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コスプレイヤー、異世界に転生しました  作者: 叶夢
一章 王都襲来編
12/22

一二話 悠里、魔女と共闘する

「コスプレとは何だ?」ウバが問いかけると、悠里は正直に答えた。


「コスプレとは、特定の人物やテーマに基づいて衣装を着たり、装飾を施したりすることで、その人物の姿を模倣する活動のことよ。」


「はあ…なるほど…」ウバは理解に苦しんでいるのか、きょとんとした表情を浮かべていた。この世界にはそのような文化が存在しないため、彼がコスプレについて理解できないのも無理はなかった。


悠里は地道に説明を続けることにした。


「それにしても、見慣れない制服だな。少なくともブルーム魔法学園の者ではないようだ。」


「私の母校、千駄木高校の制服よ。」悠里は答えた。伝統的なブレザースタイルの制服は、青いチェック柄のネクタイが特徴だ。耳の上で結んだツインテールには白のリボンクリップが付いており、可愛らしさを引き立てている。この制服は悠里にとって、自己表現の重要な手段だった。


この制服は悠里の着せ替えスキルによるものではなく、カトレアの幻想魔法である「物体を出現させる魔法アルマーヌ」によって準備されたものである。悠里の記憶が共有されているため、カトレアは彼女が知っている制服を再現できたのだ。


「親切にどうも。ただし、嬢ちゃんがどこの誰であろうと、俺には関係ない。計画を妨げるのなら、ここで排除するだけだ。」ウバの態度は敵対的で、悠里の存在を受け入れる気はなさそうだった。幸い、彼は異世界の知識を持っておらず、悠里の前世についても知らない。


「悠里、何か返事をしてあげなさいよ。せっかくウバがカッコいいセリフを言っているんだから。あなたのせいで台無しよ?」カトレアの心の中の声が急かした。


「ええ〜!? 私のせい!? あのおじさんと共通の話題がないから、何を話せばいいか分からないよ。」悠里はオロオロしながら返した。


「何を言ってるのよ、コスプレ喫茶で働いていた時のコミュニケーション術を活かさないでどうするの?」カトレアがフォローする。


「まあ、確かにそうだけど…」悠里は気持ちを落ち着けながらつぶやいた。ただし、特定のキャラクターとして振る舞うと自然に会話が続けられるが、今は自分自身の状態で相手と接しているため、同じように簡単に会話を続けるのが難しいと感じていた。


物質を取り出す魔法マルアージュ」ウバは手に持っていた斧を空間に収納し、次に大鎌を呼び出した。悠里とカトレアの会話を好機と捉えたウバは、次々と魔法を唱え始める。


魂を分断する魔法ゾルフィーユ」ウバは影をゆっくりと分離させ、自分と同じ姿を現した。


戦場を変更する魔法アルージュ」その瞬間、時計塔広場の周囲の風景が一変し、悠里はブルームの北部に位置する検問所付近に転移させられた。


「カトレアがいないということは、私たちを引き離したということね。」


もし自分がウバの本体か影の片方を引き付ければ、カトレアが両方と敵対するリスクは減るだろう。


その時、誰かが叫んだ。「危ないぞ、お前たち! 夜鎧ナイトスケイルが現れた今、早く安全な場所に避難しろ!」その声は絶妙なタイミングで響いた。目の前の元凶がいるというのに、安全な場所に避難するよう言われても、そこは火の海になるだろう。ウバが悠里をカトレアから引き離した時点で、逃がすつもりはまったくなかった。


ウバは職員の方に近づき、大鎌を振り上げた。

「へっ…?」職員は見知らぬ者から大鎌を振り上げられ、恐怖に目を見開き、動けなくなっていた。ウバに立ち向かうのは危険だが、目の前の人々を守らなければならないという気持ちが、悠里を駆り立てていた。


迷いを振り切った悠里は、着せ替えのスキルを駆使し、元いた世界で流行っていたカードゲームのテーマ、「シスター・シスターズ」のキャラクター、イリスに変身した。白髪紫眼はくはつしがん、雪のように純白な編み込み三つ編みのロングヘア、そして宝石のアメジストのような瞳を持つ姿へと短い時間で変わり果てた。服装は実用性とデザインのバランスが整い、軽量の黒い鎧が動きやすさを重視している。白いフードが神聖さを演出し、短い白いスカートが機動性を高めていた。腰や膝を守る黒いサポートアーマーと白いブーツが、彼女の安全を確保している。


