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後ろの人は大丈夫です!  作者: 白桜有歩
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対人恐怖症のボッチに訪れた光り

過去に拘らなくていい。あなたの過ちなんてとうに忘れた。いまはあなたを心配しているぐらいだよ。誰にだってあるよ過ちぐらい。気にしすぎだよ? あなた自身が許せなくても俺は許しているよ。あなたを。お互い苦しかったけどこれからはお互い笑顔で過ごせるような毎日を過ごそう?

悩まんでええ事悩みすぎ。人間関係なんてこういうことありまくりやで?

無理すんな。好きなら好きって言えばいいだけの話。自分の気持ちに正直になって伝えたいこと伝えるのが告白やで? 仲直りしたいんやったら仲直りせんでも俺はあなたを許しとる。そんな堅い話せんでええからな? さっさと胸に飛び込んできて好きでもいいやがれよ。

昨日は散歩してたぐらいやで脳天気になー。あなたが過ちを気にしていても俺は、今日は何作ろうかなーと今日の献立を考えとるよ。過ちなんて気にしても仕方がない。いまを生きているのに毎日悩んでたら人生勿体ないで? 過去に拘って前進めてないのは人生損しているからな? 大手振って早きーや? 待ってるで。

エミは隠している中学生時代に起こした罪を。

だからバレないように華咲高校に入学して早々、ボッチになる事を決め込んだ。

でも、エミに優志と日向が弁当を一緒に食べようと誘いがあり受け入れた。

 過去の罪に自責の念に苛まれる。


 過去の罪で私自身を戒めて、一人、苦悩する。


 罪を犯した自分が悪い、と誰かの癒しを求めずにさ迷い、光に照らされる道を拒み、滅びの道へと向かう。犯した罪は、私が死んでもこの世界に残る。


 逃げたところで、隠れたところで背中に刻んだ傷は、人生を歩いた分だけ追いかけてきて、自身で追い込むようになり、最後には諦めて足を止め立ち尽くして、生きる意味を自ら否定する。


 罪悪感は、山のように高く大きく、海のように深くも。抱えきれない数々の罪は、エミの背中に重くのしかかり、心に縛り付ける鎖となって心を圧迫する。気付けば人生を諦めて生きていく。


 涙が枯れてしまっていることに後から気付いても、それでも自身を責め続けて壊れていく。


 助けて、一人は怖いよ、でもエミは罪人だ、と助けを求めようと声を出そうとしても飲み込んで、差し出された暖かい手を私は振り払う。


 傷だらけの背中を見られるのが怖くて、許しを乞おうとするが、助けを求めようとしても、また、押し殺して、心のなかで泣き叫び、後ろの景色を見続けて人生を歩んでいく。エミの背中には、自身の犯した罪で犠牲になった優季ちゃんが、覆い被さって呪いの言葉を永遠に唱え続ける。エミが死んでも、地獄に落ちても、何度も生まれ変わっても。


 もう、あのときの笑顔を見せずに優季ちゃんは、エミを憎んだ表情で生まれ変わる度に地獄へと送る。


『エミに差し伸べる手を振り払うのは、エミが罪人だから』


『後ろを振り向けとエミが光を拒めば光が諦めてくれるから、だから、罪人のエミは自分の心を縛って光に届かないように闇の中に逃げるの。引き摺った十字架を誰かと一緒に背負う苦しみはエミが一番知っているから。エミは俯いて人生を歩んで生きていくしかない。エミは言えるよ? エミに光を照らさないでって? そうじゃないと嫌だよね? 優季ちゃん!?』


『苦しかったよね? 優季ちゃん? だからエミを思う存分呪い殺してね? 優季ちゃんは助けてと言えなかったのに、エミは優季ちゃんの助けを求めた手を振り払った。だからその手でエミの首を絞めて殺してね? 何度生まれ変わっても、エミが幸せを求めようとしたら、エミから幸せを奪って!?』


『優季ちゃんはエミを許さない。エミ自身も許さないから、大丈夫だよ? これが答えなんだよね? そうだよね? だからずっと、後ろを向いて生きていくね? ごめんなさい。謝っても優季ちゃんは帰ってこないのに、いつも謝るエミは最低だよね? でも、ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい!?』


 人生を諦める理由があるから死んだような生き方を選んだエミ。そんなエミはこの世に必要のない人間だ。


 だって、唯一、最後までエミの味方になってくれていた友人に、あんな酷い言葉を言って、エミの目の前であの子は自殺したんだから。もう、エミの前で可愛らしい笑顔をあの子が見せる事は無い。


