【67】クロ殿下とイヴ姫のクッキー紀行(前)
説明文を補足しました<(_ _)>
――――この世界に来て驚愕したことがある。
その1:王子だったこと
その2:魔族じゃなくて魔人族(エストレラ限定)
そして……
その3:クッキーの型
「クッキーの型が……丸だけ」
……丸しかないんですけどおおおぉぉぉっっ!!!???
「クロ殿下、どうされました……?」
「クッキーの型が丸しかないんだよ!紅消!」
「……はぁ。クッキーは丸いものではないですか?四角くてチェック模様のクッキーも見たことはありますが」
あぁ、生地を細長くしてくっつけて輪切りにして焼いたあれね?
「……あれはどうやって作るのでしょうか。幼心に気になって眠れませんでした」
珍しいな。紅消がここまで興味津々とは……。
「……うん。今度作ってあげるから」
「はい!クロ殿下!私もクロ殿下のおんため、たっくさん特製ポーションをつくりましょう!」
えっと……紅消の変わり種ポーションか。それはちょっと。またマッドヒーリングポーションが生まれそう……。
※※※
「というわけでヴェイセル。クッキーの型を量産したい。ハート型とか、星型、花型なんかだ」
「クッキーの型ねぇ……錬金術師にでもたのんでみる?」
れ……錬金術師!異世界ファンタジーに必ずと言っていいほど……ではないが欠かせないファンタジー要素じゃんっ!
「うん!早速錬金術師に会いに行こう?」
「あ、それなら知り合いに紹介状もらわないと……」
一見さんお断り式なのか?
「怪しい客に怪しいもの作ると罪に問われたり、評判が下がったりするからね。錬金術師も客を選ぶには慎重なんだよ。クロなら問題ないと思うけど……モグリの錬金術師とかは要注意だからね」
闇商人みたいな感じか……?確かにそこら辺は注意が必要かもしれない。
「ヴェイセルは錬金術師の知り合いがいるんだ」
相変わらずの顔の広さ。さすがはSS冒険者でしかも世界最強の剣聖だ。
「ということでウェル。実家の錬金術工房紹介して?」
「……ん?」
ヴェイセルがおもむろに声をかけたのは黒猫アニキであった。え、実家錬金術工房だったの!?
因みに黒猫アニキは本名をウェル・ベルと言う。
クォーツ祭壇の闇の精霊士のアニキの一人で、チャーミングな猫耳に通常の猫族よりもふっわもふな黒狼族系の遺伝子を受け継いだしっぽを持つ。黒猫アニキは黒狼族系の猫族なのだ。そしてそのチャーミングな猫耳しっぽに不釣り合いなこのコワモテ。――――だがそれが癖になる。黒猫アニキはちびっ子たちや俺のような弟属性に大人気なのだ。
「ん。クロ殿下……こ」
……こ……?おいでって……意味だっけ?この西部辺境訛りも魅力のひとつである。
――――黒猫アニキの猫耳に癒されつつ、俺はアニキとヴェイセルと工房へ向かった。
「……ウェルか……何した」
「ん……親父」
黒猫アニキのお父さんも黒猫耳に黒猫アニキとおんなじふっわもっふしっぽである!そしてやっぱり黒狼アニキズのように顔が恐い。猫耳しっぽには癒されるけど。
「ん……」
「んだか……こ」
「……ん」
黒猫アニキが手招きしてくれる。話がまとまったのか?……というか、あれで話通じたの!?俺がイメージを絵にかいて、アニキの親父さんに渡す。数分後、見事なハート、星、花型のクッキーの型ができていた!
「やったぁ~!ありがとうございます!俺、今度クッキー作ったら差し入れますね!」
「……クロ殿下……」(くわっ)
……くわっ!?
「……また、こ……」
親父さんがなでなでしてくれる。またおいでってことかな。クッキーを作ったらまた来よう。そして次もいろんなお菓子の道具を頼もう!工房を出ると黒猫アニキもなでなでしてくれた。親父さんがなでなでしてるの、うらやましかったのかな……?
※※※
そして次はヴェイセルのゲートで後宮にやってきた。
「クロ、後宮で作るの?」
「うん、イヴと一緒に作ろうと思って」
俺がクォーツに行ってからイヴは大好きなににと離れ離れになったのが寂しいらしい。
まぁこうして1週間に1度、ヴェイセルのゲートで会いに来てはいるのだが。
「ににさまー!」
イヴ―!かわいい!ににさまだよー!まったー!?イヴは相変わらずかわいく俺にかけよってぎゅーしてくれる。あぁ妹ってこんなにかわいかったっけ?イヴだけは特別だ!ヴェイセルは後宮騎士隊のシルヴィーさんたちに捕まって……総叩きにされている。
因みにシルヴィーさんは見事な銀色の髪を持つ、クールビューティ―で女性陣からの絶大な人気を誇る。まぁ総叩きと言ってもいつもの訓練らしくヴェイセルはものともせず無双している。しかし後宮騎士隊の猛攻撃も恐えぇ。
まぁ、あっちの体育会系は気にせず……俺とイヴとクッキー作りだ!
