表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改稿作業中】クロ殿下と剣聖ヴェイセル  作者: 夕凪 瓊紗.com
番外編集

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/919

【70】シズメさまとちび殿下

改行など、微修正しました<(_ _)>



――――side:クォーツ祭壇

それはクロ殿下がクォーツ祭壇に来るずっとずっと前のことである。


「シズメさま、今年は顔見せっかなー」

闇の精霊士長ギョクハンが頬杖を突きながら卓上のグラスをもてあそんでいた。クォーツ祭壇ではその日氷の精霊と生命の精霊を交えた首脳会議が開かれていた。


「フブキさまはいかがですか?」

司祭シェルが氷の精霊を見やる。


「う~~ん、かなり沈んでたからね……なんせ今年で3年目だ」

鎮守の精霊シズメさまが姿を隠して早3年が経とうとしていた。


「鎮守祭やっても全く姿を現さなくって……」

「がんばったのれすが……はうぅー」

光の精霊士長フィンと生命の精霊キララも落胆している。


「領民たちは自分たちが何かシズメさまに失礼なことをしてしまったのではないかと不安に感じているようです。これはクォーツ州……いえ西部辺境連合全体に言えることですね」

領民たちに治療やポーションの売買で接する機会の多い光の精霊士長という立場上フィンはそれをひしひしと感じていた。


「エル殿下はどうだ?」

「んー……シズメさま、怒ってるわけじゃなくて、ただ沈んでるだけなんだよね」

とエルヴィスことエル殿下が告げる。


「うん。領民たちに怒ってるわけじゃないし、シズメさまの力はしっかりクォーツ領に響いているよ」

エルヴィスと並んでいると兄弟のようにそっくりなフブキが答える。


「クォーツ領以外は?」

シェルの言葉にフブキが続ける。

「そうだね……王都から先に行けば行くほど弱くなっている」


「聞いた話じゃぁ東部ではアンデッド被害が出始めているとかな」

と、ギョクハン。

「……確かにそこは気になりますが、鎮守祭をやっていない地域じゃないですか」

フィンは不満そうである。


「だからこそ効果が弱まってるんだろうね。あの地域は王都のおこぼれをもらっていたようなものだから……」

フブキがふうと溜め息を吐く。

「水害や冷害も発生してるって報告を聞いたけどね」

エルヴィスの顔つきが真剣なものになる。その地域には義父のシュテルン公爵が治める地やゴーシュ魔法士長の郷里も含まれている。


「アンデッド被害についてはシズメさまの効力のせいだというものもあるそうでして」

「司祭様、それは許せません!シズメさまが何をしたってゆーんですか!普段からクォーツやシズメさまを軽視しているのに!」

フィンが憤る。西部辺境連合の一部クォーツ州と大商業都市、海洋都市の多いエストレラ東部の仲は昔から険悪だった。東部は黒い天人族は不吉だとし、鎮守祭を行っていないことも要因の一つである。


「シズメさまのご厚意でおこぼれを受け取っておきながら……っ!」

因みにシズメさまを不吉だという輩は大体の天人族が敵視している。フィンめ同じである。シズメさまは天人族のアイドルだからである。


「なぁ、ちょっと気になる噂聞いたんだけどな……。そのシズメさまの力が弱まって東部で天災が起こる原因が忌み付き王子のせいだってギルドで聞いたんだけどな。産まれた時に草木が一瞬で枯れたっていう噂にかこつけたもんだろうけど」

