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貴族様の成り下がり  作者: いす
二章
11/69

十一話目

11話目です

誤字・脱字があったら申し訳ありません

 次の休日。

 バイトの疲れがまだ取り除けていないというのに朝早くから馬鹿共に叩き起こされ、食事を急かされ、着替えを急かされ、そんなで街へと繰り出すことになった。

 休日ともなれば、当然学院からは大勢の生徒が出てくる。

 バイトとは違う状況にこちらは念入りの警戒していたというのに、馬鹿共にやれあちらだこちらだと引っ張られ、精神のすり減りが尋常なものではなかった。

 ただまぁ、そんなハイテンポな買い物だったからこそなのか、道中、それらしい歳の奴を見かけてもすぐに距離を離してしまい、見つかるような事は一回としてなかった。

 とりあえず、それに関してはまぁ良い。

 だが、問題は他にもある。

 買った皿や服に、俺の意見が欠片も入っていない事である。

 買う事になったのはありきたりで質素な服や、いま馬鹿共が使ってるのと全く同じデザインの安物の皿のみ。納得が出来ない。

 しかし金の出どころが担任な以上、幾らか口を挟んでも俺の望んだ様にはならず、不服のまま買い物の時間は終わり、寮に着いてしまった。

 そのありきたりな服らは寮に戻れば一回洗うからとクローゼットには向かわず、皿も部屋には当然並ばずで、終わってみて、俺の部屋が何かとして変わるようなことは何一つとして無かった。

 ただ、それで良かったのかもしれない。

 変われば変わるほどそれは、ネカスに不本意ながらも俺の居場所が形成されていくという事。殺風景と呼べる今が、俺がこの部屋で求めるべきな姿なのかもしれない。

 そのまま時は進み、夕暮れに。

 共用スペースで食べようよと誘ってくる馬鹿共から夕食を回収し、部屋でそれを済ます。

 空になった買ってきたばかりの皿を木製のトレイの上でかたかたと揺らし、洗わせようとまた共用スペースへと向かえば、馬鹿共三人は、二つをくっつけて作り上げた大きなテーブルの周りに。

