【86】クロ殿下と闇ダンジョン
――――ここは一体……?暗くてじめじめしている。洞窟の中かな。そもそも俺どうなったんだ?確か周囲が突然暗転してヴェイセルが何かを叫んでいた。目を開くと、ん……?膝の上……?そこにはリョクタの顔があった。リョクタが膝枕してくれてたのか……?
「クロ殿下、気がつかれたんすね」
「うん、リョクタ。……ここは……?」
「ダンジョンの中みたいっすよ」
ダンジョン……?そういえばヴェイセルが何か言ってたけど。ダンジョンって言いたかったんだろうか。でもその前に何か……。
「他の皆は……?」
「そこっす」
見やると、そこにはニマとセナさんもいた。
「ここにいるのは私たち4人だけのようです」
「じゃぁ、ヴェイセルたちは……」
うーん、呼べば来るとか言ってたしダンジョンの中で空間魔法は使えないらしいけど。
「ヴェイセル――――!!」
……来ねぇな。やっぱりダンジョン内は無理か?
ピロロロロロロロロロロロ……
あ、通信機……?俺は急いで通信機を取ると、そこにはヴェイセル、タシさん、たんたん、紅消が映し出されていた。
『あぁ……見事に4人ずつ別れちゃったね』
それも!高レベル高技能組がすべてあっち!
『クロ、ダンジョン内に紛れ込んでしまった以上、ゴールを目指して潜るしかないんだ』
ご、ゴールって俺、そんな強くない。リョクタはいるけど……。
『大丈夫、クロはレベル712あるし、経験値ブレスしてるでしょ?こっちでモンスター倒しまくって、クロのレベルをあげるから』
そ、そんなリモートチートを……!!
『弱い魔法でもレベルを上げれば威力が出る。あぁ、倒す前にニマにも攻撃させることを忘れないで。1度攻撃すれば倒したときに経験値が入る。ニマは炎属性を持っている。いざというときは使えるからね。少しでもニマのレベルを上げること』
は……はい!なんだかヴェイセルが頼もしい!
『あと、リョクタは魔法も武術もできるし……セナさんは?』
「風と水魔法は使えますが、戦闘向けでは……ふわもふ向きなんです」
なんと……ふわもふのための魔法技能!?それはうらやましい。俺も身につけたぃ……じゃなくてセナさんは後方支援になるってことか。
『ポーションと食料はマジックバックに入っているだろうけど、どこまで階層があるかわからないから慎重に使うこと』
「分かった」
『クロ、後、魔法を……あ、何か電波が……』
プツンッ
き、切れた!また重要なところ聞き逃した!?『……魔法を……』って!?リダイヤルはしてみたものの……やばい。通じない。
「クロ殿下、どうするっすか?」
「クロ殿下?」
リョクタの呼称にニマが首を傾げる。
「えーと……クロでんかって呼んだ方がいいの?」
「ニマくん。クロ殿下はエストレラ王国の第4王子なんです」
「……エストレラは知らないけど、何か偉い人ってこと?」
いや……まぁ、ニマはこの世界に来て日が浅いもんな。
「そ、そんなことはないよ!エストレラって北方の辺境の国だし……俺4番目だから!王位継承位で言うと5番目だし、興味ないし。できればヴェイセルと同じようにクロって呼び捨てにしてほしいかな。同じくらいの歳だよね……?」
「今年14歳……です?」
「あ、俺も」
14歳になるのは年の瀬だけどな。
「できれば敬語もいいよ。ほら、ファンタジー世界の王子とかもクラスメイトとかとはタメでしょ?」
「ん……まぁ、わかった。そうする。その方が楽だし」
「クロ殿下、ファンタジー世界って何すか?」
「クラスメイトとは何でしょう?」
とリョクタとセナさん。
この世界……というか連合王国には学校とかは無いのか?エストレラにも教育機関がある。俺は祭壇で勉強したから行っていないけど。アスラン兄さんやエメラ姉さんなら行ったことがあるんじゃないか……?今度聞いてみよう。
「クロ。ヴェイセルがクロは転生者だって言ってたけど、やっぱり元日本人……?」
またしてもヴェイセル経由!?あいつは俺が転生者だって言いふらしてるのか!?いや……多分地球関係者のみだとは思うけども。ここにはリョクタやセナさんもいるし、知られたら……まずいかな?でもニマが召喚者で、半この世界の人族だってことは知っているはず。
「クロ殿下、転生者だったんすか?」
「まぁ、今度異世界のお話を聞かせてほしいです!」
「あぁ……うん」
別にどうということもなく、普通だ。
「でも、内緒だよ?」
「えぇ。国によっては捕らえられたり、そういうたぐいの研究所に送られると聞きました」
ええぇ!?何それセナさん!初耳なんだけど!こ、恐……っ!
