【69】番外編:クロ殿下と天人族
――――side:天人族
クォーツ祭壇光の精霊士長フィンは頭を抱えていた。
「なぜ……なのでしょう。クロ殿下は我々をもふってくださらない」
「狼しっぽ、猫耳、ふっくら兎耳……フィン様。我々は王道からは外れているからでしょうか」
「でもシズメさまはもふっていらっしゃる」
「シズメさまは特別だし……」
クォーツ祭壇天人族の会では今まさに彼らの一進一退をかけた話し合いが開催されていた。
「一進一退っていうかふわもふしてもらいたいのよ。クロ殿下に」
「女の子相手だと遠慮しているクロ殿下はかわいいよね」
天人族の男性陣を尻目に女性陣は楽しそうにお茶をしていた。
「一体どうすれば、クロ殿下は我々をもふってくださるのか……」
フィンが悩ましげにしていれば。
「……」(ぽむぽむ)
仮の姿のちったいシズメさまがいつの間にかフィンの足元でぽむぽむしていた。
「シズメさま……?」
フィンがシズメさまの前に膝をつく。
「……!」(ぐっ!)
「……もしやっ!」
何かを悟ったフィンは再び立ち上がり宣言する。
「皆、天人族の本分を思い出すのです!我々は……」
『はい!フィン様!!』
ぽむっ、ぽふっ、ぽむっ、ぽふっ、ぽむ…………。
※※※
――――side:クロ殿下
ん、おなかの上になにか……シズメさまかな……?
「……」(おはよ)
「うん、おはよ」
今日もふわもふ……ふわもふ、ふわもふがたくさん並んで……。
……え?俺の枕もとを囲むようにふわもふふわもふ……???そこには白やベージュの色の天人族のちびっ子バージョンが大量にいた。
「おはようごさいます、クロ殿下」
「へ……?その声、フィンさん?」
「はい」
そういえば天人族って変化の術が使えるんだったっけ。
「えっと……その、どうして?」
「クロ殿下、ふわもふですよ」
「……ふわもふ?」
『ふわもふです!クロ殿下!』
ちっこいふわもふ天人族軍団が盛大に合唱する。
えーと……まぁ本人たちの希望なら。
もふ……もふ………。
「クロ殿下、おはようございま……」
天人族軍団を順番にもふっていると紅消がいつものように入ってきて硬直している。
シズメさまが俺の隣にちょこんと座り、天人族たちが俺にもふってもらうために順番に並んでいる。
「……シズメさまと天人族?」
「私ですよ、フィンです。紅消」
ちったいフィンさんが紅消をぽむぽむしている。
シズメさまみたいでかわいい。
「……何してるんです、精霊士長」
「何って、ふわもふですよ」(キラッ)
「はい、ふわもふ全員終了!」
見事全員をもふり終わった俺。俺も天人族のふわもふしっぽは気になってはいたんだけど、フィンさんたちにはどこか気軽に触れガタい何か神秘的なものを感じてしまうんだよなぁ。翼があって天使っぽいからか……?いや天使にふわもふしっぽや長いたれ耳は無いけれど。
「では、皆さん。さっそく今日もお仕事に励みましょう」
『おー!』
皆で片手をあげてガッツポーズをしているのもかわいいなぁ。
ぽむっ、ぽふっ、ぽふっ、ぽむっ…………。
ちびっ子天人族が元の姿に戻っていく。
天人族の男性は背が高い。皆シズメさまの本性のように2メートル近くある。女性は割と150~160センチくらいなので、他種族とあまり変わらないのだが。そして俺はもっふもふ大きな天人族メンズに囲まれた。なんだか小人になった気分。
「……?」(どや?)
「……悪くはなかった……」
シズメさまにグッドサインを送る。
「ではまたお邪魔しても?」
フィンさんがキラキラしながら聞いてくる。周りの皆もキラキラした目で見つめてくる。すっごいふわもふ密度!
「ま、まぁ……いいけど……」
シズメさまがいっぱいいるみたいでかわいかったし。
※※※
――――side:天人族
「ねぇ、フィン様たちが定期的にクロ殿下ふわもふ会をしてるそうよ」
「え~~、いいなぁ。私たちも変化して混ざっちゃいましょうか?」
「あら、いいかも。でも女子は変化が苦手なのよね」
「途中で変化が解けちゃいそうね」
「えーっ」
「じゃぁ、もういっそのことちびちゃん連れてくる?ウチの妹まだちっちゃいの」
「あら、いいかもね。私も親戚のちびっ子連れてこようかしら」
「そういえば、クロ殿下の妹姫さまって天人族の血を引いてるって聞いたけど」
「まぁ、ステキね。絶対かわいいわ。妹姫さまはふわもふしてるのかしら?」
「きっとそうよ。それなら今度女の子へのふわもふのアドバイスをしてあげなくちゃ」
天人族の女性たちは今日もスイーツを片手に話に花を咲かせている。




