自信を持ってもいいよ?
足早に立ち去った彼の後ろ姿を眺めて呆然と立ち尽くしている俺の足の震えに気付く。
『あいつの目は本気でやろうとしている目だ』
『何すんだよ? ・・・・・・あいつ!?』
彼を追って教室に入る。
いまなら間に合うか、と考えたがとき既に遅し、
『慎太、お前が犯人なのか・・・・・・?』
『どうして、神崎くんが・・・・・・?』
『西城が、犯人じゃ無かったのか!?』
『そうだよ! ぼくが有紀ちゃんを脅していた犯人さ!』
遅かった。こんなことが起こるなんて誰が予想するだろうか?
自己犠牲でも気にしない彼の目を恐れてしまう自分は、彼の背を見て足の震えが止まらなかった。
『慎・・・・・・っ!? お前、なんで・・・・・・!?』
昌一が、慎太に何かを言おうとしたが、両手を握り拳にして耐える。
『遅かったね? 昌一』
『違うよね? 犯人じゃ無いでしょう!? 慎太くんっ!?』
有紀さんもそれ以上は言葉が出なかった。
『それがそうでも無いんだよ? これ見れば分るけど、ぼくが昨日徹夜で有紀ちゃんを困らせようと書いたやつだよ? どう見てみる?』
やめろ・・・・・・っ!? それを見せるなっ!?
声を出そうにも出せない雄平は、彼が昨日もらっていった脅迫状を有紀さんに手渡した。
『出来上がったときは、これで有紀ちゃんと雄平くんが別れると歓喜したぐらいだよ! 最高にいい夜だったっ!』
『嘘吐かないで、慎太くんっ!?』
――言わなければ、どうなるか分るよね? きみでも、分るはずだ。きみと同じような事を、させてもらうよ? ただし、有紀ちゃんが傷つかない方法で。
彼が昨日言ったことと真逆なことをしているが、これしか彼に方法が無かった。
だが、彼はそれでも行動に踏み切った。
俺はなんてことをしたんだ、と膝を落とした。
それでも足の震えが止まらない。
彼の自己犠牲と、昌一を犯人に陥れたのと、有紀さんを傷つけた罪悪感が俺を襲う。
『じゃあ、今日はぼく帰るね?』
彼の背を追って俺は、廊下で彼を捕まえた。
『何?』
『なんで、あんな事を、した・・・・・・っ!?』
『反省しているようだね?』
『でも、自分が犯人と言えない、そうだね?』
『いま自分の頭の中で、どう思っているのかな?』
『自分は悪い奴だ、だろうと思うけど?』
『そうだ・・・・・・』
『みんなに悪いことした反省しているとも想っているよね?』
『そうだ・・・・・・っ!?』
『反省していない奴じゃ無くてよかった』
背中を見せている彼は答えた。その背中は震えていた。
『みんなに言わなくても大丈夫だよ?』
『お前、何を・・・・・・っ!?』
『反省している、それだけでいい』
『過ちを認めたくない、でも心の中では反省しているとプライドとかが邪魔したりして反省の言葉が言えない人もいる』
『今回雄平くんは過ちを認めるじゃ無くて幸せを取ったかもしれない』
『――っ!?』
『でもね? 自分を責めないで』
『心の中で反省しているのなら悪い奴じゃ無いし、反省している気持ちだけで十分だ』
『だけどもう一度言うけど、反省していない奴じゃなくてよかった』
『反省しているならそれでいいんだよ? 自分が悪いと言わなかったとしても心の中で反省しているなら、きみはいい奴だよ? 自信持ってもいいよ?』
立ち尽くした俺を、おいて彼は玄関に向かった。
『待って慎太くんっ!?』
教室から飛び出してきたのだろう有紀さんが、息を切らしながら彼を追いかける。
間違えて間違えて間違えて辿り着く場所は、どこだろうかなんて考えたくなかった。
慎太たちから有紀さんは離れて、自分と行動することになったのが嬉しい反面、また元通りになるのではと恐れた。
間違えていない、この言葉だけでも邪魔だった。
頭から引き剥がすことが出来ないなら、自分を映し出す心の声を無視して逃げる。
彼女と幸せになるのならそれでいい、と彼らを、嵌めようとした自分を恥じた。
でも、心の中で間違えている、と叫ぶ俺を黙らせるのは難しかった。
彼らに酷いことをした、その言葉が頭の中で永遠にループする。
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