「ニマ、くれぐれも転生者というのは内密に」
「……うん。召喚者は……いいの?」
「勇者とかチート能力を持っていれば、召喚国が保護してくれます」
「……俺、特にそんなのは……。ジョブも黒魔法士だったし」
黒魔法士……?闇魔法に特化してるってことかも。
「まぁ……黒魔法士ですか……。エストレラと魔族以外の国では比較的悪印象を持たれるジョブかと。……闇系なので」
あれ、確か闇の精霊士もそうじゃなかったか……?前にシェル司祭様が言ってた。
「じゃぁこの国では隠しといたほうがいいのかな……?」
「用心することに越したことはありません」
「でも、ヴェイセルと同じクォーツ公爵の息子っすよね?なら問題ないんじゃないっすか?」
確かにクォーツ公爵って最強な感じがするし、兄のヴェイセルはレベ9999のSS級冒険者剣聖だ。手を出せばどうなるかわかったもんじゃない。
「あれ、でも……炎属性が使えるんだよね?黒魔法士なのに……?」
炎属性というのは一般的に光魔法に分類される。
「珍しいことですが、闇属性のジョブやスキルを持っていても反対の光属性を持つこともありますよ。闇は光の無いところには産まれませんから」
そうなんだ……って俺もシズメさま(闇属性の精霊)の加護を受けてて、闇魔法系なのに木属性(光属性)持ってたっけ。
「ライトとかファイアライトは使えますか?」
「どうやって使うの?」
「そうですね……手にライトが灯るイメージでライト、ファイアライトと唱えます。慣れてくると詠唱なしで使えます。ニマくんは炎属性を持っているのでファイアライトの方がいいかもしれませんね」
「ファイアライト」
ニマが唱えると、ニマの掌に炎のような光が浮かぶ。
「まぁ!一発で成功とは、素質があります!」
セナさんって魔法に詳しいんだな。やっぱり何者……?
「そういえば、リョクタは何属性なの?」
「俺は土と金っす。碧狼族に多い属性っすよ」
リョクタは闇系魔法の使い手なのか。セナさんは風属性(光属性)を持っているけど戦闘系じゃないって言ってたし、光魔法(特に炎は重要な気がする)が必要になったときに頼りになるのはニマってことか。
「じゃぁ、早速ダンジョンを進む……?」
「そうっすね」
「うん」
「あ、そうだ……ダンジョンに落ちる前、ヴェイセルくんが言ってたことなんですが。ここって闇ダンジョンなのでは?」
闇ダンジョン……それならヴェイセルの言いかけていた言葉によく当てはまる。……あれ、闇ダンジョン?たしかユキメ領のダンジョンで傲魔さんからそんな言葉を聞いたような……?
――――規格外の規模を誇り、通常の冒険者たちでは太刀打ちができない恐ろしいダンジョンを闇ダンジョンという。
「レベルも桁違いのことが多いと聞きます。普通はSS冒険者でないと踏破できないと言われています」
そ……そんな恐ろしいダンジョンに……!?
「ヴェイセルたちと合流できるかな……」
「可能性はありますが、ダンジョンマスターもしくはボスに意図的に分けられたのでしたら難しいです」
「……それじゃ、ヴェイセルがレベルをリモートチートかけてくれるのを頼りに突き進むしかないってこと……?」
「闇ダンジョンはもらえる経験値も桁違いと聞きます。ニマくんのレベルもかなり底上げできます。リョクタくんもいますしね」
問題はそんな桁違いのモンスターを倒せるか……なんだが。
「……うん、そうだね。皆、がんばろう!」
『おー!!!』
――――ダンジョン内を探索しているとさっそくモンスターが現れた!