 担任はエプロンを巻いてスポンジ片手にキッチンに立ち、俺を見るとこっちと手招いてきた。

「なんだ」

「決まったの、分担」

 昨日、キッチンにはレグとクーシルが立っていた。

 そして今日は、担任が一人。

 二人ずつの分担だとすれば、もう一人…俺がそこに立つことになる。

「こいつらの片付けなどやらんぞ」

 その馬鹿共は何が面白いのか時折クーシルがやるみたいに口元に手を当て、揃って寄せ合った顔をくすくすと笑わしていた。

「うん。だから、今日はとりあえず、自分のだけお願いしようって」

「…は?」

 言われてキッチンを覗き込む。

 そこに他の奴らの皿は一枚として無く、その隣の水切り用のカゴに水滴わすがに集まっていた

「いや、だが…」

 口に出したのは確かに、他人の後片付けなどやりたくないということ。

 だがもっと言えば、自分のさえやる理由が分かっていない。そんな小間使いのような雑用など。

 と、顔を寄せていた馬鹿共から、不遜にも小馬鹿にするかのような声が聞こえてくる。

「あれー?もしかしてランケさん、自分のもイヤとか言わないっすよねー?」

「あいつ、まさか出来ないんじゃね?お皿洗い」

「え、出来ないんですかあの人?うわー…」

 言いたい放題にぺちゃくちゃと…。

「馬鹿共が…皿洗いぐらい出来る」

 そんな事、よほどの子供でない限り練習などしなくたって容易く出来る。

 だからこそ、この俺がやる理由が分かっていなかったのだ。

 ここまで言われて、おめおめと部屋には引き下がれない。

 共用スペース側から身を乗り出して、シンクの中に皿が乗った木のトレイをかたりと置き、邪魔になる服の袖を肘ぐらいにまで捲りながらキッチンへと回り込む。

 その間、馬鹿共は声を潜め勝ち誇るかのような顔で何やら言い合っていたが、そんな物に気を向けている場合ではない。

 俺の意気を見た担任は、じゃあと手に持っていたスポンジを渡してくる。

 全員の目が俺に集まった。

 スポンジに洗剤をかけ、それを水で泡立たせる。一度皿の汚れを水で軽く洗い流してからそのスポンジで泡まみれにし、泡で浮いた汚れを水で流す。

 手間取ったり、シンクに落としたり、そんな間抜けはしない。

 水が通り抜けた後の皿は、天井の光を滲ませて反射させていた。

「どうだ」

 水切り用のカゴに光る皿を運びながらふっと口元を緩ませると、クーシルの顔に貼り付いていた、何かに対しての期待のようなのが剥がれた。

「…なーんだ、なんか面白いの期待してたのに」

 テーブルにばたりと倒れたクーシルの横のレグも「普通に出来んじゃん」と、またつまらなそうに口を動かす。

 ワッフルも、何かの感情が籠もった吐息をはぁと漏らしていた。

「なにが気に喰わないんだ貴様らは…」

「あはは…気にしなくていいよ。次のやろ?」

 苦笑する担任に言われ、理解出来ないまま、次はスプーンをスポンジの標的にする。

 そんな調子で着実に洗っていると、監視役かのように横に立っていた担任が、俺に気付いてほしげにこちらをちらちらと見てくる。

 この振る舞い、何か聞きたい話があるのだろう。皿の方に問題は起きていない。となれば、何の話か。

 一枚皿を洗い終わったところで、しょうがなく視線を合わしてやった。

「さっきから邪魔だ。話があるなら声を出せ」

 気付いて欲しげにしていたと言うのに、いざこちらが気付いてやると、驚きで身体をひゃっと跳ねさせる。

 それが収まるとあのとかえっととか無意味な言葉をいくつか放ってから、話したかったのだろう事を口にした。

「そ、その…明日、学院、来てくれるのかなーって思って」

「あーそだよ、また引きこもんの?」

 テーブル上のサイドテールが、むくりと頭を起こす。

 残りの二人は頬杖を付いたり、ただ顔を向けたり、しかしどちらも俺の答えを聞きたがっている様子だった。

「…明日か」

 それは、俺も前に考えていた事。

 結局あの後結論は出せず…というより、出せるような時間の余裕をこいつらがくれず、俺の頭の中でも隅に寄せられてしまっていた問題。

 一言言った後口を閉ざしていると、水滴がシンクにぽつりと落ちる音が耳を突いた。

 ………。

「…行くつもりではある」

「ほ、ほんと!?」

 驚愕の声を上げて、暑苦しく、ぐぐっと担任が身体を近付けてくる。またこれか…。

 その距離を離しながら、どうせ聞かれるだろう理由を先に言った。

「部屋に居たら、どうせお前達がまた荒らしに来るだろう」

 …そうだ。

 ふと、空から閃きが舞い降りてきた。

 これを言って俺が悪いようにはならない。

 さも前から考えていたように、話を付け足した。

「まぁだが、行くにしても一つ条件があるな」

「な、なに?」

「これから授業に出る代わりに、お前の持ってる部屋の鍵、いい加減返してもらおうか」

 俺が目を向けると、担任は渋るような顔を浮かべて、左手を(くだん)の鍵があるらしいエプロンのポケットに入れた。

「で、でも…」

「その鍵に拘らなくても、お前にはマスターキーがあるだろう。貴様が持っている所為で、部屋に鍵を掛けられない時があって困ってるんだ。閉めずに出て、何時(いつ)どんな問題が起こるかも分からないというのに」

「なんであたしら見たいまー!」

 問題の文字が頭に突き刺さった三人を横目で見てから、また担任に視線を戻す。

 今日の外出がまさにそうだったが、俺の部屋に担任が呼びに来る時は鍵の所有者として、部屋の施錠をそのまま頼んでいる。

 しかし風呂の時や、他の軽い用事で部屋を空ける時。

 いちいち呼び出すのも億劫だし、時々何処にいるかも分からないしで、仕方なくそのまま部屋を後にしてしまう状況がそれなりの頻度であった。いい加減、解消しても良い頃だろう。

