第764話 クロ殿下とスバル殿下と兎耳族
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兎耳のおさらい:
>ノウサギ耳:よく地球でも見かける、立耳ウサギの兎耳、
長さは10センチほどで、お耳がそれぞれ左右に向いてているのが特徴。
ドライアド原野で暮らす水素の精霊・ハイドレーヌさんがこのタイプ。
シルヴァリー共和国などに稀に見られるらしい。
>平べったい兎耳:お耳の太さは平べったく、地球でもよく見かける立耳ウサギのようだが、
その長さは長く、ファンタジー感たっぷりの20~30センチほどの長さがある。
因みに、左右のお耳は前向き。
エストレラ王国を除く国々ではポピュラーな兎耳。
ついでに、風の精霊の兎耳はこのタイプ。
>ふっくら兎耳:平べったい兎耳を、そのままもっふもふにしたような、
ふっくら兎耳。そのお耳は、大体かわいらしく折れ耳になっており、
冬に雪が降っても、ウサ耳の中に雪が入らないようになっている。
そして、もっふもふなため、冬でも温かい。
主にエストレラ王国の兎耳族の特徴に多く、エストレラ王国以外ではほぼ見かけない。
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風の精霊が完全に脱力して真っ白に燃え尽きたところで・・・
「それより、リョクタ・・・風の精霊が、
昔、変な組織に兎耳族売り払ったとか言ってなかった?そこらへんが俺、気になる」
「ん・・・あぁ・・・そうっすね・・・
確か・・・その後その組織は壊滅したって、リョウヤアニキが言ってたっすね・・・」
「あ・・・当り前よ・・・アタシが・・・壊滅させたんだから・・・」
あ、かろうじて喋れたみたいだ。兎耳しっぽの風の精霊。
「アタシとおんなじ兎耳族の姿ですもの・・・
愛着がわくのよ・・・だから・・・助けてあげたの・・・っ!」
「それで、彼らはどこに?」
「・・・いつの間にか・・・アタシの元を去ってしまったの・・・
てっきり風の大祭壇にでも来てくれるものだと思ったのだけど・・・」
「風の大祭壇?」
「風の精霊を祀る本祭壇・・・南部連合王国王都にある大祭壇のことだよ」
とスバル。
つまり、エストレラ王国で言う、エステラ大祭壇ってわけか。
「でも、行かないと思うよ・・・さすがに」
「どうしてよっ!!命の恩人のアタシを祀ろうと思わないのっ!!?」
「南部連合王国では・・・最近はましになってきましたが、
亜人種差別がありましたから・・・獣人族はまず、行かないでしょうね」
「ぐはぁっ!!!」
「それでも、兎耳族の姿の風の精霊は祀るの?」
「それだけ、属性精霊の恩恵は強いものだからね。
南部連合王国は一回、氷の精霊で失敗してるから」
あぁ・・・氷の精霊・フブキさまを邪険に思って追い出しちゃったってやつ。
「その後、炎の精霊だけ祀ろうと思ったら、炎の精霊が人族の戦争にキレて暗転して、
氷の精霊の元に行っちゃったし・・・」
まぁ・・・確かに、炎の精霊・ほむらさんってフブキさま大好きだもんな。
ふたりって対の精霊だもんね。無理もないわぁ・・・
目当てだった炎の精霊も去ってしまって、
結局属性精霊ふたりを失ってしまったわけか。
そりゃぁ・・・同じ轍は踏みたくないわな。
「そんな・・・っ!嘘よ・・・っ!アタシを女神のように祀っていたのに・・・っ!
あの子たちだって、そんな背景がなければ、アタシの元にっ!!!」
「それじゃぁ・・・実際に会ってみます?」
へ・・・?・・・スバルの知り合い?
皆で小領地の集落まで行き、スバルが連れてきたのは、数人の兎耳族たち。
皆、風の精霊と同じような平べったい兎耳をしている。
金髪、銀髪、珍しい黒髪のひとまでいた。
「と、言うことで、風の精霊が来た訳だが・・・君らと話がしたいそうだよ」
と、領主であるスバルが告げる。
「皆っ!こんなところにいたのねっ!!さぁ、アタシと行きましょう!!?」
「え・・・嫌です」
と、ひとりが口を開いた。
「へ・・・?」
「だって・・・」
「ねぇ・・・?」
「農作物が台風被害受けたし・・・」
「竜巻も・・・」
「はぁ・・・」
「ぐっさぁっ!!!」
皆さん!風の精霊にマジで嫌そうな感じぷんぷんさせてんですけどっ!!?
「だいたい、我々は兎耳族の集落には戻りたくないです」
「ぶっちゃけ、攫われてさぁ、自由になったぞ~と思っていたら、
再び兎耳族の集落に連れてかれたんですよ?マジあり得ないです」
「また逃げるのに苦労したんですから」
「領主様、とっとと追い返してください」
「もっぎゃぁっ!!!」
んななななななっっ!!!
