第771話 クロ殿下とスバル殿下とダンジョンボス
―――南部連合王国青嵐県未踏破ダンジョン内
不思議な御子さまと7匹の半鬼半精霊たちの大きな壁画・・・
ひとまず俺たちは、その大きな壁画のあるフロアを調べることにした。
「御子さま・・・ここには、何かがあるのかな・・・?
また、誰か・・・待っているこがいるのかな・・・?」
俺は、ふと御子さまの画に触れた。
「・・・あっち・・・なの・・・?」
何となく・・・わかった・・・
「どした?クロ・・・?」
「ヴェイセル・・・あっちだ」
それは、何の変哲もない壁・・・
そして、“そこ”をゆっくりと押すと、不意に扉が現れる・・・。
「すごい・・・!どうしてわかったの・・・?」
「何と・・・なく?御子さまが教えてくれたのかな・・・」
ここから・・・会えるって・・・?
その扉は、押しても引いてもダメだったので、
下から上に引き上げると、まるでシャッターのように開いた。
「紅消・・・このパターンも・・・」
「えぇ・・・好きなんでしょうかね。この扉ネタ」
「それ、何の話っすか?」
と、リョクタがきょとんと聞いて来る。
「いや・・・前にも同じようなことがあってさ・・・」
「えぇ・・・そしてきっと今も、ジェルミー殿がカンガラダンジョンで
様々な扉ネタを披露していることでしょう」
と、紅消。
「うん・・・ジェルミー・・・扉ネタ、気に入ったみたいだしね」
因みにジェルミーの大のお気に入りは、自動ドアである。
奥へ進んでいくと、
そこにひとりの茶色い髪の女の子が呆然と、こちらを見ていた。
しかし、普通の女の子ではない・・・
かわいらしい印象をもつ女の子だが、白目と黒目の反転した目、
短い鬼角が頭の右に一本だけ生えており、
脚は恐竜のようで、手は巨大化しており、
先っぽに巨大な爪がついている。
後ろからはコウモリのような翼手が生えており、ウミヘビの尾が生えている。
胸元によくある冒険者の部分鎧を身に着けており、
下はスカート。つまりはへそ出しであるっ!!
・・・寒くないのかな?
「えっと・・・君は・・・」
半鬼半精霊のひとり・・・そんな気がする・・・
手を伸ばそうとした、その時・・・
「・・・スバル・・・」
クララさんの低い声が響く。
「ど・・・どうしました・・・?」
恐る恐る、皆でクララさんを振り向く。
「・・・ロリコン・・・?」
いや、意味がまるでわからないんですけど。
ヴェイセルはともかく、
スバルは変態じゃありませんよっ!!?
一体なしてそんな・・・っ!!
「いや、クロ。俺はロリコンじゃなくって、ロリショタコンだよ?」
と、しれっといつもの読心術でヴェイセルが囁いて来たので、
もれなくエルボーっ!!!
「幼女ガン見してんじゃねぇっ!」
くわっ!!!
「いっつぅぅぅぅ―――っ!!してないよ!そんな趣味ないよ!痛いよクララ!」
クララさんの手刀に、スバルが悶絶していた。
「まぁ・・・確かに・・・年下の女の子たちと仲いいよね。
角フェチ会とか・・・やってるし・・・」
北部魔王国の王女・アンズちゃんと、
東方魔王国の王女・鴇子ちゃんと、謎の角フェチ会をやっているというスバル・・・
2人は、日本で言えば中学生くらいの女の子である。
それに、ウチの妹のイヴとも仲良しだし・・・
「え・・・?」
俺は、猜疑心にあふれた目で、思わずスバルを見やる。
「ちょ・・・っ!?クロまで・・・やめてよ・・・
俺にはそんな趣味はないからっ!!」
「しかし、女っ気がない」
いや、クララさんという女性がいるのでは・・・?
「いや・・・それは・・・その・・・出会いとか、
SS級冒険者とかやってると、ぶっちゃけないし・・・
でも、領民の女性たちとは仲良しだよ?子どもたちとも遊んでるし・・・
は・・・っ!だからって、そういう意味じゃないからっ!!」
「・・・冗談だ。そんなに必死になるとは・・・怪しいな」
「ぐはっ!!!」
いや、冗談だったんですか!?クララさん!!
今、SS級冒険者の急所つきましたよっ!!?
そして、項垂れるスバルを余所に、
クララさんは少女に近寄り、そっと手を差し伸べた。
「どぉ・・・して・・・?」
一瞬、ことばが通じなかったらどうしようかとも思ったが、女の子は恐る恐る声をあげた。
「女の子同士なんだから、当然だ。君とは仲良くなれそうな気がする」
「私・・・化け物・・・女の子・・・違う・・・」
「種族など関係ない。それに、翼としっぽは、竜人族のものとも似てる」
確かに、細かいところは違うけれど、
翼の形、鱗のあるしっぽは似ているかもしれない。
「一緒に来るか・・・?」
「い・・・いの・・・?」
「あぁ、そして、一緒にダンジョンを運営しよう」
あ、それ誘うの?
まぁ、最終目的はそこなんだけど。
「私・・・いいの?」
「あぁ、もちろんだ。いいな、男ども!」
『イエス、マム!!』
俺たちは、勢いよく声を合わせた。
「時に、名は何という?」
「・・・叫魔」
それが、半鬼半精霊の固体名ってとこか・・・?
その意味的には・・・“憤怒”かな・・・
「クララさん、このこに名前を付けてあげてくれませんか?」
「・・・私が・・・?」
「懐かれてるみたいですし」
女の子は、クララさんにピタッと、くっついている。
「そうだな・・・将来、勇猛な女騎士になるよう・・・」
いや、最終目標はダンジョンボスですけど。
「シズカ」
全然そんなイメージ沸きませんけどおおおぉぉぉっっ!!?
むしろ真逆!
真逆なんだけど!
いや、このこのイメージには合うけど!
「しずか」
「うむ、シズカだ」
とりあえず、シズカちゃんに決まった。
「ところで、シズカちゃんは、
ここのダンジョンボスで、いいのかな?」
「・・・ううん、御子さま。ボス、睡魔」
やはり、この子も俺を御子さまって呼ぶんだな・・・
一応、スイランはもちろんだが、浪魔のジェルミーも、
俺が御子さまと同じ魂を持つ存在だが、
別々のひとという認識は持っているのだが。
やはり、相変わらず俺の呼称は“御子さま”らしい。
取り敢えず、“クロでいいよ”と付け足し・・・
「それにしても・・・睡魔か・・・」
シズカちゃんが告げたその名を反芻する。
また半鬼半精霊シリーズ?
個体名的には、“怠惰”かなぁ・・・?




