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コスプレイヤー、異世界に転生しました  作者: 叶夢
一章 王都襲来編
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四話 悠里、スキルを発動する

悠里は、魔力感知に引っかからず、姿の見えない相手とどう戦うべきか悩んでいた。「物体を消失させる魔法イリアーヌが解けるのを待つのが得策かもしれない」と考えた。しかし、その間にレリアに隙を突かれてしまう可能性も否定できなかった。


決断を迫られた悠里は、手加減することなく勝負に挑むことにした。彼女は着せ替えのスキルを駆使し、元いた世界で放送されていたテレビアニメ『ブラッディハント』の主人公、不知火しらぬいカレンのコスプレに変身した。不知火カレンは赤い瞳と透明感のあるアッシュブラックの長い髪を持ち、左右に分けたおさげ髪が特徴的である。


着用するのは、黒の半袖上下セーラー服と光沢のある質感がかわいらしい赤い蝶結びリボンだ。付与スキルは、急激に身体能力と再生能力を向上させるものだ。悠里は不知火家の妖刀を腰に差すのではなく、手に持って構えた。左手で鯉口こいくちを切り、右手でつか鍔元つばもとを握り、切っ先を中段に構えた。


物体を出現させる魔法アルマーヌ」「物体を実体化する魔法ヴィオーラ


レリアが魔法を唱えると、体長5メートルほどの鉄の巨人アイアンゴーレムが出現した。アイアンゴーレムは悠里に狙いを定め、ゆっくりと距離を縮めて大きな腕を振り下ろしてきた。


悠里は中段の構えから左足を踏み込ませ、腰の動きを大きくして上段に構えを変更した。「一の剣・甲夜こうや!」 正中線を狙った剣撃は、アイアンゴーレムを正面から真っ二つに斬り裂いた。


コスプレ衣装を着ることで、漫画やアニメのキャラクターの必殺技を使用できることに気づいた悠里は、さらに気を引き締めた。


物体を出現させる魔法アルマーヌ」「物体を実体化する魔法ヴィオーラ


レリアが続けて魔法を唱えると、中世ヨーロッパ風の鎧騎士が左右から出現した。全身を覆うプレートアーマーは盾を必要とせず、高い防御力を誇っている。


悠里は右足を大きく一歩後ろに下げ、体を回転させて刀を左から右へと水平に振り抜いた。「二の剣・乙夜いつや!」首を狙った剣撃は、鎧騎士の首を一撃で切り落とした。


倒した際に悠里は両手剣の鎧騎士から背中を深く斬られてしまった。痛みに耐えながら、彼女は鎧騎士の方向を向き直った。「三の剣・丙夜へいや!」 高速で振り下ろされた刀は、鎧騎士の胴体を真っ二つに斬り裂いた。同時に、レリアの物体を消失させる魔法イリアーヌが解けた。


無防備な状態のレリアに対し、悠里は素早く彼女の間合いに踏み込んだ。そして、刀を振り下ろす。重傷を与えないよう心掛けながら、悠里は刀剣の刃を上に返し、反りを逆さにして峰の方を下に向けて振り下ろした。


物体を具現化する魔法エスト!」


カーン!


悠里が振り下ろした妖刀は、レリアが具現化した大剣によって受け止められた。


「……魔剣クロノグラフ!?」


レリアはその大剣が魔剣であることを示唆する言葉を口にした。物体を具現化する魔法エストは、アールグレイ家に伝わる幻想魔法の一つで、思い描いた物体を具現化できるが、一度に一つの物体しか具現化できず、持続時間にも制限がある。


このクロノグラフは英雄クラスの武器であり、時間を操る能力を持つ。魔力を動力源とし、膨大な魔力を注ぐことで時間を停止したり、逆行させたりすることが可能だ。現在、この武器は王都ブルームにある王族ダージリン家によって厳重に保管されているとされている。


「ここまでやれば、お姉さまが魔法を使って相手してくださると思いまして。」


「さっきも言ったけど、私は現在魔法を使えない状況にあるの。そんなハンデをつけて、レリアと私に何かしらの徳があると思う?」


「ありませんね。」


レリアは納得できない様子で首を横に振った。カチッ。時間が停止した世界の中で、悠里の体は鈍くなり、死に物狂いで動かすしかなかった。


「終わりです。」


今度はレリアが振り下ろした大剣を、悠里が妖刀で受け止める。


カーン!


「…な、なぜお姉さまは時間が停止した世界の中で動けるのですか?」


悠里は答えに窮した。基本的に、そのような質問には答えるのが難しいと理解しているが、彼女には一つだけ言えることがあった。


「私はカトレア・アールグレイであり、魔女だからかもしれないわ…」


カチッ。時間停止が解除され、悠里は元の動きに戻ったようだ。どうやら、レリアがクロノグラフで時間を停止できる時間は、それほど長くはないらしい。


悠里は右上段で刃を水平に構え、急激な脚力を使って大きく左足を前に踏み込んだ。


「四の剣・丁夜ていや!」


悠里がレリアの喉元に刀を突き立てようとしたその瞬間、彼女は不敵な笑みを浮かべた。


幻想世界イリュージョン・ベール!」


気づいた時にはもう遅く、周囲が真っ黒なベールに包まれてしまった。


目を覚ますと、視界は真っ黒だった。真っ暗ではなく、完全に真っ黒な閉鎖空間に自分が閉じ込められていることに気づく。幻想世界イリュージョン・ベールは、アールグレイ家に伝わる幻影魔法の一つであり、この魔法は一部の者にしか知られていない。


