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【改稿作業中】クロ殿下と剣聖ヴェイセル  作者: 夕凪 瓊紗.com
南部連合王国編

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【82】クロ殿下と意外な客人

エメラ姉さんスペシャル・前半。


――――突然の魔族の再来に緊張が走る。


「やっぱ、さっきの!?」

「いや、クロ殿下。さっきの奴とは匂いが違うっす」

へ?別人?他の四天王か!?いやいや、知り合いの四天王は魔人王配下の四天王だけで十分です~~!


「……しかし危険です」

「クロ殿下が無事ならば危害は加えないと言っているようだけど」

ん……?俺が無事ならば?


「スバルもいるからクロ殿下の御身はご安心を。クロ殿下はスバルの大切なお客人だ」

「大丈夫だよ。こちらにも紅消たちがいるから」

俺は早速その魔王四天王に会いに行くこととなった。


あぁ……四天王。ゲームに出てくるラスボス系コワいヒトだったら嫌だな。念のためコワモテソウを常備。


「クロ殿下、何故コワモテソウを?敵に投げつけるのであれば、ニタニタソウのほうが……」

何だ、またその変な名前の薬草名は。


「え……っ!嫌っすよ~~、紅消さん。あれ、鼻曲がります」

「そうですよ……何故その名前を」

リョクタとたんたんも知っているらしい。


「ひと呼んでタイタンの最終兵器です」

と、たんたん。な……何?その最終兵器って。しかもタイタン!?たんたんの実家!?そんなに危険な代物なのか!?


「何を言っているんですか。たんたん副隊長」

紅消、いつの間にか紅消もたんたん呼びになってる。


「タイタン領で長年愛されてる缶詰じゃないですか」確かそういう缶詰……地球にもあったよ。


「……た、食べたことはありますが……臭いが……ぐぅ……っ。まぁ……でもおいしいんですけど……」

たんたん……地元民ですら思い出して悶絶するのかでもおいしくなけりゃ作んねぇか。


「あ、でもそれって魚みたいなのじゃないんですか?」

地球のその類の缶詰は魚か何かだった気がする。


「……魚の名前です」

え?じゃぁ最後の『ソウ』って何!?魚って意味なの!?


「あ、でも……エストレラを離れるときに寂しくなったらと兄さんに持たされたので、ここに」

すっと缶詰を取り出したたんたん。


「タイタン領以外では滅多に出回らない至極の品ではないですか!たんたん副隊長、是非私にお恵みください!」

「え……いいですよ?実家に頼めばいつでも送ってくれますし」


「それはそれはありがたい!」

珍しく紅消が浮足立っている。何かとんでもないものに使いそう。びくびく。


「殿下、もしもの時は缶切りも常備しております」

すちゃっ!


「開けるな。それは開けてはならないもんだ。紅消」

何となく、そんな気がするんだ。


※※※


――――こうして外にやって来た俺たちをスバルが待っていてくれた。


「クロ!こんな夜分に危険な頼みを聞いてくれてすまない」

スバルは最初に出会った時と同じようなラフな装いをしていた。


「いいよ、スバル。困ったときはお互いさまだろ?」

「……うん、ありがとう」

スバルに促されて進んだ先には2つの人影があった。


「はーっはっはっは!我こそは魔王直属四天王が一人!エーベルハルトだ!人間どもめ……ここであったが運の末!このエーベルハルトが殲滅してくれよ……っ」


「うるせぇっ!夜分にご近所迷惑だろうがっ」

ドゴッ。


……その容赦のないツッコミはものすごく見覚えがあった。そこには2人の魔族……いや、戸籍登録上1人は魔人族がいた。


「いってぇよ~。キラ~。一回これやってみたかったんだよ~」

とぼやく銀髪に黒い瞳を持つ野性的な青年は鴇子ちゃんとよく似た白く短い、歪んだ角を持っている。格好はいかにもラスボスっぽい肩にとげとげのついたマントをつけているが、その下は割とシンプルな胸元のはだけたノースリーブにゆったりとしたデザインのズボンとブーツだった。


「うっせぇ。魔王城でやれ」

「やだよ!皆の笑いものになるじゃん!?」

「……ぎゃはははははははははは」

「や……っ!やめろ何その棒読みの効果音だけの笑い方!!!」

ええーと……漫才師?いやんなわけないけど。


「あのー……キラさん?」

意を決して話しかけてみれば。

「これはこれは。ご無事で何よりです。クロ殿下」

うやうやしくお辞儀をした外見魔族、戸籍登録上魔人族のその人はエストレラはラズーリの魔人王四天王が一人キラさんだった。


「……その、一応聞きますが隣の方は……?」

「……ただの中二病だ」

キラさんは何となくキラさんに面差しが似ているその男を見やる。中二病?この世界に中二病があるのか?


