【66】番外編 クロ殿下観察日記(紅消のお留守番編)
――――クロ殿下がどこかへ行ってしまわれた。
まさか家出だろうか。古今東西の物語で王女や姫が家出するエピソードはお約束だが、それは王子にも適応するのだろうか。
いやもしくはヴェイセルの奴が暗く狭いところにクロ殿下を閉じ込めて……いやいやいやまさかあの変態とはいえそこまでは……。
……う……あり得るかもしれない……っ!
く……っ
「紅消さん、クロ殿下の部屋で何作ってんの?」
「……はっ!リオ殿……?何とは……私としたことが、いつの間にかヴェイセルに飲ませる劇薬ポーションを製作していた!」
「劇薬な時点でポーションじゃなくない?」
「いえ、リオ殿。ちゃんと回復もしますのでポーションです。そのあと猛烈な毒麻痺激痛が襲ってきますが……(ボソッ)」
「そのあとのって回復以上のダメージじゃない?」
「さて、と。お掃除の続きをしませんと」
「紅消さん、しれっと流した!?」
リオ殿の毛並はクロ殿下もお気に入りのふわっもふだ。
「紅消さん、しれっと別の話題に入ってるよ?俺のふわっもふがクロ殿下のお気に入りなのは嬉しいけど」
ヨシュア様がクロ殿下に定期的に贈っておられる本の数々をきれいに整頓しホコリを取っていると、リオ殿はおもむろにクロ殿下のベッドにダイブしていた。
「……リオ殿?」
そのベッド、先ほど整えたばかりなのですが。
「わふたんぬいぐるみが並んでる!」
クロ殿下は昔からエルヴィス殿下にもらったわふたんぬいぐるみを大事にしておられた。クォーツに来る前にそれをお守りとしてヨル殿下に預けておられたが……その後エルヴィス殿下は代わりにクロ殿下用とだっこ用ではない手乗りサイズのわふたんぬいぐるみ(黒)をプレゼントしておられた。
それに加えてクリスタで購入されたという茶色いわふたんぬいぐるみも並べて置いていらっしゃる。
因みにおそろいのものをイヴ姫殿下にプレゼントしておられてイヴ姫殿下もたいそう喜んでおられた。
その後エメラルディーナ王女殿下から『私の分はないのか?』とかわいらしくおっしゃっていらしたので、それを見たアスラン殿下がエメラルディーナ王女殿下に茶色いわふたんぬいぐるみをプレゼントしておられた。
因みにアスラン殿下はクロ殿下へはシズメさまぬいぐるみをプレゼントしておられた。
手乗りサイズで仮の姿を模したぬいぐるみだ。そちらも枕元に飾っておられる。
「シズメさまのぬいぐるみもある――――!」
リオ殿が、2体並んだシズメさまの抱っこサイズのぬいぐるみを抱きかかえる。
はて、シズメさまのぬいぐるみは手乗りサイズの1体だけでは?
「あれ、本物のシズメさま?」
「……」(ドヤッ?)
「それいいね!そのドッキリ!きっとクロ殿下も喜ぶこと間違いなし!」
リオ殿がしっぽをもふもふ振っておられる。おかわいらしい。
「……」(うむっ!)
「クロ殿下、早く帰ってこないかな――――」
「……」(こくっ)
リオ殿とシズメさまは仲良くクロ殿下のベッドの上でうたた寝をし始めてしまわれた。
……まぁ、いいでしょう。
それはそれでかわいらしいので。
――――さて……そろそろ。ふと【上司】から通信が届く。
「無事に戻られたようで」
それもここよりも北方のタイタン領からとは。あちらはこちらよりも寒い……。こちらに戻って来られたら温かいスープを用意して差し上げましょうか。