 エミはあの子に守ってくれていた事実を知らなかったとしても、許されない罪だ。


 言い訳と捉えられるのは当たり前だが、小学校、中学校時代は地獄の日々だった。


 きっかけは、とある男子を励まして好かれてしまって、告白されたのを彼のファンに見られてしまい、苛められるようになって、エミは人を信じられなくなり、友達までも疑って酷い言葉を言って、友達はショックを受けて自殺したのだ。


 後から、聞いた話では、友達はかなり追い詰められていた。


 苛められるのは日常茶飯事。身体のあざを家族にバレないように、心の傷もバレないように隠して生きて来た。だから華咲高校(はなさきこうこう)に入学しようと思ったときは、思った事は隠して生きる、と、考えて華咲高校に入学した。


 だが、心の傷を隠していたエミに光りが届いた。忘れる訳がない。優しい光りをエミに照らしてくれたみんなを—―。


 大阪で一番、笑いと優しさを守り続けた伝統ある華咲高校の一年四組の窓側の一番後ろの席にエミは一人、昼食タイム。


 エミの目は赤いルビーの色で、髪は黒のロングヘア。


 華咲高校は近くに古墳が多く、教室に埴輪はにわのフュギュアや古墳の写真などが画鋲がびょうで止められていて、古墳、埴輪とどこを見ても、古墳と埴輪が目立ってしまう。


 近くの店とか華咲高校の食堂とかにも古墳にちなんだ古墳クッキーとかカレーライスの商品が目立つ。


 気合が入り過ぎるのは後々問題となる熱になる。残った商品は、有り難く受け取って胃に収めているのだが、受け取れない残りの商品は、大きな残飯にもなりかねない事実。


 利益度外視でカレーを作る気合の入った食堂のおばちゃんたちは、カレーが残ってしまったとき、残りをエミに分けてもらえる。


 だから、今日の昼食は、食堂のおばちゃんの差し入れのカレーをご飯と炒めてカレーピラフにしてみたのを弁当箱に詰め込んだ。


 しかし、入学するべき高校を間違えた。ニートにでもなればよかった。小学校、中学校と楽しかった思い出が無いために、地元から離れた華咲高校に入学したんだが、この高校の校訓を知って入学したのが間違いだったと悩みが出来た。


『優しさは優しさで返し、繋がりを築いて大きな温かい輪に変えてください。優しさは目に見える行いと、優しい言葉を懸ける事です。生徒たちの成長を我々、教員は、美しくも嬉しくも感じますので、自身で正しい優しさを誇りと感じる子に育ってください。但し(ただし)、自然と人に愛を与える子に成長してください。自然と育って欲しいんです。そういう子に魅力が生まれるのですから』


 校長が入学式で言った言葉。正しくはあるが、


『この世界は闇ばかりよ、何を言っているの?』と、ボソッと呟いた。


 校長がこんな台詞を言うから大体わかるが、面接だけしかないこの華咲高校は入学できる子は善人がほとんど。


 この高校は、馬鹿な奴も賢い子も入学できる高校でもあり、偏差値ごとにクラスは分けられてはいるが、互いに心と心を結ぶ優しさで成長しなさい、と華咲高校の校訓としているため、面接で馬鹿なことを言ったとしても、成長の見込みがある、と受かる高校である。


 だからか、この高校は優しい奴ばかり。その所為で、誰にも関わろうとしないエミに話しかける子が多く鬱陶しく感じた。


 調子を崩してしまうぐらいの優しい奴ばかり。授業中なんか、周りの生徒と目線があうと目を逸らしていたら、隣の男子生徒が、


日隠(ひかげ)。さっきから周りの生徒に目線があったら目を逸らしているけど、緊張しなくていいんだからな? みんな日隠に敵意なんか向けていないからな? 気にするな。心配せずともみんな仲間だ」


「!?」と、このように人の心が読めるのか、緊張しているのがバレてしまう。


「入学するんじゃなかった・・・・・・、ニートやろうかな・・・・・・?」


 そんな選択肢は人類にはない。分かってはいる。だが、もし、世間が許してくれるならいまからニートになっていいだろうか?