イリスの武器は、十字架を象徴する槍で、守護を意味する羽根のモチーフが施されていた。昼間は優しさと慈愛に満ちた田舎の教会のシスターとして地域社会に貢献し、夜になると「白き悪魔」として冷酷な断罪人となる存在だ。通常、昼間に変身することは避けるべきだが、悠里は自らのキャラクター性が崩れる可能性を懸念していた。それでも、実際には彼女の変身が崩壊することは決してなかった。


悠里は身を挺してウバの前に立ち塞がり、槍の穂で大鎌の刃線を受け止めた。その瞬間、衝撃で足元が煉瓦の地面に沈み込む。「早く逃げてください。あなたがいては戦闘の邪魔になります!」彼女の言葉に我に返った職員は、恐怖に駆られて奇声をあげながらその場を後にした。


「こうすれば、嬢ちゃんは身を挺して彼らを守ろうとするだろう?」ウバは冷淡な笑みを浮かべた。


「卑怯ですね…」悠里は呟くように言った。


「卑怯? 周囲の環境を利用するのは当然のことだと思うが。」


「その魔法、便利だな。変身の魔法か?」彼はさらに興味を示して尋ねた。


「これは魔法ではありません」と悠里は答えた。


「変身するとき、口調や素振りが変わるんだな。魔法ではないなら、何なんだ?」ウバはさらに細かい部分を問い詰めた。


「それについてはお答えできません。詳細を話すと、後々問題になるかもしれませんから。」悠里は、一度も会ったことのない相手に自分のスキルについて話すことには、あまり意味を見いだせなかった。レリアにスキルについて相談することにも少し躊躇していた。情報を得るためには、信頼できる人物やカトレアの関係者に限るべきだと考えていた。そのほうが、悠里の状況や背景を理解してくれる可能性が高いからだ。


「嬢ちゃんを始末するのは確定だから教えてやるが、俺は殺した生物の異能を引き継ぐ魔法を使える。」ウバの言葉は、悠里にとって衝撃的なものであった。その内容が恐ろしいものであると感じながらも、悠里は同時に彼の能力についての貴重な情報を得たことに気付いた。「良き情報を得ました。それを聞いた私は絶対に負けられません。」


悠里はカトレアの幻想魔法、『物体を出現させる魔法アルマーヌ』と『物体を実体化する魔法ヴィオーラ』によって形成された存在だった。この魔法のおかげで、一度死んで完全に消滅することはあっても、本当の意味で死ぬことはない。それに対して、彼女が一度死んで消滅する際には、スキルを奪われるリスクが依然として疑問として残っていた。


悠里はわずかに息を整え、槍をしっかりと構え直した。左肩を前にして横向きに立ち、両足を約90センチメートルに開く。右手で槍の末端を握り、左手はその位置から90センチメートルほど離して水平に持つ。腰を低くし、背骨を真っ直ぐに保ちながら、顔を左に向け、顎を左肩に乗せる姿勢を取った。


悠里は冷静さを保ちながら、ウバとの次の一手を見据えた。距離を測りながら、一歩ずつ慎重に間合いを詰めていく。地を蹴って前進し、槍を突き出した。鋭い一撃が空を切り、ウバの胸元を狙う。


ウバはその動きを察知し、大鎌を巧みに操って槍の軌道を逸らした。反撃の機会をうかがっていたウバは、すかさず大鎌を振り上げて横に薙ぎ払った。悠里はその動きを見切り、即座に後退して攻撃をかわす。再びふたりの間に距離が生まれた。


地の槍グランド・ランス!」魔力を用いて地中から無数の槍を生成する技である。これらの槍は敵にとって非常に危険であり、一本でも致命的なダメージを与える。ウバはその動きが素早く、しなやかであり、槍の攻撃を受けることなく次の行動に移る準備を整えていた。


天の槍スカイ・ランス!」今度は空中から無数の槍を生成する技で、槍はウバの周囲を覆うように飛翔する。ウバは大鎌を振るい、次々と槍を薙ぎ払っていった。攻撃を回避されたことで、ウバは悠里の間合いに入り込んできた。間合いに入り込まれた時点で、槍を用いた回避行動ではウバの魔法には太刀打ちできない。


