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コスプレイヤー、異世界に転生しました  作者: 叶夢
一章 王都襲来編
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一一話 悠里、魔女を降臨させる

「どうした? 傷だらけじゃないか。」ルピシアは右腕を負傷し、一方の手で懐から護身用のナイフを取り出し、背後の人物に警戒した。


「そんなに警戒しないでよ。傷に響くから。」アイリスは軽く肩をすくめ、柔らかい笑みを浮かべていた。


アメリアはその表情に少しだけ安心感を覚えた。アイリスのセミロングの青髪は、真夏の空のように鮮やかで、青い瞳と見事に調和していた。その瞳は深い海のように澄んでおり、見る者を引き込む神秘的な魅力を持っていた。


肩から少し外れたオフショルダートップスはカジュアルながらも上品な雰囲気を醸し出し、柔らかな生地が軽やかに揺れて、彼女の自然な美しさを一層引き立てていたが、ルピシアはその美しさに見とれている余裕などなかった。


「ア、アイリス様!?」ルピシアは目の前の相手が敵ではないと気づき、慌てて護身用のナイフを懐にしまった。安堵の気持ちが胸に広がり、彼女はほっと息を吐いた。


「あー、ごめんごめん。普段から魔力の漏れ出る量を調整しているせいで、存在感が薄くてさ。」アイリスは説明した。


アイリスはカトレアを超える膨大な魔力量を秘めており、戦闘以外ではその魔力を抑えているため、一般の人々と区別がつかないほど自然な存在感を保っていた。


「久しぶりだね、ルピシア。」アイリスが言う。


「アイリス様、どうしてこちらに?」ルピシアは質問した。


「僕がここにいることがそんなにおかしいかい?」アイリスは微笑みながら返す。


「い、いえ。むしろ通りかかってくださり、感謝しております。」ルピシアは丁寧に答えた。


「その怪我は大丈夫かい?」アイリスが尋ねる。


ルピシアはその問いに苦笑し、右腕をかばうように抱えた。「大丈夫ではありませんが、アメリア様の方がもっと心配です。」


アメリアとルピシアは、魔王軍幹部のウバとの戦闘で重傷を負っていた。カトレアの助けで二人は戦場から離脱することに成功したが、その心には重いものがのしかかっていた。


「他人よりもまずは自分を心配した方がいいよ。人間の命は平等なんだから。」アイリスはルピシアの肩に手を置き、その温もりを感じさせた。アイリスは魔法を唱えるために目を閉じ、真剣な表情に変わった。


時間を巻き戻す魔法ラディクション」彼女が魔法を発動させると、ルピシアの右腕がすぐに再生されていく。まるで植物が成長するかのように。


「時間魔法ですか?」ルピシアは驚いて尋ねた。

「うん。君の肉体の時間を巻き戻したんだ。時間の魔女ヒルザと戦ったときに、この魔法が再現可能になったんだ。」アイリスは説明した。


「これで元通りですね。試しに腕を動かしてみて。」アイリスが勧めると、ルピシアは右手をグーパーしたり、腕を回したりして確認した。しっかりと再生されていることを実感し、アイリスに心から感謝した。


「ありがとうございます。」ルピシアは感謝の意を述べた。アイリスはカトレアの師匠であり、事象そのものを再現できる魔法を使う存在だった。


「どういたしまして。次は彼女の怪我を治そう。」アイリスは微笑みながら答えた。


「お願いします。」ルピシアは頼んだ。


アイリスはアメリアの側に近寄り、胸部に手を置いて先ほどと同じ魔法を唱えた。すると、アメリアの傷もあっという間に再生されていく。


「彼女はすぐに目を覚ますだろう。ただ、今回大事に至らなかったのは幸運だったけれど、今後は無理をしないように。僕の魔法にも限界があるから。」アイリスは注意を促した。


死者を蘇らせることは基本的に不可能であり、この世に生まれた以上、必ず死ぬのが生き物の摂理である。例外として不死者が存在すれば話はまた別だった。


「この不祥事は愛弟子の警戒不足が原因だと思う。」アイリスが言うと、ルピシアは頷いた。


「カトレア様は正しい判断をされました。私たちでは夜鎧ナイトスケイルの群れを足止めすることはできなかったでしょう。」ルピシアは自分の意見を述べる。


「とはいえ、以前に僕があいつを取り逃がしたのが始まりだったのかもしれない。」アイリスは自責の念を浮かべた。


「アイリス様、カトレア様は魔王軍幹部のウバと戦っておられます。」ルピシアはそのことを伝えた。


「心配いらないよ。愛弟子は、当時の僕よりもずっと強いからね。」アイリスは自信を持って言った。彼女の言葉には、カトレアの実力に対する深い信頼が込められていた。それを受けて、ルピシアは少し安心した表情を浮かべた。彼女はアイリスの期待に応え、カトレアを支えるために自分にできることを考え始めた。