 そんな絶望にドップリつかったエミだが、楽しみはあった。笑いの伝統を受け継いだ高校というだけあって、馬鹿な発言をする奴が多い。そう思うのは、女体ソムリエ隊と呼ばれる男子どもの発言に答えがある。


「バストスキャン! グッド! ナイスバスト! 挟むもよしっ! 揉むもよしっ! 舐めまわすもよしっ! 何杯でもいけるいい乳しやがって! なんのためにそこまで育てたんだ? 

僕をここまで本気にさせる乳なんてお前ぐらいだぜ? 佐藤! 畜生! 股間は正直者だぜ! ちょっくらトイレ休憩してくるわ!」


「フェイススキャン! いますぐにエロい妄想をして汚したいぜっ! ナイス! フェイス! 卒業したら大人のビデオに出演するとき言えよな! 栞!」


「ヒップスキャン! 小さい頃は、興味なかったがこんなに大きくなりやがって! なんだよっ! 挑発してんのかよ!? このぼくを! 水泳水着を着たキミの写真は僕の部屋のベッドの隣にポスターにして飾っているんだからな!」


「ウエストスキャン! くびれこそが女性の魅力の部位! 未来、きゅっと引き締まったウエストを額縁に飾っていいか? 何度抜いてもこのウエストに対する思いが揺るがないんだ! この情熱をどうかベッドで成就させてくれっ!」


「サイ(太もも)スキャン! 太ももから股に目を向けるときの高揚感が堪らないんだっ! 聞こえるだろう? ボクの高鳴る鼓動が!」 


「「「「「世界の女体にオールOK!」」」」」


「黒光りが目立つ股間の持ち主! すべての女体に感謝して今日もティッシュ箱片手に抜き倒す! 女体に感謝を忘れないで今日も生きる! 漆黒の戦士ブラック!」


「女体に神秘あり、この世界に生きる意味を教えてくれるのは女体だけ! 輝く笑顔はお前のお陰さ! カメラ小僧の戦士イエロー!」


「青き青春は脈打つ股間で彩る! この世界には美しい女体の癒しがある! 空の下でボクらは生きている! 女体ソムリエ隊の自由をつかさどる戦士ブルー!」


「夜の公園はウキウキウオッチング! 茂みに耳をすませば盛る女の喘ぎ声! 茂みの奥は穴場スポット! 観察を趣味とする戦士グリーン!」


「毎日ぼくのきみで抜いた青春が宝物! 女体ソムリエ隊隊長赤き炎の戦士レッド!」


「「「「「我らこそが女体ソムリエ隊!」」」」」


 と彼らは今日も、女子たちに白い目で見られる発言をしている。


 まあ、こんな奴ら(ただの校訓を襲撃する変態)も紛れ込んではいる。だから、華咲高校の生徒は頭の上に華やかな花が咲いている馬鹿もいる、と地元で有名らしい。


 彼らは気に入った女子がいるとセクハラ発言は当たり前。いつの間にか彼らは、とある一人の女子が彼らに制裁したことが発端となってシバかれるようになった。苛立ちが頂点に上った女子たちが彼らの発言を耳にすると、追い掛けてまで彼らをサンドバックにする事がしばしば。


 今月は夜道で女体ソムリエ隊の二人が犠牲になった。


 同級生が事件現場の近所の人に聞いた話では、外で、女体ソムリエ隊がセクハラ発言を大声で歌っているのを聞いて、その後に、『正義執行!』と何者かが叫び、肉を殴るような打撃音と叫び声が上がり、家から外に飛び出すと、女体ソムリエの二人が股間を押さえて倒れていて、何者かが、『正義が勝つ!』と夜の街へと消えたらしい。


『自業自得』と警察は言っていたらしい。


 犯人は逃走中。


「馬鹿だなー、また女子にシバかれるのに」


 世界が平和であるのはいいが、こういう変態は死んでもいいのでは? と、彼らを脳内で血祭りにしていた。


 カレーピラフをスプーンで食そうとしたクールな一匹狼(本当は人が怖いから)のエミに、話し掛けてきた童貞臭い眼鏡の男子が、


日隠ひかげ? いつも一人で弁当食べているけど、友達、一人もいないのか?」


「なっ!?」


 衝撃を受けた。


クラスに一人はいる一匹狼の需要性を知らないだと! この眼鏡! 眼鏡をパーツごとに分けて隠してやろうか?