魔法を貫通する魔法ヴァレドール!」ウバは詠唱し、魔力を纏った大鎌を悠里の懐に向かって振り下ろしてくる。「審判の槍ジャッジメント・ランス!」魔力を用いた一発必中の槍の大技で、的中すれば相手を死に至らしめることができる。ウバの魔法によって、魔法同士の衝突もなく、悠里の槍はあっという間に粉々にされてしまった。


ウバの大鎌が一閃し、悠里の身体は真っ二つに切り裂かれる。下半身は失われ、上半身だけが無残にも地面に仰向けで倒れ込んだ。「ああぁあああ〜!!」鋭い痛みが全身を駆け巡り、意識が徐々に薄れていく中、悠里は腕の力だけで上半身を起き上がろうとした。周囲の景色がぼやけ、意識が遠のきそうになるが、最後の力を振り絞り、魔法を唱えた。


星の槍スター・ランス!!」魔力を用いた回避行動を無効にする槍の大技で、対象に確実に命中し、敵がどのように動こうとも、その運命を避けることはできない。槍は、まるで星の光のように輝く光線として発射され、瞬時に対象を貫通する。


魔法を唱えた瞬間、悠里とウバは眩い光に包まれ、視界を奪われる感覚に陥った。その瞬間、悠里の意識は次第に遠のいていった。


——


戦場を変更する魔法アルージュ」ウバの魔法によって、カトレアは時計塔広場の風景が一瞬で変わったことに気づく。彼女は王立ブルーム魔法学園のグラウンドに転移されていた。


周囲には、放課後の余韻に浸る部活動の生徒たちや教職員の姿がちらほら見受けられた。「こうして見ると、悠里の世界の文化が色濃く反映されているわね。」カトレアはふと我に返り、何かに気づいたように呟いた。「一体、誰がこんなに多くの文化を広めたのかしら…?」


その瞬間、背後から突き刺すような殺気を感じて、彼女は思わず振り返った。目の前にはウバが大鎌を振り上げ、まるで狩人が獲物を狙うような鋭い眼光を発していた。恐怖に駆られたカトレアは、反射的に背中をウバの反対側に向けて後退し、回避行動を取った。


「危ないでしょう!まさか、当たったらどうするつもりなの?」


「当てるつもりだし、物思いに耽っている魔女さんにも責任がある。」ウバは淡々と答えた。


「それもそうね…」カトレアは彼の正論に言葉を失った。話題を変えようと考え、彼女はウバに率直に尋ねることにした。「それより、どうして転移先にここを選んだの?」


ウバはしばらく考えた後に答えた。「学園の関係者を人質に取れば、心が変わって自分の命を差し出すと思ったが、その考えは甘かったようだ。」彼の言葉には、計画が思ったよりも難航しているという自覚がにじみ出ていた。


「一分間だけ待ってもらえる?」カトレアが提案した。


「魔女を殺してその力を奪うのが目的なのに、俺が一分間待つ理由が見当たらない。」ウバはつれない返事をした。


「私ではなく、生徒や教職員たちのために待ってほしいの。」


「尚更だ。俺が学園の関係者を人質に取ると言ったから、逃がすつもりだろう?」ウバは無情に笑った。


「それなら、仕方ないわね。力づくでもあなたには待っていてもらうわ。」カトレアは彼との交渉を諦め、実力行使に出た。


物体を具現化する魔法エスト!」カトレアは魔法を唱え、空中から魔剣クロノグラフを具現化させた。彼女はその剣を両手でしっかりと握りしめ、ウバに向かって真っ直ぐ振り下ろした。魔力の消耗を抑えつつ、彼女はウバがいる地点だけに時間停止を限定させた。


「カチッ」と音がした。発動範囲が広がるほど停止時間は短くなるが、逆に範囲を狭めれば停止時間は長くなる。時間が止まった世界で、ウバは完全に動かず、まるで時間に囚われたように静止していた。


「ふー」と少し落ち着いた様子で、カトレアは一息ついた。再び物体を具現化する魔法エストを唱え、魔剣クロノグラフからメガホンへと具現化させた。彼女はグラウンド内の生徒たちの前で、手に持ったメガホンのスイッチを入れた。


