【46】クロ殿下とエステラ大祭壇
――――エステラ大祭壇はクォーツ祭壇の3倍ほどの大きさで、庭も広けりゃ建物もでかかった。中は中世に建てられた大聖堂のよう。きらびやかな光の空間、吹き抜けになっている天井や色鮮やかな大きなステンドグラス。
大聖堂風のホールには俺やヨルの他にもたくさんの子どもたちやその両親、親戚と思われし人々が集まっている。俺はヨル、父さん、ヴェイセル、紅消、コンラートさん、近衛騎士隊の皆さんと祭壇側に用意してもらった一席で待機中だ。
さすがに王族なのでそこは配慮してもらっている。警備の面もあるし……まぁヴェイセルと紅消がいれば大丈夫だと思うけど。
ホールには三か所にステータス開示台が2つずつおかれており、そこにそれぞれ司祭印の六角形の星のエンブレムをつけた人がいる。光の精霊士長と闇の精霊士長なのだそうだ。
因みに大祭壇には大司祭1名、司祭2名、闇の精霊士長と光の精霊士長が各3名ずついるらしい。さすが王都の大祭壇。規模が違う。
そして続々とステータス開示がなされていく。ほんとにもろ公開されんだな。喜ぶものや落胆するものもいるが大丈夫!王道スキルでもざまぁされたり、へっぽこスキルでも実は後々スゴイスキルであることがわかったりするから!
俺はヨルにどんなスキル、ジョブがあたったとしてもフォローできる自信がある!だから安心してね!ヨル!ヨルの方を真剣に見つめていると、ヨルがにこりと微笑み返してくれた。うん。ヨルったらかわいい。俺よりも、むしろヨルの方がかわいくないか?……ってことはヴェイセルの毒牙に!?
「ん?俺はクロ一筋だよ?」
……え?俺の心読んだの?新手の隠しスキルなのか!?それとも俺の顔に出てただけ?いやこんなこと顔に出てたら……。
「顔には出てないよ」
うおぉぉぉいいっ!やっぱ心の中読めてるの!?俺の心の中がオープン開示されているだけなの!?それともクォーツ公爵一族の特殊能力か!?
「クロ、ヴェイセルさんととっても仲良しだね。主と騎士の阿吽の呼吸?」
……まぁ、仲良くはやってるけど。これは主従の絆なのか?俺はヴェイセルの考えてること読めないけど!?ショタコン思考に走ってる時は何となくわかるけど!
「ヨル殿下公認なんて嬉しいな~、ね?クロ」
あ、う、うん。でも何でヴェイセル、フォーク握ってるの?隣でコンラートさんがめっちゃにこにこしていて、紅消が微妙な顔をしているのが何となくぞわっときた。とりあえず顔をそむけて他の子たちのステータス開示を見学、見学。
【ジョブ:勇者】
え?勇者!?いきなりすごいジョブだと思いきや。
「ええ~~」
本人は不服そう……?
【ジョブ:魔人王】
「やったー!」
一方でこちらは嬉しそう!いや、ちょっと待て!勇者と魔人王が出たのにも驚きだけど、何で勇者でがっかり、魔人王で喜ぶの!?普通逆じゃね!?そりゃ、まぞ……違った魔人族からしたら嬉しいだろうけど!
「なんだよ、俺とおんなじスキルだぞ~?嬉しいだろ」
勇者勇者が出た持ち場で亜麻色の髪の光の精霊士が少年に声をかけていた。……あの人も勇者?てことはシェル司祭様が言っていた光の勇者の精霊士長だろうか?
「だけどー、俺も父ちゃんとおんなじ魔人王がよかったー」
お父さん魔人王かい。ジョブの方?それとも本職?