 

 まったく、クラスで一人、教室の窓の風を受けて退屈そうに空を眺める一匹狼(本当は人が怖いから)のカッコいいオーラ(現実は、ボッチで可哀想と言われていたらしい)を放っていたのに! と、心のなかで、対人恐怖症気味になりつつある自分に言い訳をした。


「ななな、何を、言っているんだ? お前? いや、進場しんじょうくん、どういう事?」


「やっぱりか。日隠? 人見知り激しかったりするか?」


「!?」


「だったら、弁当一緒に食うか?」


「ななな、なんで? 心も身体も許さないよよよ!」


 まっ平らな胸を両腕で隠したエミ。


「馬鹿を言え! 俺はそんな屑じゃない!」


「証拠は?」


「いや、日隠? このままクラスで浮いていたら苛められるだろう? だから俺が偽装してやるんだよ。まあ、なんか、日隠と仲良くなると毎日が楽しそうだしな!」


「なななな!?」


 顔が熱くなるのを感じる。風邪か? いや、違うな。なんでだ?


「本当に日隠は面白いなーリアクションが! 授業中とかも面白いリアクションしていたからなー。なんか日隠と一緒にいたら飽きそうにないな!」


 エミの前の席の椅子を持ってきて、ドカッと座った進場しんじょうくんは、風呂敷に拘り(こだわり)のないおじさん臭い弁当の風呂敷を広げて、はしを持ちながら、


「いただきます!」


 まだ、一緒に昼食を共にするとは言っていないが、たしかに苛められるのは嫌だな。仕方ない一緒にご飯を食べるか。


 改めて、童貞の進場くんの顔を確認。伊達メガネで髪は茶髪で普段、笑顔になると女子たちに、可愛いよね、と、噂されている容姿。


 でも、こいつは世間の男子と同じ考えの童貞だろう。


 そもそも、こいつと何を話せばいいんだ? 同級生の男子と話したことが無いぞ。よしっ! こいつの好きそうな話をしゃべればいいな!


「進場くんって、巨乳好き?」


「ぶっ!」


 進場くんが噴飯ふんぱんした米粒がエミの顔にライスシャワーされた。


「ごめん!」


 エミの顔についたご飯粒をティシュで拭き取ってくれる進場くん。取らなかったらマジで殴っていた。


「何言ってんだ思春期の男子に! ・・・・・・ん? なんか・・・・・・、見た・・・・・・?」


「え? ・・・・・・何を?」


「見てないならいい! 気にするな? 過去の事だ? 男には、いろいろとあるんだよ?」とイケボでカッコつけて話す童貞。


 なんか、過去にヤバい事を背負った漢みたいな台詞を言っているが、どうせ、恥ずかしい事じゃないのか? 何を隠している? 


 ああ。そう言う事ね。完璧にわかったよ。


 彼は、遠くにいった恋を気にしないように、外の景色を眺めて、


「ふっ。過去に囚われていたら、人は生きていけないんだぜ? ・・・・・・畜生! なんであんなのに・・・・・・! どう考えてもアレは怒るだろう!」


 必死に生きている辛さをエミは感じた。


 ああ。振られたな? 二年生のあの巨乳先輩だろ? まったく! 男子は女の子を見る目が無いからな。ああいう、巨乳ちゃんは将来、金持ちの不細工な男にメスを出してしまうんだよ。


「胸の大きさで本気になれる恋などない! 大切な一生を俺のために捧げてそばで愛をくれる優しさに恋心を抱かなければいけない! 恋するのは素敵な愛をくれる女子の温かい胸の奥にある! 女子の魅力は価値ある真実の愛これこそが男を本気にさせる魅力なのだ!! そんな一人の女子の事をすべて愛せるのが漢なんだよ! 愛こそが人類が求めるモノ! 大きな胸に興味を持って近づくなど笑止千万だ!」


「女子の魅力は胸の大きさじゃないんだ!! そして真実の愛以外にも輝く笑顔も魅力がある! 輝く笑顔と人生を懸けてくれる価値ある愛こそが、女子のもっとも輝く価値ある魅力! そう俺は知ってしまったんだ!」


「大切なんだ!? 男性が生きていく上でそばにいて支えてくれる女子の優しさは!? 何度だって言ってやるよ!? 女子の魅力は誰かを笑顔にさせる温かい笑顔と、傷ついた人に温かい気持ちを伝える言葉と、誰かのために行動とれる優しい心!?」