「どうする?」

 条件を飲めるのかと、担任に右手を差し出す。

 担任はポケットからぎゅっと何かを握った手を取り出し、一度、自分の胸の前辺りでそれを開く。

 そして、何か躊躇いを解くような間を一瞬流してから、俺が出した手に鍵を乗せてきた。

「ほ、本当に来るんだよ?」

「分かっている」

 手のひら返して部屋に籠もったりなどしたりしない。言ったように、こいつには最強の鍵、マスターキーがあるのだ。

 そんな事をしたら、一生取り上げられてしまうかもしれない。

 無条件にあの場所に通うのが受け入れ難く、その難さを少しでも緩和しようと実行しただけ。

 これでようやく、最低限のプライバシーが確保された。

 貰った自分の鍵を、ズボンのポケットにすとんと落とすように入れた。


 ━━━━━  ━━━━━  ━━━━━


 取り引きに従って、翌日もちゃんとネカスのクラスにまで自分の足を運ばせた。

 また今日もつまらない時間が始まると長机に頬杖を付いて、何もない壁を眺めようとした時、視界の端でクーシルが「ねーせんせ」と手を挙げた。

「なに?」

 先週やった所を探して、教科書をパラパラ捲っていた担任が顔を上げる。

「聞きたいんだけどさ、ネカスとかコルファとか、そういうのって結局なんなの?」

「あ、俺もそれ気になる。クラスの名前ってぐらいしか知らんし」

 ふと投げ掛けられた疑問を膨らませるレグ。

 捲っていた教科書から担任は手を離し、一緒にうーん…と眉を寄せて腕を組む。

「私もまだここに来たばっかりだから、あんまり詳しく知らないんだよね…」

 赴任して早々にこんな落ちこぼれを押し付けられたのか。

 やはり、教師の間でもここは押し付け合われるような存在なのだろう。

 馬鹿共の授業から脱線した話に耳を傾けていると、ワッフルが俺の名前をそこに出してきた。

「ランケさんなら知ってるのでは?ここを嫌ってるの、多分詳しいからですよね」

「ね、灼熱ー。知ってんのー?」

 少し声を大きくして、クーシルが俺の顔を「どうなん?」と覗いてくる。

 混ざりたくはなかったが、混ざらずにいられない部分があった。

「その呼び方、何時(いつ)になったら止めるんだ」

「え?あっ、ごめん、なんかもうほとんど癖になっちゃってる」

「それで知ってるんですか?」

「まぁ…ある程度ならな」

 クラスの仕様についても当然、頭の中に収めている。そこいらの馬鹿とは違うのだ。

 俺が知っていると聞くと何か閃いたのか、クーシルの頭に電球が点った。

「なら教えてよ、前、立ってさ。ミーせんせーみたいに」

「あっ、良いですねそれ」

「…おい、良いのか。授業の時間が潰れるんだぞ」

 当然のように授業の時間を削る方向になっているが、教師がそれを見過ごしていいのか。

 尋ねると担任は、控えめに苦笑いを浮かべた。

「こうなっちゃったら、話さないと授業に集中してくれないから…。お願いして良い?」

 担任はそう言って、すすっと教卓の場を俺へと譲る。

 俺が説明する事に決まると馬鹿共は揃ってランケ先生だなんだとひゅーひゅー茶化し囃し立て始め、からかいが目的の拍手をしてくる。

 自分達がそうそういない生粋の馬鹿である事を、こいつらはいい加減自覚した方が良い。

 それを告げる為に半分嫌気もあったが、椅子から立ち上がって教卓へと向かった。

 教卓に立ち、クラスを一望する。

 担任は自己紹介の時と同様に、さも自分も一人の生徒であるかのようにクーシルの隣の席に腰掛けていた。

「まず聞くが、クラスに付けられる名前に法則があるのは知っているか」

「え?そうなの?」

 クーシルから飛び出る、初耳の声。

 知らないのか…。

「例えばで挙げるが、士官科の上位、親衛隊が多く排出されるクラスには、親衛隊で功績を残した人間の名前が拝借されて付けられる。経済科には、経済面で多大な功績を残した人間の名前が。そしてこれは、毎年新しいのが作られる」