学舎的なものはあるし、祭壇でも読み書きや計算は教えるけれど中学校ってあるのか……?


「チッガ――――ウ!」

いや、さっきの宣言はちょっと中二病くさかったけど。


「……ちっ。クロ殿下。この不躾で無礼なこの男は東方魔王四天王が一人エーベルハルトといいます。覚えなくても差し支えありません」


「い……いや、そんなことは……。その、クロムウェルといいます。よろしくお願いします」


「ふん……ちょっとお嬢がなついているからって調子にのんなよ。ち・び・殿・下」

お嬢って……?ってかちび殿下って……確かにエーベルハルトさんに比べれば低いけど成長期だしすぐ伸びるもん!


「……貴様、この缶詰が目に入らぬか!」

やめろ!紅消!それを今ここで開けたら皆ダメージが!


「ダメです、紅消さん!それは6枚入りです!人数分ありません!」

ちょ……たんたん!今そこ!?そこどうでもよくない!?


「ほら、もう一缶」

「これは……盲点でした」

ちょ……っ!もう一缶あったの!?もう持ってないよね、さすがにないよね?というかたんたん!絶対その缶詰好きだよね!?


「後で親父に報告すっから」

「……ダメ!先代魔王様恐い~!!!」

キラさんのお父さん……恐い人なのか?鴇子ちゃんはお父さん(魔王)よりおじいちゃん(先代魔王)の方が優しいみたいなことと言っていたんだが。……あ、お嬢って鴇子ちゃんのことか。


「……アニキにも報告入れとくか」

「ダメ!それずえぇぇぇっったいダメ!」

あ、やっぱりおじいちゃん(先代魔王)より鴇子ちゃん父(魔王)の方が恐いんだ。


「ま、冗談はこれくらいにして。少し前に北部魔王四天王という男が来たでしょう」

エーベルハルトさんが『ぜってぇ嘘だ』と言ってるのをキラさんが無理矢理押さえ付けてる。やっぱり強いな~~、いろんな意味で。

「あ……はい」

今までのボケの数々をすっ飛ばしていきなり本題に入るキラさん。


「その件でヴェイセルから情報提供の依頼がありました」

ヴェイセルったらいつの間にそんなことを?


「それで急ぎ東方魔王の兄に確認をとりました」

まぁ兄弟だしキラさんも姪っ子の鴇子ちゃんと仲良しだし……仲は良好そうだもんなぁ。


「クロ殿下。詳しいお話をする前にそちらは連合王国の王子では……?」

「……だけど、スバルなら大丈夫だよ?」


「……」

キラさんがスバルに向ける視線は冷たい。やはり国境を介して休戦状態だからかあんまりいい印象を持っていないんだろうか。


「スバルさんはここの領主だよ。その領内に北部魔族が潜入した件については領主として知る権利があるだろうし……ヴェイセルのお墨付きだから話していいよ。スバルも、キラさんは俺の友だちだから。安心して」


「魔王四天王の友だちがいるなんて……しかも普通に話すなんてクロ殿下はすごいね。他の皆なんてすごんでしまっているよ」

確かにクララさんもカロクさんも顔の表情が硬いな。


「あ、でも魔人王四天王だから」

「……ごめん、つい」


「いや……俺もつい魔族を魔人族って言ってしまうし……」

お互いさまだけど、魔王四天王っていっちゃうとエーベルハルトさんのことのように聞こえるから。


「……まぁ、クロ殿下がよろしいのでしたら」

キラさんは今までの仏頂面に影を落とし真剣な表情を浮かべる。


「ここ、南部連合王国にて勇者召喚が行われていたことが原因です」

へ……?勇者召喚?そんな異世界ファンタジーじゃあるまいに。あ……ここ、ファンタジーな異世界だった。


「勇者召喚?……勇者召喚したの!?えっと……勇者って召喚しなきゃいけないの?エステラにも光の勇者が1人いるけど」

その光の勇者ロイドさんは生まれも育ちもこの世界だが。


「南部連合王国、ロザリア帝国といった人族が主に治める人族の大国は時に異世界より素質のある勇者を召喚します。その勇者はすべからく特殊なチート能力を持つと言われ、人族の国にとっては大きな戦力に、周辺魔王国には脅威になります」

おお……っ。チート!お約束チート!この世界にもそういうのがあったんだ。というかキラさんの今の話を総合するとこれは異世界物の王道の魔王VS勇者になるのでは!?