ギョクハンがエルヴィスの方を見る。


「……っ!ギョクハンさん……ウチの弟はめっちゃ可愛いんです。それはないです」

エルヴィスが即座に否定する。

「あ、そう。ならいいや。そうだ。写真持ってる?」


「え……写真?……撮ってきます」

エルヴィスはその瞬間、転移した。


「ちょっと、ギョクハン。会議中に何してんですか」

「え?フィン、行ったのはエルの方だ」

「もーっ!」

ぷくーっとフィンが頬を膨らませるが、ギョクハンはカラカラと笑うだけだ。


「それにしても……気に入らないですねぇ」

「司祭様?」

シェルの呟きにフィンが反応する。

「クロムウェル殿下がお生まれになったのは3年前の極夜祭の最中なんですけどねぇ……」

シェルが思い出すように語る。


「そういえば、ちび王子は極夜祭の時期に生まれたんだったな」

「ちび王子ってギョク、あなたは殿下に対する礼儀が……」

フィンがギョクハンを嗜めようとするが。


「違うか。ちび双子王子」

そうまたカラカラと笑う。そしてその時。


「ただいまっ!」

「はう……!エル様早いのです」

エルヴィスの帰還にキララがぴょこんとたれ耳を動かしながら驚き、その場の空気が一気に和んだ。


「弟の写真撮ってきたー!」

そしてエルヴィスが見せた一枚の写真には、狼耳パジャマをきた小さなかわいらしい黒髪のちびっ子がわふたんぬいぐるみを持っている姿が写っていた。


「わふたんぬいぐるみなのれす!」

わふたん精霊代表キララが顔を輝かせ、ハッハッとわふわふしっぽを振るのでフブキがもれなく頭をなでなでする。


「この間お土産にあげたら気に入ってくれてね」

「わふたん好きなのでいい子なのれす!!」

キリっとしたキララちゃんがわふわふしっぽをさらにはふはふさせている。


「へぇ、かわいらしいね」

「ふふっ!さすが俺を選んだフブキさま!」

わふたん精霊ずを遣いとして抱えるフブキも満足そうである。


「でも何で狼耳なんです?」

「ばぁか、フィン。狼王子がいんのに猫耳パジャマは着せられんだろ」

と、ギョクハンがフィンの疑問に答える。


「じゃぁアスラン殿下の趣味ですか?」

とフィン。

「いや、ヨシュア様の……」

エルヴィスの言葉にシェルが驚く。

「まぁ、ヨシュアくんが……?」

「司祭様、お知り合いなんですか?」

エルヴィスも知らなかった縁である。


「えぇ、いつもフィーアがご迷惑をおかけしておりますので」

ふふふと笑うシェル司祭はどこか悪戯っぽい。


「エルくん、その写真、少しお借りできます?」

「えぇ、いいですよ。10枚ほどストックしてるんで」

『……10枚?』

一同が思わずハモッたのは言うまでもない。


※※※


――――そして、会議後。


「あの、これは……クロムウェル殿下の写真?」

「あん時の写真だな」

ギョクハンとフィンはシズメさまの部屋にでかでかと飾られたクロムウェル殿下の写真を見つけてしまった。


「……シェルのやつ、また変な悪戯思いついたのか?」

「えぇっ!こんなシリアスな状況でですか!?」

しかしギョクハンは帰りがけに教壇の影から黒いもこもこがのぞいているのを見つけてしまった。


「……え?」

覗いてみるとそこには仮の姿でちょこんと座り、その写真を見つめるシズメさまがいた。


「何してんです?シズメさま」

「……」(ギクッ!)


「その子……気になるんすか?」

「……」(もじもじ)


「ちょっと、ギョク?何を……あ、シズメさまがいる……!」

「……」(はっ!)


「シズメさま……クロムウェル殿下はふわもふが好きと見ました!」

「……」(じー)


「なんだそりゃ。何言い出してんの?マッド通り越して暴走すんなよ?」

「天人族の勘が告げています!クロ殿下はふわもふ好き!」

そう推すフィンに続いて声がかかる。

「会いに行かれてはいかがです?」

『司祭様!?』

いつの間にか部屋の入口にシェル司祭が立っていた


「……。……。……」(……コクっ)


「まじで!?」

「ほら、天人族の勘が疼くのです!私にはわかります!!」

驚くギョクハンに、フィンがやはりと頷く。


「……」(……!)