真っ黒なベールに包まれ、閉鎖空間に閉じ込められた相手は、現実と空想の区別がつかなくなり、感覚や情報が自在に操られた。何もないこの空間では、手を叩いたり声を出しても反響音はしなかった。


レリアの幻想世界イリュージョン・ベールは特殊な仕様のようで、その空間にいるだけで魔力と体力が同時に削られていく。魔力が減少するのは厄介だが、体力が削られるのはさらに困る。


「早くこの空間から脱出しなければ。」


悠里は決意を新たにし、刃をしっかりと構えた。「五の剣・戊夜ぼや!」上段の構えから右上から左下に向かって刀を振り下ろすと、空間に裂け目が生じた。そこから一筋の光が差し込み、どうやらこの隙間を通ることで元の場所へ帰還できるらしい。


「た、ただいま…」


帰還が成功したようだ。初めて使う技だったが、思い切りが重要であることを実感した。


「まさか、魔法を使わずに閉鎖空間から脱出されるなんて…」


「そろそろ…決着をつけましょう。」


体力の限界が迫っている。着せ替えスキルを使って三回も変身できるとは思えない。悠里はお屋敷に戻ってのんびりとお茶を楽しみたい気分だ。再度レリアの幻想世界イリュージョン・ベールを受けて、無事に脱出できる保証はない。


幻想世界イリュージョン・ベール!」


レリアが捨て身の戦略を使うとは考えにくかったが、相打ちを狙っている可能性もある。悠里の魔力や体力を大幅に消耗させ、魔法を解除しようとしているのかもしれない。幻想世界イリュージョン・ベールは膨大な魔力を消耗するため、連続で発動するには大きな負担がかかる。


それでも、レリアが依然として平然と立っている様子に、悠里は驚きを覚えた。悠里は着せ替えスキルを利用して、元いた世界のテレビアニメ『サンタカラーズ』の主人公、クリスティーヌ・ベネットに変身した。金髪碧眼の可愛らしい容姿を身にまとい、特に華やかなライトゴールドの短髪が目を引く。


この赤サンタに変身したことで付与されるスキルは透明化であり、自身や対象を透明にする能力だ。周囲の光や音を遮断することで、他者に気づかれずに行動することが可能だ。


悠里はサンタ袋からリボルバー銃を取り出した。カチャッと音を立てて撃鉄を引き、レリアのこめかみに銃口を押し当てた。


「今日はこれでおしまい。」


レリアは両手を上げて降参の姿勢を示した。


「参りました。スキルを駆使して勝利を収めたわ。でも、次回はお姉さまが魔法を使えるようになってから再度勝負したいと思います。」


「レリア、また一段と腕を上げたようね。」


「恐れ入ります。本来のお姉さまの魔法にはまだまだ遠く及びませんが……。」


「そんなに自分を卑下する必要はないわ。あなたにはもう少し自信を持ってもいいと思うの。」


「善処いたします。」


レリアは真剣な表情で頷いた。「お姉さまが学園に通っている間、私はどうなさるおつもりですか?」


「当面は再び魔法が使えるようになることが目標かしら。」


「明日は私が学園に通うわ。レリアは明後日からよろしくね。」


「わかりました。お姉さまが魔法を使えるようになるために、私なりにお力になります。」


「助かるわ!」


その時、突然、悠里の脳内に直接語りかける声が響いた。


「失礼します、お嬢様方。」


「!!」


思わず驚いた悠里とレリアの前に現れたのは、当家で長年仕えているメイドのルピシアだった。彼女は五年前、カトレアが10歳の頃、ちょうど今の悠里の年齢のときに雇われたのだ。


ルピシアは珍しい空間魔法の使い手であり、目的地に移動する魔法アプソリューションを得意としている。「お茶のご準備が整いましたので、お迎えにあがりました。」


「いつもありがとう、ルピシア。」


悠里は微笑みながら感謝の言葉を述べた。


「お気になさらないでください。いつものことですので。」


ルピシアは柔らかい笑顔で答えた。


その後、悠里とレリアはルピシアの目的地に移動する魔法アプソリューションによって、瞬時に屋敷へと戻った。


屋敷に着くと、ルピシアが淹れてくれたダージリン・ティーと、メイド長のクレアが焼いてくれたスコーンが待っていた。


スコーンを口に含むと、外側はザクザクとした食感が広がり、中はしっとりとしていた。口の中に広がるバターの香りが美味しさを引き立て、悠里は幸せな気持ちに包まれた。


次にダージリン・ティーを飲むと、ほのかな渋みとまろやかさが絶妙に調和し、趣のある口当たりが楽しめた。後味はすっきりとしており、飲みやすかった。


カトレアは、彼女たちから提供される紅茶や手作りのおやつを心から楽しみにしており、その心温まる気遣いに感謝しつつ、期待に胸を膨らませている様子が伝わってきた。

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