第765話 クロ殿下とスバル殿下と嵐の精霊
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前回までのあらすじ:
「来るのぢゃ・・・」
「な・・・何が・・・何が来るんだ・・・?エレン・・・」
「嵐のが・・・」
「ってことは・・・まさか・・・このパターンはっ!!」
「嵐のふわもふ祭りが来るのぢゃ~~~っ!」
「わぁいっ!ふわもふ祭り~~~っ!た~のし~ぃな~っ!!」
・・・って、んなわけあるかいっ!
※正しい前回までのあらすじをご希望の場合は、前話をご覧ください。
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「げっ!来ちゃうっ!!」
急いで風の精霊が離脱しようとしたのか、足元につむじ風が舞い始めたのだが・・・
脚を取られてへにゃりと・・・コケた。
「うぐぐっ!」
「貴様・・・また我のナワバリに何をしに来た・・・」
ナワバリ・・・
そういえば、風の精霊もここが南部連合王国内だからか、
そう言ってたけど・・・。
もうひとり、ここをナワバリと言い張る精霊・・・現る・・・っ!!?
現れたのは、白がイメージカラーの風の精霊とは対極に、
黒いイメージカラーが似合う精霊だった。
黒髪、無機質な漆黒の瞳。
何となくスバルに似ているのだが、
エストレラ王国東部に暮らす少数種族・海の民のような耳をしている。
肩から斜めにかけられた白い一枚布を、腰のあたりでベルトで止めており、
淡い紫のストールを腕に羽織っている。
「嵐の精霊さま!」
「この風の精霊何とかしてくださいっ!」
兎耳族のひとたちは、その嵐の精霊さまに陳情していた。
「あの・・・スバル、こちらは?」
「嵐の精霊・ローレインさまだよ。俺の領地の東にある海に住んでいる精霊で、
ウチの領土が台風や竜巻に襲われた時に、いろいろと助けてくれたんだ」
へぇ・・・いい精霊だな・・・
そして、気配としては、闇の精霊みたいだ。
ん・・・?風の精霊は光の精霊・・・
そして、目の前にいるのは・・・
「闇の精霊・・・だよね?」
もしかして・・・?
「・・・対の精霊?」
「そうだ」
と、嵐の精霊。
風の精霊は、恨めし気にローレインさんを睨んでいる。
「というか、闇の精霊だけど・・・いいの?
エストレラや、魔族国以外では、あまりよく思われていないって聞いたけど・・・」
「・・・うん、確かに恐いイメージだったけど・・・
海底ダンジョン攻略したら偶然出会ってね。
割といい精霊だってわかったし。
俺、暗夜祭の時に闇の精霊である月の精霊・アンエイさまにも
一時的に加護を授かってるから。その縁もあるしね。仲良くなれたんだ」
まぁ、確かにそうだよな。
闇の精霊に悪印象を受けていたら、暗夜祭で月の精霊に加護を受けたり、
闇の精霊を祀っているエストレラ王国に留学に来たりとか、難しいから。
そいえば・・・そうだった。
「皆もその縁があって、あんまり闇の精霊に忌避感はないんだ。
破壊の精霊を縁結びの精霊と祀る考えにも賛同してくれたし」
破壊・・・と聞くと恐そうな精霊だが、
破魔とか、破邪とかの力もあるありがた―――い精霊だ。
「もし、よければ、ウチの領地に祭壇ができたら、
嵐の精霊もウチの祭壇に来てくれないか?」
「そ、そんにゃっ!」
にゃって・・・
・・・そこは“ぴょん”ではないのか・・・
いや、そんな語尾のひとには会ったことないか・・・
たまに、クォーツ祭壇の兎耳光の精霊士・ラビアンお姉さんが、
ふっくらお耳をつまんで、“ぴょんぴょんっ♡”と言ってくるくらいだ。
「・・・かまわない」
そして、嵐の精霊・ローレインさんが、スバルの問いにさらっと答えた。
「んぎゃぁっ!」
それだけで大打撃。
この対の精霊コンビの関係性は、
俺の知っている関係性とは違うのかもしれない・・・。
「もとはと言えば、
この青嵐県に嫌と言うほど台風竜巻呼んだのは、この風だ」
「うぐっ!」
えええぇぇぇっっ!!?
「だって・・・憎き碧狼族を匿ってるって聞いたから・・・」
「カロクさんは、全くの無関係っすよ」
「種族を理由に恨みつらみを押し付けるのは、精霊としてどうかと思います」
とスバルも。
「ぐはっ!」
「・・・謝れ」
と、嵐の精霊。無機質な色の瞳なのに、眼圧が・・・すげぇ・・・。
まるで、ハーパンっ子萌えで暴走する光の大精霊こと、
太陽の精霊・コウリンさんに有無を言わさぬ威圧を放つ、
闇の大精霊と名高い月の精霊・アンエイさんのようである。
因みに、このふたりの精霊も、対の精霊同士である。
違う点は、コウリンさんがアンエイさんが大好きな点だろう。
対して、風の精霊は、ローレインさんに苦手意識を持っているっぽい。
「ぐぐぐ・・・っ」
「謝る・・・」
「うぅ・・・はい・・・度々の蛮行、ご・・・ごめんなさいっした・・・」
嵐の精霊の威圧に押されたのか、風の精霊は、項垂れて謝った。
項垂れ方は、コウリンさんにそっくりだ・・・
風の精霊に、エステラ大祭壇のサイカ大司祭様攻撃が効果抜群なのにも、
何だか納得がいってしまう。
「まぁ・・・嵐の精霊がいてくれるなら、俺たちは」
「そうです」
「さすがは嵐の精霊さま」
嵐の精霊、領主領民たちに愛されてるなぁ・・・
「そうだ、罪滅ぼし代わりに、風、ここも本祭壇にするのぢゃ」
とエレン。
「えっ!」
「ぬしらがこれをよく思わぬのはわかったのぢゃ。
しかし、いざというとき、属性精霊が集結すれば最強になるのぢゃ!」
おぉっ!さすがエレン!
「まぁ、謝ってくれましたし・・・」
「嵐の精霊さまがいれば安心ですし」
嵐の精霊さまの恩恵のおかげで、
あっさり決裁は下りたらしい。
風の精霊は・・・めっちゃ大人しくなった。




