙って進んでいった。


ウバは血の気が引いた表情を浮かべ、必死に黒い魔法で迎撃しようとしたが、光の矢は彼の動きを上回る速さで迫っていた。矢はまるで悠里の意思と共鳴しているかのように、彼の防御をすり抜け襲いかかる。光の矢が次々とウバに命中し、その身体に光の閃光が走っていく。彼の表情は驚愕に変わり、まるで時間が止まったかのような感覚が漂った。


矢が肌を貫通するたびに、ウバは痛みと混乱で顔を歪め、動きが鈍くなっていく。「ぐ…あぁ…!」と呻き声を上げ、身体をよろめかせた。光の矢が彼の肉体を貫き、その周囲の空気が熱を帯び始めた。魔法の防御も、もはや無意味に思えた。「なんて…魔力量だ…!」ウバは叫び、恐怖と驚きが交錯する中、必死にその場から逃れようとした。彼はその数の多さに圧倒されていた。


悠里は自らの魔法少女の光の魔法がウバに通じているのを実感し、次に弓を槌へと変化させた。

光の裁きライトニング・ジャッジメント!」ウバの間合いに接近し、槌を力いっぱい振り下ろした。空間が歪むほどの重力波がウバに注がれた。


「ぐ…あぁぁぁぁぁぁっ!俺をなめるな!」ウバは膝をつき、叫び声を上げながら、魔力を増幅する魔法イモーテルを唱えた。彼は盛大に魔力を込めた斬撃を放ち、悠里の魔法と槌を跳ね除けた。


重力波が収まり、悠里はウバとの距離を取るために後方へ後退した。「光の爆発ライトニング・エクスプロージョン!」

悠里は魔法を唱え、指をパチンと鳴らした。親指と中指を合わせ、少し力を込めて押し付け、力強く親指を中指から離す。指が弾ける音が響き、周囲に広がった。「パチン!」という音がウバの注意を引く。


「!?」指の音が響くと同時に、ウバの身体に刺さっていた光の矢がさらに輝きを増した。理解した時には遅く、光の矢は暴発し、ウバは爆炎と爆風に巻き込まれた。爆風が吹き荒れ、周囲の空気が振動する。ウバはその衝撃に弾き飛ばされ、全身が焦げた状態で地面に叩きつけられた。


悠里はその姿を見下ろし、勝利の手応えを感じていた。彼が無動作になったままの姿を目の前にすると、罪悪感が胸に湧き上がった。転生前の自分では考えられないような所業を重ねた結果、今、彼女は魔物を消滅させたり、かつては人間だった者を死に追いやろうとしているのだと実感した。


周囲の煙が晴れ、目の前の光景が信じられないものとなった。ウバの分身が地面に横たわり、その背後に本体が立っていた。悠里はその事実を理解した瞬間、全身が凍りつくような感覚に襲われた。これが本物ではないという思いが、悠里の心の中で響いていた。彼女は自分に言い聞かせようと呟いたが、その声は震えていた。今までの攻撃が全て無駄だったという現実が、彼女の心を重く押し潰す。


ウバの本体は冷ややかな視線で彼女を見つめていた。その余裕のある眼差しに、恐怖が胸を締めつけた。「彼は最初からこの状況を計算していたのだろうか。」悠里は、彼の目にどれほど自分の戦略が幼稚に映っていたのか疑心暗鬼になる。心の中で問いかけても、答えは見つからない。脳裏を駆け巡るのは、今までの戦いの記憶と、ウバの策略に気づけなかった自分への悔しさだった。彼の無抵抗な姿は、悠里の心に重くのしかかる。


戦う理由があるのに、その一方で彼の苦しみを想像すると、悠里は自分が何をしているのか疑問が湧いてくる。この戦いは本当に正しいのか、軽く考えることのできない選択を迫られているように感じた。無意識に後ずさりし、足元がふらつく。ウバの存在が、今や彼女の目の前で現実感を持ち始める。彼の計画が完璧だったことに気づき、逃げ出したい衝動が体を駆け巡る。このままでは、何もかもが彼の思い通りになってしまう。


必死に気を取り直し、悠里はウバに会話を投げかけてみる。「私としたことが、あなたの戦法に気づかないとは。」ウバは冷たく笑みを浮かべた。「魔女さんが俺本体に気づかなかったおかげで、丸焦げにならずにすんだ。」


光の盾ライトニング・フィールド!」悠里が唱えると、周囲に大きな光のバリアが形成される。透明な光の壁に包まれ、敵の攻撃を防ぐための堅固な防御が完成した。彼女はその感触に安堵し、しばらくの間、戦況を見守れると信じていた。胸の奥には何か気にかかるものがあり、それがどうしようもなかった。


そのとき、ウバが悠里の目の前に立ち上がった。彼は物質を取り出す魔法マルアージュを唱え、手に持っていた大剣を宙に浮かせると、見えない力によって空間に吸い込まれていった。


剣が消えた後、ウバは再び手を動かし、重厚な斧を呼び出した。この斧は瞬時に彼の手の中に現れ、しっかりと握られていた。新たな武器を手にしたウバは、戦闘の準備を整えた。「魔法を貫通する魔法ヴァレドール!」ウバは魔法を唱え、魔力を纏った斧を悠里に向かって振り下ろした。


悠里は慌てて光の盾ライトニング・フィールドを展開したが、その攻撃は盾を貫通してきた。本能的に反応し、斧の直撃を受ける前に体を傾けてわずかに回避する。「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!」という叫び声が漏れ、衝撃が肩をかすめ、鋭い痛みが走ったものの、致命傷には至らなかった。瞬時の判断で生き延びたが、心臓の鼓動は高まり、冷汗が背中を流れていく。


地面に叩きつけられたものの、悠里はまだ立ち上がることができた。視界が歪み、周囲の音が遠のいていく中で、ウバの冷たい笑みが彼女の目に焼き付いていた。戦いの行く先が暗い影に覆われていくのを感じながら、悠里はカトレアの記憶を思い出し、次の一手を考えなければならなかった。着せ替えのスキルがあと1回しか残っていないが、使用することに迷う暇はなかった。


**そろそろ、交代ね!**その瞬間、カトレア・アールグレイの声が悠里の頭に響いた。「カ…カトレア?」彼女の言葉は、重要な局面を告げるように感じられた。カトレアは悠里の依代であり、コスプレが似合う可愛い美少女だ。彼女からのコンタクトは、悠里の状況がかなり厳しいことを示唆していた。


悠里の意識が一時的に飛び、何か大きな変化が迫っていることを告げているように思えた。冷静に考えると、彼女はこの状況から抜け出すためにカトレアと協力する必要があると強く感じた。カトレアの力を借りることで、次の行動を決める手助けになるはずだ。

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