ちょっと!
何か、めっちゃかわいそうなことになってきたよっ!!?
「あ・・・あの・・・兎耳族の集落に戻りたくないってのは・・・?」
一応確認。
「特殊な声を持つから・・・よく虐められたんですよ」
「化け物とか言われて・・・」
「そうそう。俺なんて、黒髪だからって、悪魔が乗り移ったんだ~って!
単に母親が黒髪の人族だっただけですけど?母親似なだけですけど?」
そ・・・それは・・・っ。
そいえば、かつて碧狼族に攫われて、
クォーツ州クリスタ領に連れて来られたイチゴちゃんも特殊な声を持っていた・・・?
イチゴちゃんは、自分と“同じ”兎耳族の元に帰りたいとも寂しいとも言わなかった。
むしろ、養女として引き取られたクリスタ領主一家にすぐになじんでいたし、
本当の家族のことは、“いない”と言っていたそうだし・・・
その意味は、“存在しない”のではなく、家族から疎外されていたとしたら・・・?
一方、イチゴちゃんの養母でありクリスタ領領主夫人である
エストレラ王国限定ふっくら兎耳の兎耳族・ミミさんは特殊な声のスキルを持つ。
エストレラ王国にはそういった兎耳族が多いが・・・
というか、むしろそういう兎耳族の方が多い。
でも、周囲から疎外されたりはしない・・・。
むしろ、ルタ獣王国から移住してきたという歴史も・・・
昔々、王族と同じ白い毛並みではないというだけで、
迫害されて故郷を追われた豹族・・・現雪豹族とは異なり、
兎耳族は、今でも白や金に近い毛並みが圧倒的に多い・・・
稀にクォーツ祭壇の光の精霊士・トールさんみたいな
茶狼族の片親を持つ茶色い毛並みの兎耳族もいるにはいるが・・・
本来ならば、迫害されて追われることがなく、
獣人族にしては体がそんなに丈夫ではない、
彼らがルタ獣王国とエストレラ王国西部辺境の境に位置する、
険しい天山山脈を越えてまでエストレラ王国まで逃れてきたのは・・・?
特殊な声のスキル持ちが多いということからも、
もしかしたら、そういったスキルを持った者たちが、
スキルを理由とした迫害から逃れるために移住して来たのだとしたら・・・?
納得がいくかもしれない・・・
「というか!!アンタたち!この碧狼族どもに恨みはないの!?」
「何でです?」
「兎耳族の集落から連れ出してくれましたし」
「あそこから一瞬でも逃れた快感が忘れられなくって!
再び兎耳族の集落に戻されそうになった時も、一気に全力で逃亡しました!」
むしろ感謝されてる!!
でも、誘拐、人身売買はいけないことだけどねっ!!!
「ウチのアニキがすんません」
リョクタが兎耳族軍団に頭を下げていた。
「いいの、いいの」
「この間、碧陽県でインタビュー受けてたでしょ?」
「見た見た~」
「青嵐県を散々ディスった碧陽県で偽首領?ブッ倒してくれて清々したわ~」
「皆・・・っ!そこまで青嵐県を・・・っ!」
スバルが目を潤ませている。
「当たり前じゃん、領主様」
「あんたに拾われたから、今の私たちがあるんじゃない」
スバルは、領民の兎耳族さんたちに感謝され、励まされ、感極まりない様子だった。
スバルったら、領主として愛されてるなぁ~同じ転生者として鼻が高いよ~。
「そ・・・っ!そんな・・・っ!!」
これじゃ・・・あまりにも不憫だよなぁ・・・
「あ・・・あの・・・謝ったら多少はましになるかも・・・」
「なんでよぉっ!!・・・あれ、御子さま?」
「あの・・・クロです」
“御子”と言われるのは、大鬼の御子さまである、大鬼の“クロ”のことだ。
「うわああぁぁぁんっ!私は・・・私はどぉしたらぁっ!!」
「いや、だから、謝ったら・・・?」
「いやよっ!御子さまのバカっ!!」
「えええぇぇぇっっ!!?」
いや、その・・・
俺は御子さまのような立派なひととなりにはまだまだ及ばないけれど・・・
そ・・・その・・・“バカ”って・・・
う~ん・・・どうしようかなぁ・・・
こういう時は・・・エストレラ王国的には、対の精霊を頼るのがセオリーなんだけど・・・
ちら・・・っ
「そいえば、風の精霊の対の精霊は?」
「ぎくっ」
「・・・怪しい」
「うぐっ」
「来るのぅ」
「エレン・・・?来るって・・・何が?」
「嵐のぢゃ」
この・・・パターンは・・・もしやっ!!?