「なのに、なのにっ!? どうしてなんだろうっ!?」


「大きくて、柔らかくて、温かいっ!? おっぱいが!? 頭から!! 離れないんだ!? ・・・・・・ぐすっ!? ひっく!? ・・・・・・おっぱい!? おっぱい!? おっぱあああぁい!?」


 彼の見詰める窓のその先に、巨乳先輩が地元で有名な金持ちの武巣川ぶすかわ先輩と金をバラまきながら腕を組み中庭でスキップしていた。


「現実をよく、苦しくても受け止めたな? 進場くん! あの巨乳は仕方ないんだ! 心がある巨乳にしな! 失恋はあってもな、自分を否定するなよ? 自信を持って他人と自分に愛をあげる男になり、成長して笑顔を絶やさずに生きな! そういう奴が多くの人を魅了する奴になるし、いつか進場くんの好きな子も、進場くんを認めて両想いになる幸せが来るんだからな! 腐るなよ!」


 涙を流す彼は決して弱くない! 一歩、大人になる強さを持つために悔し涙を流しているだけだ! 今日は、彼の涙を許してあげよう! マウントを取って彼を殴り殺したいが、巨乳好きという事実を知ったうえでもエミは許してあげる!


「俺なあ! 俺なあ! 頑張ったんだよ! 一生懸命に! この純粋な心で勝負したんだよ! あのときも! このときも! 優しさを与え続けていたんだよ!」


 滂沱ぼうだの涙と鼻水を垂れ流して、彼は頑張ったとか純粋だとか抜かしてエミに訴えかける。


「よく言うな失恋男。巨乳ちゃんに股間を怒らせて猪突猛進した癖に。どうせ、胸ばかり見てゲスな気持ちを与え続けていたんだろう? それがお前の気持ちなら努力は無駄に決まっているだろう! 何が純粋な心だ! 身体目当ての猿みたいな頭には呆れるわ!」


「日隠お前まで言うのか! 信じていたのに! あと決めつけにもほどがあるぞ!」


「じゃあ好きになった理由は?」


「あの胸に、魅力を感じました・・・・・・! 初めて見たときに、運命を感じました・・・・・・! この巨乳は、ハワイで挙式を上げるべきだと思うぐらいに・・・・・・! 股間がそう告げたんだ! だから俺じゃないんだ! 正直な股間が悪い! あと、巨乳が悪いんだ! 漢を本気にさせやがった、あの巨乳が!」


 拳を強く握り締めて進場くん(童貞の猿)は悔しそうな顔で涙を光らせる。


「運命を感じると言う発言に少し殴り殺したい思いが沸き起こっているんだけど? エミはナイフで一刺しよりマウントを取って殴り殺す方が趣味よ?」


「お前の本性がいまの一言で分かったよ!」


「進場くんもよ?」


 このように “心” とやらは? と、疑問に感じる生徒も通う高校。誰が採用した?


「それと進場くんじゃなくて優志でいいから。その方が話しやすい」


「じゃあ、そうしようかな。エミもいまからエミでいいから童貞猿。それと自ら童貞猿と名乗りなさい? いいわね? 今日からお前は童貞猿よ? あと食事は芋でいいわね? 童貞猿?」


「なんで、こんなにも、舐められているんだ? なんかしたっけ? エミ?」


「やっぱりお前は馬鹿な童貞猿でいいわね。さっきからイカ臭いし、去勢した方がいいわね? いまならカッターナイフで切り落とすけど? ホント、猿のぶら下げている金玉なんかこの世界に必要かしら? 要らないのに神様は余計な汚物を猿に与えるから猿がいきがるのよ。犬のエサにしてあげるからパンツ脱ぎなさい?」