何かすっごいゲーム的な軽いノリで言ってるけれど現実は軽くない!何かいっぱいいるんだけど!あれって何だっけ。ウーパールーパー?オオサンショウウオ?その人並みに大きいのがうじゃうじゃいるんだけど……!?
「まずはニマくん。炎の初級魔法で広範囲に技を放てるファイアアローを思う存分撃ってください。魔力はレベルが上がれば上昇&補充されますから」
「分かりました、セナさん。ファイアアロー!」
ニマの放った炎魔法がモンスターたちに襲い掛かる。
威力は小さいけれど、これを倒せばニマのレベルが上がって威力も上がるんだ。
「次に、クロ殿下。どばーんと極大魔法を撃っちゃってください」
せ、セナさん。極大魔法をどばーんとあっさりと要求って……いや、撃てるの一つあるけれど。
「アイスブリザード」
「あ、殿下それダメっす」
「クロ殿下、それは逆効果です!」
え?コントロールはできるようになったけど、いきなり止める方法何て習ってない――――!!!
ズドドドドドドド……ッ
『ギャッシャアアアアァァァァァッッ!!!』
ぎゃあぁぁぁっっっ!何か皆さん怒ってるうぅぅぅっっ!?
『クロ、後、魔法を使うときは属性相性が大切だよ』
あの時よく聞き取れなかったヴェイセルからの忠告が聞こえたような気がした。
ひいいぃぃぃぃっっ!!?どうすればいいのこれええぇっ!
「アーズブレイク!」
リョクタの声が響き、地鳴りが襲ってきたかと思うと、モンスターたちは地面から生えてきた無数の土の突起に巻き込まれ粒子となって消えていく。
「ご、ごめん……リョクタ。皆」
「いいっすよ。これで殿下も土属性の極大魔法を覚えたっすよね」
まぁ、アイスブリザードも見て呪文を詠唱しただけでできたし。というかリョクタ、極大魔法使えるんだ。
「クロ殿下は属性相性についてどのくらいご存じですか?」
「えっと、水の弱点が……氷で、氷と炎は対になるから互いに拮抗し、時には弱点にもなる……?」
「えぇ。そうです。今のは金属製と水属性のモンスターです。通常水属性のモンスターには氷属性が効きますが、金属性を持つと氷属性よりも強いので効きづらいんです。むしろ先に放った炎属性の魔法効果を打ち消してしまいます。逆に土属性は金属性が効きます。まぁ……金属性の種類にもよりますが」
金属性は、金、銀、銅、鋼、鉄など、種類によって効果が異なりかなり煩雑だが土属性ならだいたい効くらしい。
「ニマくんは相性に関する知識は?」
「あぁ……うん。地球のゲームの知識とあと父さんがいろいろと教えてくれて……水の弱点が氷って言うのはびっくりしたけど」
まぁ普通は似たような性質の魔法とらえられることが多いし。ゲームの知識も役に立っててクォーツ公爵直伝って、地球から来たばかりなのにすごいなぁ。俺なんてこの世界で13年と少し過ごしているのに。
「セナさん、他に知ってる極大魔法はあるっすか?そのいくつかを殿下に教えて、セナさんが後方から技を指示するって形にしたいんすけど」
「えぇ。もちろんです。クロ殿下は他にどのような属性を?」
「闇魔法全般と、木属性魔法」
「まぁ……!素晴らしいです!では……」
水属性ウォータードラグーン、木属性フィールドウッドドレインという呪文を教えてもらった。あとイメージも。なので実践時にセナさんに指示をもらって、唱えてみるだけだ。うん、今度は失敗しない!
セナさんの指示でニマが経験値付与のために広範囲魔法を放ち、俺とリョクタが交互に極大魔法をお見舞いする。そんなこんなを繰り返しながら階層を下って行く。
「リョクタ、MP大丈夫?」
「まだまだ大丈夫っす。レベルも上がってるっすからね」
「ニマくんも魔法の威力が上がっていますから確実にレベルアップしていますね」
ニマの魔法で凶悪モンスターたちがダメージを受けており、炎魔法で倒せるモンスターにも効果が出てきた。
そんな中……次に対峙した巨大多足トカゲ風モンスターは何かが違った。




