SP:エストレラ王国公認王室チャンネル(アスラン)
――――それは俺がかっこいい兄王子にあこがれた、幼き日の記憶。
この魔法ある異世界に転生して驚いたこと……それはテレビがあることだった。
5歳くらいの時、父さんが普通にテレビ見ようと言ってきたときは驚いた。
そして日曜朝の9時からは楽しみにしているある番組が始まる。
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「テレビの前の皆さま、こんにちは!おなじみ、リポーターのセシリーです。今週もエストレラ王家の皆さまを週替わりでゲストにお迎えし、取材させていただく『エストレラ王国公認王室チャンネル』のお時間です!今回はここシュテルン州マリーン領に来ています!現在、マリーン領を訪問されているアスラン第1王子殿下が来てくれました!!」
「こんにちは。エストレラ王国第1王子・アスラン・リィン・エストレラです」
「マリーン領では、毎年7月に大漁祭をやることで有名ですね。ただ近年は海洋モンスター被害も深刻だとか」
「えぇ。ここ数年、海洋モンスターへの対策が急務となっていますね。そのための視察でもあります」
「文武や魔法において有数の実力者であるアスラン殿下に来ていただけて、領民の皆さまやお祭りに参加される方も心強いと思います!」
「えぇ。皆さまにそう思っていただければとてもうれしく思います。これからも国民の皆さまにとって、心の支えになれるような存在でありたいですね」
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「やっぱりかっこいいなぁ、アスラン兄さん」
そう感嘆の声を漏らした時だっま。
「直接言われるとちょっと照れるな」
「あ、アスラン兄さん!?なんで、テレビ……収録映像か!」
そういえば前世でも生放送かと思っていたら収録だって知って驚いたことがあったな。
「難しいこと知ってんな~、クロは。そう。今回のは収録映像だよ。生中継もたまにあるけどな」
ふふっと微笑み、その逞しい掌で頭をなでなでされる。なんだかとっても心地よい。
「おっと、そろそろ行かないとな」
「あ、アスラン兄さん!」
もう行っちゃうのか。やっぱり忙しいんだよね。
「ん?」
「おれも、アスラン兄さんみたいな王子になれるかな?」
そう問えば、アスラン兄さんが優しく微笑んでくれる。そして俺の頭にぽふりと掌を乗せてくれる。
「ああ、もちろんだ。クロは今でもみんなに愛されているから心配ない」
「う、うん!」
俺はアスラン兄さんに憧れ、こんなかっこいい王子になりたいと願ったんだ。