 カチカチカチ、と、笑みを浮かべながらカッターナイフ(裁きを下すナイフ)の刃を出すエミ。


 股間を抑えた教室の男子たちは、エミから逃げるように教室から出る。


 震えながら股間を守っている優志は、


「恐ろしいことを言うな! これからの人生でたくさん使う予定があるんだ! 去勢は必要ない!」


「あまり女の子の前で女の子の身体の話しをしない事ね。それで十分に魅力がガタ落ちよ?」


 自分の胸を隠すのに腕を組んで、目の前の性欲猿に睨みを利かす。


「エミから話さなかったか?」


 箸をエミに向けて質問する童貞優志。


「好きそうだったから」


 エミが腕を組んで、平たい胸を隠しているのを見て、何かを悟ったのか優志は、


「あーそう言う事か。気にする必要は無いけどな。男子の何割かは巨乳好きかもしれないが、女子に魅力を感じて付き合うと考えるなら俺の場合、胸の奥だ」


「あら、なぜかしら? 確か、男というくずは胸を尻の代わりとして興奮する猿と聞いたんだけど? 優志もよ?」


「あのな? 女子の何割かは誤解しているが、胸はでかい方がいいと考えているのは、身体しか見ていない男たちの発言を鵜呑み(うのみ)にしているからだ。身体で付き合うと考える男たちは、女子に対しての好きという気持ちはいっときだけ。しかも、身体しか見ていない。でも、心に魅力がある女子はさらに成長する可能性があるだろう? 心を見て好きだと感じる男たちはそういう女の子を一生、男は傍にいて愛を与え続ける。そういう男もこの世にいる事を忘れるな? エミ。女子の心を見て惚れる男はいるという事を理解しろ? 心だ。いいな?」


 先ほどの巨乳先輩で学んだか? 高校生にしては成長した考えね。


「中々いいこと言うわね?」


「ふっ。一歩、男になっただけさ。欲で走る男たちはああなる」


 廊下にいる女体ソムリエ隊を親指で刺して、見ろ、と促す優志。


 女体ソムリエ隊は女子たちに拘束されてシバかれていた。


「我々は屈しない! 暴力になど! ウェストには自信がおありのようだが顔もイケているぜ! 未来みく! ぐはあっ! あああぁ!」


「おれたちは、理想を求めていただけだ! だからこの手を放せしおり! 可愛い女の子の顔は色々と性の勉強がはかどるんだよ! がはあっ! うごっ!」


「好きに見てもいいだろう? 目はなんのためにあるんだよ! 胸を大きく育てた佐藤が悪いんじゃないだろうか? 佐藤の胸をな、僕はちゃんと佐藤に失礼のないように正装して、佐藤の胸をおかずにして一生懸命に性のお勉強を励んでいるんだよ? いつか小作り頑張ろう? 教えておかないといけないから教えるけど、これが正しい漢の姿なんだよ? うおえっ! がはあっ!」


「これが由美(ゆみ)たちの答えか! なんでだ! 太ももを見ていただけじゃないか! 由美の所為で毎日、股間が膨れ上がるんだからな! ぐおえっ! がはあっ!」


「こんなことをしてきみは心が無いのか! お尻が魅力的すぎるぼくのきみ! ちょっ!? やめろおおおぉ! 股間を蹴ろうとするな! ああああぁ!?」


「「「「レッドたいちょおおおぉ!?」」」」


「あんなのにはなりたくない」


「またやっているね・・・・・・? 女体ソムリエ隊・・・・・・? ああなるのは分かっているはずなのに・・・・・・」


 女体ソムリエ隊の第一被害者の巨乳こと陽火日向ようひ・ひなたが、彼らに哀れみを感じた目で、エミたちに話しかけてきた。彼女の手には花柄の可愛い風呂敷に包まれた弁当を持っていた。


「日隠さん・・・・・・、日向も一緒にご飯食べていいかな・・・・・・?」


 彼女の青く澄んだ空を思い浮かべる目には、緊張が感じられた。


「どどどどうぞ」


「ありがとう! 今度から、日隠さんをなんて呼べばいいかな・・・・・・?」


「すすす好きに呼んで。日隠でもエミでも」


「じゃあ、そうだなー。エミちゃんで! 日向も好きに呼んで!」


「じゃじゃじゃあ日向で・・・・・・いいかな?」


 天使の笑顔で日向は親指を天井に突き出して、


「うん! いいよ!」


「進場くんは、なんて呼べばいいかな?」


「好きな呼び方でいいよ。日向ちゃんが気に入ったやつで!」


「じゃあ・・・・・・優志くん!」


「おお! 女神様!」


「去勢・・・・・・」


 エミがボソッと零した独り言に、股間を抑える反応を示した優志。


 彼はまだ、成長していないだろう。胸を凝視しているし。去勢するべきね。


「エミ? あのな、そう悲観的になるなよー。そりゃあ、人としては最低だよ? 男の考え方は。でもな。結局、男は女子の選ぶ基準を胸で選んでないからな?」


「証拠を見せて欲しいモノね? この世界の男子も優志も。出せる? 証拠?」


「証拠ねー。本当に後ろ向きだなー、エミは。その内、見つかるよ。エミがいいんだって言う人がさー。人って魅力があるんだぜ? エミは気付いていないだけであるんだよ? 胸の奥にな! それに今日は良かったな? なにせエミが隠している魅力に俺達が気付いたから—―」


