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【改稿作業中】クロ殿下と剣聖ヴェイセル  作者: 夕凪 瓊紗.com
クリスタ編

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【34】クロ殿下とクリスタ祭壇


クリスタ祭壇には指揮をとってる茶狼族の男性がいた。アスラン兄さんやマティアスとおさんと同じ茶色の毛並みをしているなぁ……。2人のような武闘派には見えない柔和な雰囲気だがきびきびと周囲に指示を出している。服装はシェル司祭様とは違い、黒い精霊士の制服に司祭の印である6角形のエンブレムをつけている。あれがクリスタの司祭様か。


「父さん!」

レベッカさんが男性をそう呼び駆け寄ってくる。

え、父さん?レベッカさんのお父さん、領主では!?


「クリスタの司祭様は領主もやってんだぜ」

まじで……!?兼務!?政教分離とか大丈夫!?いや政祭分離?


「それは……本当に?」

「えぇ……」

2人は真剣に話している。やっぱり深刻なのか。深刻だよね?魔物の大量発生が起こるかもしれないんだもん。


「クロ殿下!」

……?司祭様が俺の手を握ってくる。


「お会いできて恭悦至極です!ほんとにクロ殿下なんですね!生のクロ殿下!」

「えぇ。我が領にお越しいただけるとは、私も感激いたしましたから!」

……え、俺の話だったの?レベッカさんまで……!?


「いや、その魔物の大量発生は……」

「し……っ。クロ殿下。こちらには領民たちがおりますので」

あ、そうか。そうだよね。クリスタ祭壇には多くの兎耳族の女性や子どもを中心とした領民が集まっている。兎耳族の多いクリスタ祭壇は光の精霊士には兎耳族が多めだ。さらに闇の精霊士や騎士隊の人々も集まって警護をしているようだ。

茶狼族多めな気がしたのだが……ここの闇の精霊士って人族、茶狼族に交じって黒狼アニキが結構多いような気がする。少なくとも領主城にいた騎士たちから比べればかなり多い。


そう考えつつも俺たちは別室に移動しヴェイセルとミミさんも駆けつけた。ドロシーさんは外で代わりに指揮をとっている。早速例の話に移らねば。


「本当にそんなことが?」

ミミさんも驚きを隠せないらしい。


「クロ殿下はシズメさまの加護を受けているから、森の精たちからの警告の可能性がある」


「ヴェイセル。スタンピードってこの世界ではどんな感じなの?」

「ゲームの中とは違う。これは実際に大勢の人々が負傷し命を失うことだってあり得る。実際の現場は何と言ったらいいか本物の戦場と化す。一種の災害だね」

いつものおどけたヴェイセルの顔ではない真剣な表情。こいつ本当に剣聖なんだなと思える表情だ。


「もしもの時は俺も出ます。騎士や闇の精霊士、冒険者の中からも腕の立つものを捻出してください。半端なものは足を引っ張りますから」


「わかりました」

司祭様が頷く。


「あと治療薬の準備、ヒーリング班の手配……」


「治療薬は大丈夫ですがヒーリングはほぼ兎耳族なので外に出すのは……」

「私と兎耳族以外がでましょう」

司祭さまの言葉にミミさんが手を挙げる。


「ミミ、でも君は……」

「私は領主夫人ですよ?こういう時こそ矢面に立たなければ。それに私のヒーリング魔法はエストレラでも屈指の実力です。こういう時には役に立ちます」


「……わかった。ありがとう」

「ポーション類については、この前同僚に大量にぶっこまれたので、こちらからも用意しましょう」

とヴェイセルがマジックボックスの中から取り出し始める。……あ、俺も紅消からもらってる。俺もマジックバッグから出しておこうとすると、それは俺自身が持っているようにとヴェイセルにたしなめられてしまった。何だかヴェイセルがひどく頼もしく思える。それだけ大変な事態なのかもしれない。


「あとローとドロシーさんは外せない。ここは魔法要員が少ない」

そうヴェイセルが告げる。

「わかった。警備は残ったものが努めよう。それでも腕には自信があるからね」

……と、司祭さま。そうだ。今いいことを思いついたかも……!


「ねぇ、ヴェイセル。あのね」

俺はそっとヴェイセルの耳に囁く。


「……を警備に残して欲しいんだけど」

「……そんなに数が多くないなら残してもいいけど」

「あのね、実は……だから試してみてもいいんじゃない?」

「うーん……魔法も武闘もできるから残ってくれれば頼もしいし……それは一理ある。前世のゲームの知識を活かすのは異世界転生物の王道だし。確かMMORPGに出てきた国名はロザリトレラ王国だったけど」


「何そのどっかの帝国と王国合わせたような名前。……ってか言いにくすぎない?その国名。()()()はロザリア王国だったけど」

「時代やゲームのバージョンによる違いかな?」

そうかもしれないな。


「司祭様――――」

そしてヴェイセルが司祭さまに提案し、無事に受け入れられたらしい。司祭様がさっそく手配に動く。


「ほらクロも行くよ。リオ、ちび双子お願い」

「らじゃっ!ついでに俺もここでお手伝いするね!」

……俺も?


「俺、何かできる?」

「戦意向上」

いや、そんな立派な演説とか無理だけど……?


「あら、祭壇に残って領民を励ますって役目もあるけど」

そんな重責俺にできるのか?俺、まだ9歳だし。料理をふるまうくらいならできるだろうけど。


「いざとなったらシズメさまの加護の力を借りたいし、俺が絶対クロを守るから。大丈夫」

まぁレベル9999がそう言うなら。……というかレベル9999なら一人で無双できないか?そう思っていたら、その表情を読んだのかヴェイセルが残念そうに苦笑する。


「俺一人じゃ無理だよ。広範囲から大量に来るから、全ては防げない」

……その笑みは、どこかクォーツ公爵に似ていた。



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