現実に引き戻された悠里は身を起こし、カトレアから教わった魔法の名『解錠アンロック』を唱えた。言葉が空気を切り裂くと同時に、彼女の意識が再び遠のいていく感覚が訪れ、肉体の主導権が悠里からカトレアへと移る前兆を感じた。


その時、悠里の存在が薄れていき、まるで別の誰かがその場に立っているかのような感覚が広がった。カトレアに主導権を移すと、魔法少女のコスプレが解除され、学園指定の制服に戻っていた。どうやら、悠里が主導権を持つ時は幻想魔法が使えず、彼女が持つ時は着せ替えができないようだった。


気がつくと、悠里は再びカトレアの心の中にいた。カトレアと視覚を共有しているため、外の状況を確認することができた。どうやら、カトレアは悠里の行動を黙って見守っている様子だった。転生時にお互いのプライバシーが完全に共有されたことを痛感させられる。


外の情報を確認するだけでは味気ないと思った悠里は、テーブルに残っている紅茶とチョコチップクッキーを手に取った。保温機能のおかげで、ティーポットから注ぐアールグレイは湯気を立て、芳しい香りを漂わせていた。その時、悠里の心はほっと和む。


魔法を貫通する魔法ヴァレドール」ウバが魔力を斧に纏わせ、カトレアに攻撃を仕掛けた。彼の魔法は光の盾ライトニング・フィールドを貫通するが、カトレアはどう対処するのだろうか。


物体を消失させる魔法イリアーヌ」カトレアが唱えると、彼女はウバの前から跡形もなく姿を消した。魔力感知に引っかからないように魔力を抑え、静かに身を潜める。ウバはカトレアが消失した地点に戦斧を力強く振り下ろし、その一撃は空を切った。地面には鮮明な戦痕が残された。


**悠里、聞こえる?**カトレアは心の中の悠里に呼びかけた。


**うん、聞こえてるよ。念話だよね。**悠里は応じた。


**そうよ。念話で話すのは初めてね。**


**魔法を貫通する魔法ヴァレドールの対処法は見つかりそう?**


**まだだわ。あの魔法を受け止めるのは自滅行為よ。**


**【魔女狩り】に勝てそう?**


**勝つわ。私は【幻想の魔女】なのだから。**カトレアの自信に満ちた声が響いた。


**心の中で小さな疑念が芽生える。負けフラグじゃないよね?**


カトレアはその言葉を受け止め、安心させるようにしっかりとした口調で返した。


**フラグじゃないわ。魔王軍四天王の一人を討伐したことを忘れたの?**


**うん、知ってる。カトレアが最強であることも。**


**それが分かっていればいいのよ。**カトレアは少し照れくさそうに笑った。


**ところで、悠里、着せ替えのスキルはあと一回残っているんだったわね。**


**まあ…そうだね。**


**曖昧な返事ね。体力が残っているなら共闘して【魔女狩り】をやっつけたいのよ。**


悠里はここで休息を取って、後の戦いに備えようと思っていた。


**自分の意見を言えるということは、まだ戦う余裕があるということね。どうせ暇なんでしょう?**カトレアは少し冗談めいた様子で言葉を返した。その声には、悠里の冷静な反応を楽しむ余裕が感じられた。


**はあー……戦いが早く終われば、その分早く冒険者ギルドで登録できるから仕方ない。**悠里はため息しながらそう答えた。


**ええ、その意気で頑張りましょう。**カトレアは励ますように言った。


物体を消失させる魔法イリアーヌが解ける前に、カトレアはウバの背後に回り込んだ。


物体を出現させる魔法アルマーヌ」「物体を実体化する魔法ヴィオーラ」カトレアが同時に魔法を唱えると、彼女の隣に悠里が姿を現した。魔法の効果が切れると、一定の時間後には悠里は消滅し、再びカトレアの心の中に戻ってしまった。


ウバは物体を消失させる魔法イリアーヌが解けたタイミングで、カトレアの居場所に気づき、驚きの表情で振り返った。彼は口を開き、問いかける。


「そこの嬢ちゃんは何者だ?式神か?それとも魔女と同等の別の存在か?」


その問いに対し、悠里は少し微笑みながら答えた。


「私はカトレアの式神でも魔女でもない。ただのコスプレが好きな普通の女子高生よ。」

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