シズメさまが本性に戻る。


「……ん」

「行ってらっしゃい」

司祭様がおっきいシズメさまをなでなですると、シズメさまのお耳がぴくぴく動いており、嬉しそうである。


「さすがは軍師、謀ったな」(コソッ)

「……何か言いました?ギョク」

振り向いたシェル司祭の黒い笑顔にギョクハンのいつものへらへらした笑顔が引きつった。


――――王都エストレラ城・後宮


「……?」

今日も狼耳しっぽのパジャマを着たクロことクロムウェルはわふたんをふわもふしていたのだが、不意に顔を上げてそわそわしている。

「殿下……?」

とてとてと歩きだしたクロの後を紅消が追っていく。


「……あ!」

襖を開けるとそこには黒い大きなふわもふがあった。


「もふっ!」

「……!?」

大きなふわもふしっぽの主が振り返る。


「……精霊?」

紅消が呟く。本来であれば精霊であろうと王子の寝所。警戒をすべきなのだが不思議とその気が起きなかった。


「しじゅめさま!」

クロがそう呼んだのを聞いて、普段表情を変えない紅消が目を見開いた。


「鎮守の精霊シズメさま……」

エストレラ王国で知らぬ者はいない。クォーツ祭壇の主精霊。3年ほど姿を見せていないと聞くが、何故後宮に……?それもクロムウェル殿下の寝所に……?


「……の……れは……」

「しじゅめさま……?」


「……くろ……」

「こっち、いっしょ!」

クロがシズメさまの着物の裾をつかんで部屋の中へ招く。紅消は悩みながらも、このエストレラ王国の大精霊を無下に扱えるわけもなかった。クロの部屋に入ったシズメさまは、自身のしっぽでたわむれるクロをなでなでしていた。とても愛おしそうな顔で……。


※※※


後宮へクロに会いにやってきたエルヴィスはクロと一緒にいる黒い天人族を見て目を瞠る。


「……シズメさま?」

シズメさまのふわもふしっぽが気に入ったのか、先ほどからふわもふしっぽの上でころころと転がっている小さな弟。


「クロ」

エルヴィスは柔和な表情でクロに手を伸ばす。


「……!」

クロもそれに気づいたのか、ころころをやめてその大きなまん丸い瞳でエルヴィスをじっと見上げてくる。


「エルにーに!しじゅめさま!」

「クロ……シズメさまのこと、気に入ってくれた?」

「うん。しじゅめさま、しゅき!」

「……クロ……我を、許してくれるのか……?」


「シズメさま……クロはシズメさまを怨んでなんかいないし、キライになんてなっていません。この子はシズメさまが大好きなんです」

「……エルヴィス……うん」

シズメさまはすりすりしているクロを優しく抱きかかえた。

クロはわふたんぬいぐるみを抱っこしつつ、シズメさまに抱っこされながらきゃっきゃと笑っている。


「……」


ぱしゃ。


「エルヴィス……それは……なに……?」

「祭壇に飾ります、シズメさま」

「……!!」

シズメさまが嬉しそうに微笑んだ。


※※※


――――クォーツ祭壇


「シズメさまがお姿を!」

シズメさまの久々の顕現にクォーツ祭壇ではお祭り気分だった。


「……ん」

シズメさまもお耳をぴくぴくさせて嬉しそうにしている。


「そのシズメさまが復活した理由がこの写真です!」

エルヴィスがでかでかとパネルを掲げる。


「シズメさま……笑ってる……」

「そのちびっ子は……?」


「ウチの弟、クロムウェルです!」


『ええぇぇぇ――――!!!』

クォーツ祭壇のみながずっこけつつもクロ殿下を大好きになった瞬間であった。


その後シズメさまの鎮守の力の余波を受けたのか、エストレラのアンデッド被害などが徐々に鎮静化したと言う。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