「ばか、ここで父ちゃんは言うな」
と、光の勇者の隣にいた魔人族の闇の精霊士長が少年の頭をぽかっと叩く。……え、お父さん?魔人王なの?銀色の髪に黒い魔人族の角、瞳はアメジストのような輝きを帯びている。浅黒い肌をしており、セクシーでワイルドな美形だ。ローが言ってたジョブ魔人王の闇の精霊士長ルシアンさん?むしろルシアンさんの特徴は隣にいるジョブ魔人王の魔人族の少年に似ているような気がするのだが。
「だって俺ら双子なのに」
勇者の少年が口を尖らせる。どうやら彼らは双子らしい。俺とヨルとは違って2卵生の双子ってことか。
「いいじゃん、親父たちみたいなコンビ組もうぜ。ツユキ」
「あ、それいいかもキリカ!勇者&魔人王コンビ、かっけーもん!」
ツユキとキリカと呼び合う双子たちは仲良くじゃれながらステータス開示を終了して戻っていく。――――かっけーってより最強じゃね?
勇者と魔人王がコンビ組んじゃったら冒険終わるよね?進まないよね?一体何と戦うの?
そんなこんなで他の子たちのステータス開示を見守りつつも、俺とヨルの番が来た。そしてトリだった。ちゅ、注目されてしまう!で、でも俺はあらかじめステータス開示してもらってるし、シェル司祭様が調整してくれたから大丈夫、大丈夫。そんなことよりヨルのステータスに何かあったときにすかさずフォローしなくては。気合い入れろー、俺。
「それではクロムウェル殿下、ヨルリン殿下のステータス開示を始めます。おふたりとも、お手をそれぞれの台へ」
手をのせようとする直前、目の前の司祭様が俺にこそっと告げてきた。
「ご心配なさらずに。シェルからお話は伺っておりますので」
「!は、はい」
どうやらこの人がエステラ大祭壇の大司祭様だったらしい。薄い金茶色の髪にオリーヴ色の優しい瞳。柔らかな雰囲気はシェル司祭様にも似ているが腹黒気はない。
そして大司祭様や精霊士長たちが見守る中、俺はヨルと互いに視線を合わせて頷き合いステータス台に手を伸ばした。
――――
クロムウェル・リィン・エストレラ(12)
エストレラ王国第4王子
クォーツ祭壇闇の精霊士見習い
HP 2100
MP 7500
レベル:512
スキル:もふり上手 レベル3
ジョブ:もふり師 レベル3
魔法:闇(S)
剣(B):レベル1
槍(B):レベル1
結界魔法(S):レベル2
称号:シズメさま大好き。
――――
ヨルリン・リィン・エストレラ(12)
エストレラ王国第5王子
HP 80
MP 480
レベル:12
スキル:聖なる御手
ジョブ:光の聖者
魔法:光(S)、木(A)、風(A)、雷(A)、炎(B)
剣(B):レベル1
槍(B):レベル1
弓(C):レベル1
ヒーリング魔法(S):レベル2
称号:クロムウェル大好き。
――――
俺の方は調整してもらったからばっちりだ。でも周りが騒がしい気がするのだが、今はそれよりもヨルのステータスはっと……何かすごそう!魔法属性もすっごいあるし!
あれ、称号……俺大好きって書いてない?
「クロ、ぼくの事大好きじゃない?」
何故かヨルが俺の服の裾をちょんちょんしながら不安げなまなざしを向けて来る?
「え?何言って……」
……あ。俺の称号、シズメさまの以外隠したんだった。
「ええと、わけあって隠してるんだ。ヨルを驚かせようと思って」
ブラコンは入ってたし。ヨルも納得してくれるよね?
「うん」
ヨルは顔を赤らめて……うん、かわいい。ちゃんとヴェイセルの毒牙から守らなければ。俺がヨルの頭をなでなでしていると周囲からどよめきが聞こえて来る。
ヨルのステータス、そんなにすごかったのか?ヨルも隅に置けない……。
「512……?」
「クロムウェル殿下のレベル、おかしくないか?」
「HPMPも……」
「忌み付きのくせに」
あの、最後の関係なくない?まったくのでたらめな噂だしまだいう奴がいるとは。でも何かドサッと言う音が聞こえたような……?
――――――しかし、し……しまったああぁぁぁっぁっっ!!!レベルとその他パラメーターそのままにしてた!普通おかしいよね!?12歳の子どもがレベル512っておかしいよね!?忘れていた……というか気が付かなかった。クォーツのノリでそのまま来てしまったあぁぁぁっっ!