 功績を与えられた人間の名前が使われるのは、そういう者になれ、もしくは続けという学院の考えなのだろう。

「ニ回目ないんですか?」

「あぁ。同じ人間の名前が使われる事は稀にあるが、使う箇所が違う」

 しかし、そこには例外が存在している。

「お前達が気にしていたコルファとネカスだが、これはいま話したのと違って、学院が始まってから今日まで消えることなく、繰り返し使われ続けている」

 言うと、ちょっと面白い話を聞いたぐらいの、へーという如何にも中身のなさそうな声が四人から上がる。

 疲れの籠もった息がふぅと漏れてしまった。

「…コルファは、優秀な人間のみを集めたクラスに。ネカスは逆に、生粋の馬鹿共のみを集めたクラスに」

 結構な宣告をしたつもりだったが、馬鹿共はこれと言ったリアクションを見せない。

 それどころか表情変えずに、クーシルがはいと手を挙げ質問をしてくる。

「それって、三年に一回絶対あるの?」

「いや、そういう人間がそれなりの数集まった年だけだ」

 このネカスの馬鹿共が卒業…出来るかは知らないが、全員が何かしらの理由でこの学院からいなくなった時、翌年、またすぐにネカスが生まれる訳ではない。コルファもまた、それは同様。

 不確定に生まれるからこそ、両方の名前には確かな重さが付いているのだ。

「じゃあ、前のネカスとコルファがあったのっていつなん?」

 レグに聞かれ、あー…と、視線を横に流して少し考え込む。

 コルファは十年前とはっきり覚えていたが、ネカスはそこまで律儀に覚えてやる意味を見出していなかった。

 掛かった霧を払ってから、声に換えた。

「コルファは十年前で……ネカスは…確か、十…五年前だったな」

 今、俺が着ているこの白の制服も、十年ぶりに表に出た代物なのだ。

「えっ…!」

「マ、マジですか…!」

 具体的な年数を出され、やっとこいつらも自覚を持ってくれたのか。

 そう安堵と似た思いを得たが、馬鹿共の顔は衝撃こそ受けたようだったが怯みは知らずで、陰鬱や絶望の影はまるでそこには差し込まれなかった。

 むしろ、日が丁度良い高さになり、窓の外から暖かそうな白の光が差し込まれてくる。

「俺達の方が、コルファよりレアって事…?」

「マジで!?やったー!」

 見開いた目で、お互い顔をそれぞれ見合わせる馬鹿共。

 その瞳は新しい童話でも聞いた子供のような、金色で眩しいもの。

 絶句した。

 隣から上がる歓喜のような声を聞き、担任の顔が羞恥で赤くなる。両手で必死にそれを覆い隠していた。

 と、クーシルが机から上半身を乗り出させ、輝いた目で俺を捉えてくる。

「ねーねー!コルファって今何人いるの!」

「…十人程だな」

 大半のクラスは二十人程度という枠を遵守しているが、コルファやネカス、それと上位のクラスの一部では数合わせを断ってる為に人数にばらつきがある。それも、大抵は基準よりも少ない。その中での一番は見ての通り、この場所だ。