 優志は嬉しそうに笑い、エミの耳元で、


「こうやって話し掛けてくれるんだぜ?」と、ささやく。


「ううううるさいわね!」


「繊細と根暗、感受性。この三つの個性がエミの魅力のヒントだ。他にもありそうだけどな! エミの魅力となる個性! エミの個性は人を—―、おっと、危ない。自分で考えな? あとはその対人恐怖症だな? まあ、その内良くなるだろう」


 こうして、三人はよく話をするようになった。


 仲が良くなると言ったら大体が普段の相手の行いから、仲良くしたいな、と考えて勇気を振り絞って話し掛ける。


 だが、エミには勇気が無かった・・・・・・しかし、そんなエミの人に対する恐怖心を二人は溶かしてくれた。心が温かくなって次第に笑顔も増えた。


 理由はあり過ぎた、人が怖く感じる理由・・・・・・それは長年、心を縛る鎖になっていた。


 辛い、苦しみ、悲しみ、憤り、恨み、悔しい。様々な、後ろ向きが過去にあったからこそ、エミは人を遠ざけるようになった。


 忘れもしない小学生時代と中学生時代。


 そして、人を遠ざける理由が増したのは、中学校の同級生に言った発言で起こったのが原因。


『人はピラニアよ? 自分一人ではエミに攻撃できない癖に、ゴミレベルの民度の低い仲間を集めて、みんなでエミの心を食い荒らすの? なんの罪も感じないのよ、全員でやるとね? 人ってね? 罪悪感は無いの? やっていることに疑問すら感じずに、生きているのよ、人は?』


『人はね? 自分たちの価値を下げていることに、気付かないで、他人の心を殺して生きるしかないの? じゃないと、ストレスを発散できないのよ? 可哀想よね?』


『他人の心はゴミどものおもちゃなのよ? 最低で、吐き気を催す、醜い行いをしてもね? 一生、自分の醜さに気付かないまま生きて、人の心を殺して満足した顔で笑うんだよ? 恥さらしだと言われても心を殺された被害者が苦しみながら生きてもね? ねえ? 優季(ゆき)ちゃん? だから、そういうのが人だから優季ちゃんは悪くないのよ? 悪いと感じなきゃいけないのは、人類、全員が、持たなきゃいけない事だからね?』


『人は相手の反応を気にして、生きていかなきゃいけない生き物。それが優季ちゃんで分かったよ? 人を信じて馬鹿を見るエミは、優季ちゃんを最初から見ていなかったんだね? だから裏切られたんだ? エミが悪いのよ? 全部ね? だから優季ちゃん? エミにしたこと、優季ちゃん自身で許しなよ? エミは、許してあげるから? でも、エミに、一生近づかないで? 吐き気がするから?』


 小学校、中学校と地獄の日々だったから、そう、思っていた。でも、エミが言ったこの言葉で優季ちゃんは自殺した。エミの最初の罪だった。


朝、忙しい時間に読んでくれた読者様にありがとうございます!

昼ごはんに友達や同僚と話に花を咲かせずに読んでくれた読者様に大丈夫か? 友達減るぞ、と心配する自分ですが、読んでくれてありがとうございます!

夜ごはんの御供が私の作品だと言ってくれる読者様に、ご飯が不味くなるよ! この文章見て見ろよー、と後ろ向きな私の作品を読んでくれることで励ましてくれる読者様に奇麗な花束を!

寝る前に読むんだぜ! と、文章が下手すぎてストレスを感じる私の作品を読んでくれる読者様に感謝を!

いいね! か感想、お星さま、ブックマークを正しく評価次第でくれるなら今日一日、生きた心地がします。

文章を何度かチェックしなおしたんですが、文章が足りなかったり、ここをもう少し、書いたほうが魅力のある作品になるよ、誤字脱字があるよ、という感想などでもいいので書いていただけないでしょうか? 

是非とも宜しくお願いします。

では、いい夜を! 

そして、いい朝を迎えて、元気な笑顔でいってらっしゃい!

あなたを笑顔にさせて、心に温かい光で満たす作品を執筆します!!

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