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炒飯の極意

 翌日、光癒と沙織里が学校へと出掛けている間、風馬は中華の満腹亭の台所へと立たされていた。


「光癒の侍って事は俺の侍みたいなモンだろ?──てか、光癒が卒業するまでは俺が主君代理になるんだ。ここでの仕事も覚えて貰うぜ」

「・・・いや、俺は自炊とか出来なくて」

「なんでぇ。頼りねえな・・・よっしゃあ!

 俺が風馬の兄ちゃんがひとりでも食って行けるように鍛えてやる!」


 そう言って天月三平に料理を教わりながら風馬は1日を過ごす。


「おわっと!?」

「火にビビるな!中華は火と共にあるんだ!」

「・・・うっす」

「気のねえ返事すんじゃねえ!腹から声出せ!侍が怪異と戦うのと同じで厨房は戦場なんだ!」

「うっす!」


 気合いを入れ直された風馬は手始めに三平から炒飯の作り方を教わる事になる。


「まずは基本的中の基本である玉子と米を使った炒飯だ。まず、卵を割って、しっかりとかき混ぜろ!」

「うっす!」

「溶いたら中華鍋に投入して予め用意した白米を投入して水気を飛ばしながら中華鍋をコントロールしろ!

 中華鍋は侍で言う刀だ!己の目を養い、見極めろ!」

「うっす!解りました!」


 風馬は初めての中華鍋と火加減のコントロールにやや苦戦するも持ち前の技量ですぐに慣れて行く。


「初めてにしては飲み込みが早いな!

 だが、まだまだ爪が甘い!

 次は調味料だ!持っている玉杓子でテンポ良く入れろ!

 調味料の量は舌と経験で覚えろ!」

「うっす!」


 中華鍋の下から吹き上がる火で汗を垂らしながら風馬は勘と舌を頼りに調味料を加え、更に炒めつつ、かき混ぜる。

 そして、頃合いを見計らって出来上がった炒飯を皿に移し、しげしげと眺める。


「どうですか、大将?」

「うん。まあ、見極めは良い。はじめてにしては筋も悪くねえ」


 そう言うと三平は蓮華で炒飯を口へと運ぶ。

 そして、ため息を一つ吐く。


「兄ちゃんも食ってみな?」


 そう言われて風馬も炒飯を食べてみる。

 思っていたよりも卵が固い。米はもう少し水気を飛ばして炒めても良いなと思う。

 何よりも一番の印象は味付けである。

 はじめての事で調味料の量が解らなかったのもあり、味付けが自分で思っていたよりも濃い。もう少し薄味にした方が素材の味を活かせていたろう。


「顔を見りゃあ解る。自分でも納得してないんだろ?」


 三平はそう言うと後ろに手を当てながら語る。


「料理の道ってのは侍の剣の道と同じよ。日々の研鑽があって初めて完成する。

 ただ、違うところは目に見えるし、舌で覚えられるって事だ。

 日々、研鑽して舌を極め、極限を追究する。精進しなよ、風馬の兄ちゃん」

「うっす!ありがとうございます!」

「まだ客には提供出来ないが、いつか、お前さんにも厨房に立って貰うぞ」

「うっす!」

「まずは接客からだ!俺に続け!──いらっしゃいませ!」

「いらっしゃいませ!」

「もっと腹から声出せ!もう一回!」

「いらっしゃいませえ!」

「ありがとうございました!」

「ありがとうございましたあ!」


 ──こうして、風馬は侍兼料理人見習いとして中華の満腹亭で仕事をする事となるのであった。

 後々、顔写真と共に風馬の事は伍光地区のSNSで取り上げられ、料理人として副業をする侍と呼ばれる事で再び話題になるのだが、それはまた別のお話である。

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