「お花さん……」
かぽっ!かぽっ!
クッキー生地でかわいいクッキー型で型抜きするイヴ……っ!お兄ちゃん……萌える!めちゃ萌える!因みにイヴは花型が気に入ったらしい。
「いっぱいできたなー」
「うん!」
続いて魔動オーブンで焼いていく。因みにそこは魔動オーブン。魔法とファンタジーの世界。たくさんあるクッキー生地も一度にたくさん焼ける。魔法ファンタジー……最高!
※※※
「実に有意義な訓練でした。剣聖殿」
「いやいや……どういたしまして。シルヴィーちゃん」
「ちゃん付けはやめろ!」
おや、ヴェイセルの方も終わったらしい。
「ヴェイセル―!そろそろクッキー配りに行くぞー」
「ん?うん!どこに配りに行くの?」
「かあさまたちと、とおさまたちにあげるの」
「へぇ……きっと喜ぶね」
俺たちは早速王城探索へ向かった。俺たちには王配である父さんが5人いる。さて、イヴと一緒に5人の父さんを探しに……あ、5人の父さんのひとりは母さんであった。
だから俺たちには4人の父さんに2人の母さんがいるのである。
その1:第2王配ゴーシュ父さん
「テイカ母さんと父さんは今後宮を留守にしてるから……一番捕まりやすいのは宮廷魔法士長のゴーシュ父さんだな」
魔法士とは魔法使いや魔女の公式な公務員名である。その中でも王国一の花形が宮廷魔法士官。ゴーシュ父さんはその長官をしている割とすごい人なんだよ?
「ににさまー!とおさまいたよ~」
「あ、待って!イヴ、お仕事の邪魔にならないようにしないと……」
「あら、クロムウェル殿下とイヴ姫殿下」
「やだ!おかわいらしい~」
「ゴーシュ様呼ばなくちゃ」
あ、何か魔法士たちが呼んでくれるらしい。
「あ、剣聖だ~」
「実験台になりに来たの~」
「……違うから」
ヴェイセルは白衣を着て目の奥をキラキラさせた魔法士たちに囲まれていた。何故だろう?何となくマッドヒーリング班を思い出してしまった。
そしてしばらくするとゴーシュ父さんがやって来た。ゴーシュ父さんは癖のある黒髪で前髪を真ん中わけにしている。瞳は見事なエメラルドグリーンなのだが……。
「……クロと……イヴか……?どうした……?」
何か……目が疲れてる?
「あ、ゴーシュ父さん。実は……」
「ネクラとおさま!」
……はい?イヴさん……今何て……?
「ねくらとおさま!!」
「イイイイイイーヴゥッッ!そ、それはちょっと!!」
ネクラ……ネクラって……っ!確かに顔に影があってクマもひどくてあんまり自己主張しそうにない父さんだけど!ネクラってイメージにも合っているけど目も疲れて翳ってるけどっ!!
――――それはだあめえぇぇぇぇぇっっ!
倫理的に!健全な成長に良くないっ!というかどこでそんな言葉を……?
「ににさま?」
「せめて……せめてちょっと変えようか。……暗めな父さまとか、えーと陰気な父さまとか!」
「クロ、それもちょっとどうかな……?」
とヴェイセル。
「ネクラとおさま!!!」
「ゴーシュ父さん……何かごめん」
イヴがさらに気に入ってしまったらしい。どこで間違えたんだろう。
「どうせ……俺は……ブツブツ……」
「……ゴーシュ父さんがネガティブモードに!?」
「クロも容赦ないよね。そんなドSなところもそそるけど」
え?俺が容赦ないって……?どゆこと?でもオイこらヴェイセル。どさくさに紛れて変態妄想禁止!
「ほら、イヴ。クッキー渡すんだろ?」
「うん!ネクラとおさま!はい!クロににさまと作ったんだよ?」
「……ん。ありがとう」
心なしか、ゴーシュ父さんは嬉しそうだ。良かった……元気出て。
「良かったですね!ゴーシュ様!」
「息子さん娘さんに愛されてますね!あと少し!ファイトです!」
うん、職場の人も励ましてるし……ここは大丈夫か。