「うわ、あたしらのほうが少ない…!」

 とすっと、勢い強く浮かせていた腰を椅子に帰したクーシル。

 隠すように当てられた人差し指の下、緩んだ口元から、自分達の希少性を誇るかのような言葉が呟かれる。

 手の施しようのなさに言葉が詰まった。

「でも、十五年ですか…。だから寮、あんなに汚れてたんですね」

「十五年片付けてたなら、そりゃ疲れるかー」

 ワッフルとレグの話から察するに、最初、寮に来た時の事を思い出しているのだろう。

 流石に落ちこぼれのクラスの寮と言えど、十五年まったくの手つかずで放置される事は考えられないが…。

 あの時代に合わせた内装も、十五年前からそうだったとは思えない。

 街に建てられた物。

 周りから浮かないようにか、どこかしらのタイミングで改築を挟んだのかもしれない。

 が、なんにしても言う理由はなく、黙ってそれを横目のままにした。

「てゆーかさ、やっぱりネカスとコルファも、名前の由来あるの?」

「コルファだぞ。心当たりがあるだろう」

「あー……そう言えば…………ん?えっ?」

 頭を使うような素振りをしていたクーシルだったが、それがピタリと固まる。

「…知らないのか?」

 あり得ない…と自然、自分の首が左右に振られる。

 馬鹿は心当たりが無いと気付くと、他の馬鹿に助けを求め出す。

「し、知ってる?ワッフル、レグ」

「い、いえ…」

「俺も。全く知らない」

「貴様の教育はどうなってるんだ…」

「お、教えた筈なんだけどなぁ…」

 選りすぐりの馬鹿と前知識はあったが、こうして接すれば接する程、驚きしかない。

 馬鹿はきっと世の中に選り取り見取りでいるのだろうが、十五年、そいつらが入学してもネカスが生まれなかった訳だ。

 首を捻り、はてなばかり浮かべる馬鹿共を恐ろしく思いながら、疑問を出した立場として由来を教えてやった。

「コルファは初代国王の名前だぞ」

「えっ…!あ、あー…」

「そ、そう…でしたね、確か、はい。知ってました」

「そ…そーそー。俺も知ってた知ってた」

 視線を泳がせ額に汗を浮かべ、知ってた知ってたと知ったかぶった態度を見せる馬鹿共。

 そういう人間からは、大抵酷いボロが出る。

「あ、あれ…だったよな?ネカスって名前、それ、その人の奥さんの…だった、よな?」

「で、でしたね!」

「そーだったそーだった!」

 頭痛でも(こら)えるかのような苦悶の顔を、担任は静かに目の前の机に見せていた。

「ネカスには、何の意味も由来もないぞ」

「へっ?」

「ネカスには誰の名前も使われていない。多分だが、学院長辺りが考えた専用の名前だろうな」

 ネカスという名前で功績を残した人間は、この世界に一人としていない。

 最悪の場所に使われる事になる人間の事を、学院が申し訳ないと判断したのだろう。

「あー……」

 間違った知識の暴露に表情を固くさせ、まばたきをしながら頬を人差し指でかくレグ。

 そこに、クーシルの声が割り込んだ。

「ちょっと待って。学院長がって事はつまり…学院から大事に扱われてるってこと?」

 学院の心理を間違った方向に推理し、さも探偵のような真剣な顔で馬鹿を披露する馬鹿に、軽蔑の目になる。

「…好きに解釈しろ。言っとくが、ネカスとコルファが同学年に揃って生まれるなんて前代未聞なんだぞ」

 秀抜のクラスと、落ちこぼれのクラス。

 気まぐれにしか生まれないその天と地が同時期に生まれた事で、もしかしたら、今まで以上の扱いが両方でされているのかもしれない。

「うわ、あたし達もしかして、凄い事手伝っちゃった感じ?歴史に名前刻んじゃった的な?」

 ですね…だな…と、クーシルが出した、偉業を成し遂げたような雰囲気に同調していく馬鹿二人。

 こいつら…なんでもかんでも同調するな。

「もう何も言わんぞ。貴様らの疑問には答えたからな」

 兎にも角にも、言うべきことは言った。

 教卓から離れ、自分の席になってしまった場所へと戻る。

 鍵だけじゃなくもっと何か要求しても良かったのではないかと、それでようやく対等だったのではないかと、椅子に腰掛ける直前、後悔の念が強く湧いた。

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