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【55】クロ殿下と魔人王への挑戦状


――――【魔人王城への挑戦状】


「……何?これ」

「何って、ラズーリ恒例クエストイベント」

いや、ロー。何でゲームの勇者VS魔王最終イベントみたいなこと言ってんの!?ラズーリにいるのは魔人王だけど。


「……ヴェイセル」

困ったのでヴェイセルに解説を頼む。


「……ぶつぶつ……へ?どしたの?クロ?」

ヴェイセルは何か真剣な顔をして呟いており、ひどく驚いたような顔をしていた。


やっぱりラズーリに来てから変じゃないか?こいつ。


「あぁ、それね。一種のお祭りだよ。祭りのイベントの一環で魔人王への挑戦ができるんだ。このくらいの時期に辺境連合区域のギルドで受け付けてるんだ」

「なんでそれイベントにしたの?」


「んー、とりあえず楽しそうだからじゃない?」

どうやらクォーツ人のノリはじわじわとクォーツ州以外の辺境地域にも侵食しているらしい。


「はーはっはっはっは!今日あったが百人目!今日こそお前を屠っていやるぞ!魔王!」

そして現れたのはピンクの髪のツインテールに、真っ赤なイチゴのようなつぶらな瞳。頭に白い短く少し歪んだ角を生やした年下の少女だ。


その斜め後ろには執事と思われるグレーの髪の青年が控えている。青年の頭にも少女と同じ角が生えている。


「……ヴェイセル、あの子の種族って……」

「ん?魔族だろうね。あの白い短い歪んだ角はエストレラ国外に多い魔族だね」

ま……魔族。本当にいたんだ。そしてエストレラ国内外で角の形や色が異なるのかよ。


「……とはいってもエストレラで永住権もらって住んでいる外国人の魔族の中には住民票を魔人族で登録している人もいるからね。自らを魔人族と名乗る人もいるよ」

ほんっと自由だなエストレラ。どうやらエストレラに移住すると魔族か魔人族と登録種族名を選べるらしい。


「彼女もラズーリでおじいさんと暮らしているはずだけど」

「え!?エストレラ在住の魔族さん!?」


「わらわは東方魔王ミルフィーユ・ドルチェ・ストロベリーフロマージュであるぞ!」

今、この子すごいこと言わなかった?東方の……魔王?東方魔王なのにラズーリ在住なの!?というかその名前、本名……!?


「……」

少女の前で魔人王の玉座に座っているヴィーノお兄様は何故か少女の来襲及び口上に嘆息していた。


そしてその隣に控えている補佐のディオさん、玉座の周りに控える四天王のロー、アレクアニキ、イェディカお姉さんも何故か頭を抱えているんだが。


あれ、そういえば四天王……3人しかいない?欠員なのか?何故だろうと思っていると……ヴィーノさんが口を開いた。


「えーと……嬢ちゃん。魔王に会いたいのなら東方魔王国のお父さんのところに行きな」

東方魔王国!そんないかにも魔族の国!っていう名前の王国があるんだ!!……ん?お父さん?魔王少女のお父さん?


「姫さま。今御前におられるのは魔人王殿です。魔王と呼ぶのは失礼ですよ」

そこかそこなのか。執事さん。いやそこは重要か。魔人王じゃなくて魔王だったら隣のロザリア帝国と微妙な空気になってしまう。ただでさえラズーリ領はロザリア帝国との国境に面した領土だ。近年はロザリアとの関係は良好……俺の幼いころの出来事の一件で一時期緊張が走ったが今は穏やかなものだ。


「ぬぐぅっ!さすが魔王の参謀イグリぞな」

え……参謀!?確かにあの身のこなしは。


「私はただの執事ですが」

せっかく心の中でかっこつけたのに執事さんだった。参謀じゃなかった。


でもシェル司祭様のように司祭やってるけどジョブ軍師という可能性もないわけではない。


「参謀の方がかっこいいではないか~。むぅ~」

頬を膨らませる魔王(娘)。なかなかかわいい。そして仕切り直してもう一度。


「ま、魔人王!ここであったが百年目!わらわが相手をしてやろう!この東方魔王ミルフィーユ・スイーツ・ストロベリーフロマージュがな!」

さっきと名前微妙に違ってない?それ、本当に本名か?

