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【改稿作業中】クロ殿下と剣聖ヴェイセル  作者: 夕凪 瓊紗.com
西方荒野編

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【63】クロ殿下と荒野の鬼


――――しばらくしていつきのお兄さんも目を覚ましたらしい。


「……いつき?」

「お兄ちゃん」


「……無事だったのか」

いつきのお兄さんが体を起こす。そしてヴェイセルと再び目が合った。


「貴様っ」

「お兄ちゃん!」


「クロ、さがってて!」

お兄さんがヴェイセルにつかみかかろうとし、ヴェイセルが俺を後ろに押し込み応戦しようとするので。


ぽかっ。


べちっっ。


ヴェイセルの方には容赦がないが、お兄さんの方はいつきの手前なので優しめにしてやった。


「こらあぁぁぁっ!いい加減にしなさい!」


「く、クロ?」

「な、何っ」


「あのなぁ、目ぇ合った瞬間殴りかかるとかバトルもんの少年漫画かお前ら!お前らのケガ治すのに使ったナン・ジャワレ!貴重なんだぞ!?クォーツにうじゃうじゃ生えてるけど、この灼熱の荒野でおいそれと手に入るもんじゃないんだから!ナン・ジャワレ!治す側の気ぃ考えなさい!」

「お兄ちゃん、め」

わぁ、いつきさんがかわいいです。どうしましょう。一瞬でこのお怒り炸裂お説教ツッコミモードが清らかな心に浄化されていくようです。


『ご、ごめんなさい……』

俺の説教のせいか、いつきのかわいいのおかげか。ヴェイセルとお兄さんはそろって項垂れていた。


「お兄ちゃん。大鬼さんと、お友だち」

「へ?」

お兄さん、いつきの提案に目を丸くしている。


「仲良しの証、お友だちになるの」

「は?」


「ほら、握手」

いつきがお兄さんの腕をとり、ヴェイセルへ向ける。ヴェイセルはそれを見てきょとんとしている。


「こら、ヴェイセル!かわいいショタっ子がああ言ってるんだぞ。いいのか!?ショタっ子を悲しませることはお前のポリシーに反しないのか!?」

「……クロ」

ヴェイセルは目を見開き、そして愕然とする。


「お、俺……何ということをっ」

うん、これならいけると思ったが想像以上の効果だ。


「ほら、腕出して手ぇ握って。はい、握手」

お兄さんとヴェイセルはしぶしぶ手を交え、握手した。


「これで、お友だち」

「は~い、仲良し、仲良し!」


『……』

どうやら一触即発の危機は去ったらしい。ふたりは大人しくしている。


「そうだ、いつき。よかったら俺らと一緒にエストレラに来ないか?」

「えすとれらって……何?」


「俺の国だよ。ここより寒い国だけど街でモンスターに襲われることは少ないし、食べ物も薬草も豊富だよ。もしよかったらお兄さんも一緒に来ないか?」

「……いつきは、鬼だから、だめ。クロとは行けない」


「その……鬼って?」

俺はヴェイセルを見る。


「……魔族の中には鬼族のような角を持つ子どもがたまに産まれるんだよ」

魔族の中から……?


「そのような子どもは不吉だからと魔族の輪から外され、別の場所で隔離されて閉じ込められる。その場所がどこだか分らなかったけど……この荒野だったとはね」

「……そういえば、この荒野って、どこなの?」


「西方魔王国とロザリア帝国の間を隔てる西方荒野だよ。凶悪なモンスターが生息する過酷な環境でめったなことがなければ立ち入るものはいない」

「さっき、ひとがいたよ」


「……よほど腕に自信があるのか、罪を犯し逃れてきた流れ者かはたまたどちらかの国の密偵か……というところだね」

「ならヴェイセルは何しに来たの?」


「俺は……」

まさかこんな荒野にまで俺を追っかけに来たとか?


「その、周期的なもの」

周期って……?


「たまにああいう大鬼族の姿になるから……こういうひとけのないところで暴れてれば次第に治まる」

「その姿を見られたくなくてここへ?」


「うん」

「ちっとも戻ってこなかったのは?」


「中々治まんなくって」

そういえばさっきも牙模様出てたな。


「角は出たり治まったりしてた」

「今は?」


「もう、大丈夫そう」

「分かった。だけど今度からはそういう時は事前に相談しろ。他に方法があるかもしれないだろ」

「……ごめん」


「別に今度から相談してくれればいい。……話、戻すけど。いつきたちがエストレラに来るのはまずいのか?」

「西方魔族に知られればまずいけど……まぁあてはあるよ」

「それならいつき、いいか?」


「……クロ!」

いつきは顔を輝かせるが。

「ちょっと待て」

いつきのお兄さんが止める。


「でもお兄ちゃん。クロの国、行ってみたい。……友だちのとこ、行く。だめ?」

い……いつきがかわいすぎる。ヴェイセルなんて鼻血出してるよ。ショタ萌えとか言い出してるよ。すっかり本調子である。


「……お前がそう言うなら」

「うん、お兄ちゃん。ありがとう」


「く、クロ……お兄さんにもあれ!あれやって!」

「……」

いや、お兄さんじゃないし。何を言い出す。まぁいつも通りのヴェイセルが復活して何よりではあるが。


「ヴェイセル、さっそくゲート出して?」

「ここ、ゲート使えない」

え、使えないの!?


「ここは空間魔法が使えない。磁場的な要因だと思うけど」

「マジックバックの中の物なら出せたよ?」


「マジックバックは空間魔法で外につながるではなくてその中に独特の異空間を作っているものだから」

それで使えたのか。


「じゃ、じゃぁどうやって帰るの……!?」

「3日間寝ずに走れば西方魔王国に着くし一週間あればロザリア帝国に着く。でもロザリアは鬼族の容姿の彼らを見れば恐らくただじゃすまされない。それにどちらも国境警備隊がいるからそのふたりには難しい。他にこの荒野から出る術はないよ」

つまりどちらの国にも入れないってことは、ふたりはこの荒野に閉じ込められて一生過ごさなければならないってことじゃないか……っ。ただ鬼族の容姿を持って生まれただけでそんなことってっ!


――――しかしそんな時、不意に俺たちの目の前に人影が3つ、顕現した。え……こんな荒野に……?




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