「まぁでもロイドさんの方が強いと思いますよ」

そうなの?紅消。だったら召喚しなくてもいいんじゃぁ。


「ロイドさんは前回の勇者召喚時に召喚勇者を倒していますし」

いやいやいや普通に言ってるけど、たんたん。どこをどうしたら地元の勇者が召喚勇者を倒す流れになるの!?


「まぁ、前回の勇者召喚時もすったもんだあって東方魔族が主に被害をこうむったんだが……」

東方魔族が……?そういえば休戦中って聞いたけど何か関係があるのか……?


「でもそのときの召喚勇者の一人がロイドさんと協力して東方魔王国に進軍した勇者一行を討ち果たしました。源悪を打ち滅ぼしたということで休戦協定を結んだのです」

はい?召喚勇者の一部も召喚勇者を倒す側に回ったの!?


「現在、魔王各国と人族の大国はお互いに休戦、不可侵条約を結びました。元来のゲームとかでよくある魔王が人族の国を侵略し、勇者が魔王を討伐する……という大活躍ファンタジーのような展開とは違うのです。召喚勇者の一部はそこを勘違いして魔王討伐などをおっぱじめるので魔王国としては迷惑極まりないのですよ」

そうか。キラさんの話。分かりやすい。ん……?あれ……?


「キラ殿、それは何の話ですか?」

「ファンタジーって……?」

たんたんと紅消が首をかしげている。エーベルハルトもハテナという感じだ。キラさんはあっちの世界を……地球を知っている?


「さらには名前が似ているという理由だけで魔人族も被害をうけてきましたから」

とんだとばっちりだけど……単にクォーツ人が魔族に『人』いれて呼んでたらそういう種族名になっただけ。でも温泉郷でめっちゃ平和に暮らしているわけだしなぁ。


「と、いうわけで。秘密裏に勇者召喚をした南部連合王国を探るため、あわよくば勇者を滅ぼすために北部魔族がこの地に潜入したのです」

「初耳だ……」

スバルは全く知らないみたいだぞ……?


「キラはどうしてそれを……?」

「クォーツ公爵からです」

え……クォーツ公爵?


「……どうして?」

「召喚が行われたとしたら魔人族が多く住むラズーリにも危機が訪れますから。あれでもクォーツ州を治める領主ですからね」

確かにそうだけど、クォーツ公爵はそんな情報をどうやって……?


「当然、ラズーリの魔人族と親交のある東方魔王国にもその知らせは入れております。ただ北部魔族には巫女がおりますので、その力で情報をつかんだのでしょう」

魔族にも巫女がいるのか。イメージ合わないんですけど。


「兄上からも聞いたことがあるが、宣託を得ることのできる巫女ならば気が付くでしょう……」

とスバル。

「でも秘密裏って……」


「恐らく王族の誰かが勇者を召喚し、魔王討伐を行えば功を上げることができる……と企む者もいるでしょう。東部を治める俺と東北部を守る兄上よりも功をあげたいと考えたとしても不思議ではないよ。こちらは休戦状態、兄上の方も休止状態で動いていない。自ら戦を起こし勝利を治めれば手っ取り早く功をあげることができるから……」

「そんな……自ら戦をって……こんなに平穏に静かに暮らしているのに……」


「王都の王城で暮らす者にはこういう僻地で暮らす者たちの暮らしなど気にすべきものでもないからね」

「……っ」


「スバル様!大変です!」

その時誰かが飛び込んできて、キラさんとエーベルハルトにぎょっとするが、スバルがなだめ伝令はスバルに何やら報告をしている。


「え……っ!?東北部国境が突破され、兄上が負傷した……?」

まさか北部魔族か……!?



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