しかしその時。


ポカっ


「こら、東方魔王はお前の父親でお前はまだ王女だろうが!」

そしてピンクストロベリーツインテールガールを後ろから容赦なくブッ叩く、黒髪に白い短い歪んだ角の少年がいた。


「あ、彼は魔人族だよ。ラズーリ育ち」

マジかいっ!まさかの魔人族のほうか。しかもラズーリっ子。


ついでにラズーリっ子は温泉好きののんびり体質のくせに悪ノリはクォーツっ子以上である。


「うぐぅ~痛いのだ、キラのばかっ!」

「バカはお前だ。ヴィーノアニキに迷惑かけんじゃねぇっ!父親に言いつけるぞ」

父親って……魔王?


「うわああぁぁぁぁぁっ!いやだ!ちちうえだけは嫌じゃぁー!せめて……せめておじい様にしてくれえぇぇぇっ!」

確かおじいさんと一緒にラズーリに住んでいるんだっけ?てか、この子、魔王の娘ってことはおじいさんは先代魔王ってことにならないか!?


「アニキ、すまん。ウチの姪っ子が」

「いや……くくくっ」

ヴィーノお兄様、めっちゃ爆笑してるんだけど。あれ今、姪っ子って……?


「キラくんは、東方魔王の異母弟だよ」

……へ?あの人も魔王の血族!?


「そして魔人王四天王の一人」

もうどこからツッコめばいいかわかんないよ!なして東方魔王の弟がラズーリで魔人王四天王してんの!?


「大変申し訳ありません。魔人王殿。姫さまはこの通り口上だけはご立派なのですが、大変レベルが低くていらっしゃるので」

「こら!イグリ!それを言う出ない!私は毎日雪合戦で体を鍛え、この間見事レベル5に上がったのだぞ!」

れ、レベル5?いや、鍛え方を変えた方がいいのでは?でも雪かき雪下ろしでランク上げができるくらいだしここでは正攻法なのか?


「クロ、興味があるなら今度一緒にやろっか」

ん?雪合戦を?


「まぁ、……いいよ」

クォーツでもリオやローたちとやったし。リオが雪ではしゃいでわふわふしていてかわいかった。途中からわふたんずも混ざってくれてわっふわふで最高だった。


「では、そこのまお……魔人王配下!わらわの相手をせよ!」

え、俺?てゆーか配下って何!?


「こら鴇子。あちらはクロ殿下だ!アニキの配下じゃない。……姪っ子がすみません」


「いえいえ。子ども同士なわけですし」

あれ?今、キラさんその子のこと……。


「ときこちゃん?」

「その名はやめるのだー!ダサいのだ!」


「えぇっと……あの、魔族って和風名前つけるの?そういう文化なの!?」

「ううん、違うと思うよ。お父さんの名前はギルベルトだし」

魔王、名前かっけぇ!


「あれはね、先代魔王の後妻さん……キラくんのお母さんに因んだ名前なんだ」

「へ?キラさんのお母さんって……」


「召喚者だったんだよ」

……!?それって勇者召喚とかで召喚されるっていうあれ!?まさかの魔王と結婚したの!?


「ちな、勇者とか?」(ボソッ)

「いや、聖女」

……勇者以上にくっついたらダメじゃん!異世界ゲームとかでぜえぇったいくっついちゃいけないパターンじゃね!?いや恋愛は自由恋は盲目テンプレをぶち破った真の愛かもだけど!


「あぁ、そのお話ですか」

執事さんまでノってきたー。


「その名はキラさまのお母さまがお話された恋愛小説のヒロイン……」

ヒロインに因んだ名前ってことか。


「……と同じ王子に懸想ながらも親友のために身を引いたというご友人の名です」

ヒロインじゃなかったー!!しかもめっちゃ脇役!ストーリーの中でヒロインを支え、時にはライバルとして立ちはだかる重要な役回りだけど!!!たまに俺も脇役の女の子の方がヒロインよりめっちゃいい子でかわいくね?って思ったこともあったけど!!魔王、そのヒロインの親友そんなに気に入ったの!?


「名前の響き的にかわいいからとおっしゃいまして」

マジかいっ!いや親御さんの気持ちがこもってればいいと思うけど!気に入ってたならいいと思うけど!

「と、鴇子ちゃん……かわいいと思うよ?この世界ではなじみが薄いけど、逆に新鮮でかわいいよ?」

「……ほんとうか?」

「うん!!!」

子どもが名前で悩むのは世界が変わっても同じなようだ。俺はクロムウェルって名前もクロっていう愛称も気に入ってるんだけど。


――――そんなわけで機嫌を取り戻した鴇子ちゃんと一緒に魔人王城中庭に移動した。


「ではその気持ち、わらわに雪合戦でしめすがよい!」

……って、なんで結局雪合戦やる流れになってんの!?




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