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風馬の刀

「風馬さんの刀って竹光っていうものなんですよね?」

「ん?ああ。そうだけれど?」

「それって具体的に普通の刀と何が違うんですか?」


 中華鍋を洗いつつ、最近になって覚えたレバニラ炒めを作りながら風馬は「そっからか」と呟く。

 そんな風馬をフォローするようにフジキが光癒に説明する。


「竹光って言うのはお金のない侍が玉鋼の代わりに使っていた竹の刀身の事っすよ、光癒ちゃん。

 玉鋼自体がロストテクノロジーっすから、いまある刀の材質とは違うっすからね」


 フジキはそう言うと「ただ」と続け、レバニラ炒めを作る風馬を見据える。


「先生の剣は何度、動画を観ても普通の刀みたいに扱っているんですよね?・・・怪異にも効果あるし、公開動画とか観ても普通に切断とかしているし、本当に竹光なのか怪しいっす・・・あ。因みに参考までに自分の刀の材質を教えておくと自分のはクロムメッキってゴルフにも使われている材質なんすよ。結構な値段した割には先生と同じ事は出来そうにないんすよねえ。

 結局、あれはどう言う仕掛けなんすか、先生?」


 フジキが風馬に教えを乞うと風馬は完成したレバニラ炒めをフジキの前にライスとスープと一緒に置く。

 沙織里も三平の作った甘口麻婆豆腐を食べながら耳を傾け、光癒は風馬のレバニラ炒めの感想を呟きながら食べている。


「それについては至極、簡単な話だ。霊気の伝達力の問題だよ」

「伝達力・・・ですか?」

「そもそも、侍の再誕したのは御神体であった刀を神主が振るったのが起源さ。

 平成当初までは御神体そのものを扱う神社なんかが注目されたけれど、御神体の刀を扱うとなると数も限りがあるし、さっきのフジキちゃんの話じゃないが、玉鋼はロストテクノロジーだからね。扱う材質も時代によって変わって来る。現在の材質でヒヒイロノカネを作れって言われても出来ないっしょ?──だから、次に研究されたのが侍の霊力さ」

「侍の霊力?」


 フジキがおうむ返しで繰り返す言葉に風馬は頷いて説明を続ける。


「侍のそのものの霊力は通常の人間より多い。この霊力って言うのは生命力とかのエネルギーの一つだ。それを武器に宿して魔を斬る刀に変換する。

 その伝達力の強さは玉鋼の次に神木、竹に分類される。

 神木でなくても普通の木刀でも僅かながら伝達力を上げる浸透力があるのさ。フジキちゃんのクロムメッキなんかは伝達力ってよりも扱い易さを追求した材質の代物だから、フジキちゃんの技量ってよりも刀そのものとの相性伝達の違いって言うのがあるだろうね」

「成る程。参考になるっす」


 フジキはそう言って風馬の作ったレバニラ炒めを食べ、「にがっ!」と顔をしかめる。


「まだ改良の余地ありか・・・俺や大将くらいだと、この苦味を感じないんだが、やっぱり、今時の子にはまだ苦いか」

「先生って幾つなんすか?」

「28歳くらいだったかな。だから、光癒ちゃん達から見たら立派なおじさんさ」

「その割には最近、楽しそうっすね、先生?」

「ああ。まだまだ俺にも成長出来る素質があるようだからね。料理にしろ何にしろ、覚えるって事をするのは楽しいもんだ」


 風馬はそう言って笑うと他の客の注文を聞きに向かう。

 そんな風馬の背中を見送ってからフジキはレバニラ炒めを食べはじめる。

 はじめは野菜独特の苦味を感じたが、加熱したレバーと食べる事で緩和され、更にライスが程よく進む。

 そんなフジキを見て、沙織里がようやく口を開く。


「・・・フジキちゃん。本当の事を言わなくて良いの?」

「へ?本当の事って何をっすか?」

「惚けても駄目ですわよ。あなた、風馬様に恋をしているのでしょう?」

「はあ。恋・・・なんすかね、これ?」

「あら、違いますの?」


 沙織里の言葉にフジキは腕を組んで考え込むと思っている事を口にする。


「確かに尊敬はしてはいますが、これが恋かって聞かれるとよく解らないっす──って、はは~ん。さては、お嬢。それでさっきから不機嫌で黙っていたんすか?」

「当然ですわ。光癒ちゃんもフジキちゃんも愛しておりますわ。だからこそ、風馬様に嫉妬するのも当然ではなくて?」

「もう、お嬢は本当にわがままなんすから~」


 隣の席で沙織里とフジキのキャッキャするやり取りを見ながら光癒はホッとすると風馬のレバニラ炒めをよく噛んで呑み込む。


(・・・あれ?)


 そこでふと、光癒はある疑問に気付いた。


(なんで、フジキちゃんが風馬さんを好きじゃなくて良かったって思ったんだろう、私?)


 自分の中に生まれた疑問に光癒はひとり、首を傾げるが答えは出なかった。

 そして、それについて答えを導き出すよりも前に沙織里とフジキの3人で一緒に勉強会を開く事で先程の疑問も忘れ、未だに理解しきれていない学園の難問にぶつかり、頭を悩ませるのであった。


 ──少女達の春はまだ遠い。

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