周囲には、カトレアやウバの存在に気づいていない生徒もいたが、彼女はその視線を気にせず、顔をしかめながら音量を調整し、声を発した。「皆さん、こちらに注目してください!…あ、」声が大きすぎたのか、数人の生徒が驚いたように目を丸くした。慌てたカトレアは音量を下げ、微笑を浮かべながら続けた。「すみません、少し音量が大きかったようですね。」


再びスイッチを押し、今度は控えめな声で話しかけた。「…ええと、これから重要なお知らせがありますので、よく聞いてください。」観衆が静まり返ったところで、カトレアは口を開いた。「時間がありませんので簡潔にお伝えします。私は今ここで魔王軍の幹部ウバと戦っています。」


「魔王軍の幹部って、そこで微動だにしないアイツのことか?」男子生徒の一人が指をウバの方に向けて尋ねた。「そうです。私の魔法で彼の動きを止めています。でも、魔法が解けるとまた動き出すでしょう。」


カトレアの言葉に、女子生徒の一人が手を挙げて口を開いた。「カトレアさんが動きを止めている間に、みんなで襲撃すればいいんじゃないでしょうか?」


「それはやめた方がいいと思います。私の魔力もほとんど使い果たしているため、私を含めて犠牲者が出かねません。」


「だったらどうすればいいんだ?」カトレアの言葉に、怒りをあらわにした男子生徒が反論した。「こちらで何とかしますので、皆さんは校内から安全な場所へ避難してください。お願いします。」カトレアは深々と頭を下げて懇願した。


「カトレアさんがここまでされるということは、勝機があるということですよね?」同情を抱いた女子生徒が現状を再確認する。「ええ、もちろんです。残った魔力を使い果たして、とっておきの幻想魔法をウバにぶつけます。」カトレアは力強く宣言した。


こうして、カトレアの短くも長く感じられた演説は終了し、生徒や教職員たちは一目散に避難した。まるでサッカーの試合が始まる前の選手たちが一斉に駆け出すかのようだった。


「そろそろ動き出す頃合いね」とカトレアはつぶやいた。「カチッ」と音がし、時間停止が解除されると、ウバは元通り身動きが取れるようになった。


「チッ、俺の時間を止めやがったな。屈辱的だ。」ウバは舌打ちし、怒りを露わにした。彼の顔には、自分のプライドを踏みにじられたかのような憤怒が浮かんでいた。


「この感覚を味わったのは、一度じゃない。」カトレアはその言葉に興味を示した。「時間の魔女に会ったことがあるのね?」彼女の目は、新しい情報を得た探偵のように輝いていた。


時間の魔女ヒルザは、カトレアと同じく現代最強の魔女であり、名に恥じぬ時間魔法の使い手である。自由自在に時間を操り、アイリスによれば、時間を停止したり、逆行させることができるとのことだ。


「ああ、皮肉なことに。再会したら、肉片残さず殺すと心に決めている。」


「過程として、先に私を殺して力を奪っておくつもり?」


「まあ、そういうことだ。魔女さんの力を奪ってから、時間の魔女と再戦するつもりだからな。」


「あら、そう。」カトレアは一瞬の間を置き、次に魔法を唱えた。「幻想世界イリュージョン・ベール!」彼女が魔法を唱えると、ウバの周囲に真っ黒なベールが出現し、前後左右から彼を包み込もうとした。暗闇が彼を飲み込む感覚が広がった。


魔法を貫通する魔法ヴァレドール!」ウバはベールに包まれる直前に急いで魔法を唱えた。魔力を纏った大鎌を振りかぶり、なんとか脱出することに成功した。絶体絶命の状況から、彼は見事な脱出劇を繰り広げた。


成功した瞬間、カトレアは新たな魔法を唱える準備を整え、「無」の閉鎖空間を形成した。その静寂に包まれた空間の中で、彼女は右手をかざし、魔力を蓄え始めた。そして左手では、現実世界から外的魔力と内的魔力を同時に引き寄せた。


この二つの魔力が衝突し、眩い球状の魔力体へと変わった。「幻想虚無イリュージョン・ヴェイン!」カトレアは魔法を唱え、その魔力体をウバに向けて解放した。

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