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【改稿作業中】クロ殿下と剣聖ヴェイセル  作者: 夕凪 瓊紗.com
クリスタ編

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【33】クロ殿下とお伽噺


――――森の中で誰かが泣いている。あれは兎耳の女の子だろうか?


そしてそれと同時に誰かが囁いている。


【シズメさまの気配がする】


【シズメさまの加護を受けた王子か】


【ならばどうかシズメさまの加護を】


【このままではまた悲劇が起こってしまう……】


――――


夢を見た。

あの女の子は一体……?


それに誰かがシズメさまの加護を求めていた……?翌日相変わらずヴェイセル、ドロシーさんたちは対策にかかりっきりらしく、俺が朝飯を作ってふるまった。


「くろでんかー、おーじって料理できるの?」

「これなーに?」

レオくんとアオくんがかわいいなぁ。

「味噌汁とポテトサラダだよ」

ポテトサラダに顔を輝かせている。

因みに味噌はヴェイセルに作ってもらったマジッグバッグに常備済みだ


「へぇ、斬新~さすがクロ殿下」

「でも、コレじゃがいもだろ?何でパンと食べるんだ?どっちも主食じゃん」

リオとローが続く。……異世界でもおなじみツッコミは有りらしい。


「こうやってサンドイッチにするとすっごくおいしいから!」


「あ、本当!うまい!」

とローが顔を輝かせる。

そうでしょう、そうでしょう。

何故焼きそばをパンにはさめるかって?それは……おいしいからだ。何故ご飯とギョーザを一緒に食べるかって?それがおいしいからだ。


栄養バランス的な問題はって……?いいじゃん!日本食って世界的に見てヘルシーって言われてるし!たまにはW主食攻めしたっていいじゃないっ!!これはストライキなのだ。日々ヘルシーなものばっかり食していると、たまに反抗したくなる。名付けてヘルシーストライキ!


……あ、でもパンとイモならスープは味噌汁ではなく、コンソメスープかポタージュにするんだったか?


「そうだ、ロー。今日気になる夢を見たんだ」

「夢?」

「うん。森の中で兎耳族の女の子が泣いていて、誰かがシズメさまの話をしてたんだ。単なる夢かもだけど……」


「森なら、ルタ獣王国との境にある天山山脈の麓にでっかいのがあるけどな」

「あそこら辺っ、森の精がいるっていうよ。それじゃない?」

リオがポテサラサンドをもひもひしながら、壁にかかった地図を指してくれる。


「なんたってクロ殿下はシズメさまの加護を持ってるからな」

やはりこのクォーツ州含む西部辺境連合ではシズメさまは特別な存在らしい。


「でも、俺は加護を授かったってだけで……」

『いや、それがすごいんだって』

リオとローにハモられてしまった。


「前にヴェイセルが言ってたけど……加護持ちはたまに精霊や精と会話するような夢を見るんだって。そういう時はふらぐだから気を付けてって」

「リオにー、ふらぐってなに?」


「んー、お告げ的な意味じゃないかなぁ」

まぁ近いものではある気がする。それにしてもフラグとは……。リオがちび双子にお耳ふらっぐ!とか言われて遊ばれている。えっと……フラグキャッチレース?今のリオのアバウト説明で本来のフラグ遊びを始めとる!ちびっ子の可能性ってすげぇ。


「他には何か言ってなかったか?」

ローが話を戻す。

「森が……とかまた悲劇が……とか」

「……また?」


「仮に森の精が関係してるなら、クリスタの森に過去何かあったってことかな」

「それがもう一度……か。調べてみる価値はあるな」


「さいだんにごほんいっぱいあるよ」

リオのお耳をふわもふしながら、ちび双子の片方(確かアオくんの方だよな……)がかわいく教えてくれた。


「そうだな。祭壇ならウチから中を通って移動できるから危険もねぇしな」

やっぱり祭壇までつながってんのか。……てことは領主邸通るんじゃ……?



「リオにロー、アオとレオも来たのか?」

領主邸に入るとそこには金茶色の毛並みの狼耳しっぽの少女がいた。


「あ、レベッカ姉久しぶり」

「何かあったのか?今は領主邸も祭壇も緊急事態でバタついててな……そちらは?」

レベッカさんがその万華鏡みたいな金色の不思議な瞳を俺に向ける。


「クロ殿下だよ」

「く……クロ殿下!?あ、アスランさまのっ」

レベッカさんが急に取り乱す。アスラン……さま?皆殿下付けなのに珍しいな。……あ、従兄妹だもんな。それもそうか。親しいのかもしれない。


「クロ殿下、こちら領主令嬢で俺のハトコのレベッカ姉だよ」

領主令嬢ってことはミミさんの娘さん?それで茶狼族には珍しい毛並みなのか。


「お、お初にお目にかかかかかかっ」

「あ、あの、かしこまらないで大丈夫です……」

俺の方が恐縮するわ!!!


「そーだよ。いつも通りのアネゴ調でいんじゃね?」

「ば、バカ!ローのバカ!私の気も知らないで……ふんっ」


「え?」

……ツンデレ?

「で、どうした」(キリッ!)

あ、元通り……なのかな?何となくエメラ姉さんに雰囲気とかテンションとかが似ている。


「祭壇に行きたいんだ。クリスタの森に昔あったことを調べたくって」

「今はあちらは手いっぱいだからな。ウチの父さんもあっちにかかりっきりだ」

レベッカさんの父さんって領主さまのことだよな。


「クリスタの森……私も歴史や地理を学んだことはあるが。何かあったと言われてもあの山脈を越えて、昔生命の精霊と黒狼族がルタから渡ってきたという話とか……」

……ってことは黒狼族たちのルーツはルタにあったってことか。でも黒狼族がほぼエストレラにしかいないってことはほとんどがこのエストレラに移住したってことだよね。あんな険しい山脈を越えてまで来るなんて一体ルタで何があったのだろうか?


「そういえば昔、兎耳族もその山脈を越えてきたって言われているな」

それは意外だ。兎耳族はヒーリング魔法に秀でているが、基本的に攻撃魔法が苦手で武芸も苦手だ。……それなのに越えてきた?


「クリスタにはほとんどいないが、ユキメ領に多くいる豹族たちと一緒にわたってきたそうだ」


「うむ、クリスタ側よりは山脈が険しくないユキメ領側だったと言われているしな」

彼らなら身体能力が優れているため一緒に来られたのかもしれない。


「一緒にわたってきたのに、どおして別れちゃったの?」

そのままユキメ領に住むという選択肢もあったはずだ。けれどクリスタ領に来た理由は?個人間の合う合わないはあるだろうが、種族間で別に仲が悪そうな雰囲気は無いのだが。


「環境が過酷だったって話もあるぜ」

「兎耳族は寒さになれているわけではないんだ。ユキメ領はエストレラでも最北端で、最も寒い」

「豹族は寒さに強い身体のつくりだが、兎耳族はそうではなかったから南下したのかもしれないぞ」

そうなのか。なんかしっくりこないけど……。


「他には?」

「そうだな……あの森はモンスターは出るし素材採集でもレアな素材が手に入るが……もっぱら平和なそのものだ」


「過去に何か悲劇とか!」

「うーん、創作物ではあるが……あの森で男に振られた姫がむせび泣く声が魔物を驚かせ大量発生したため、騎士や冒険者、闇の精霊士たちが協力してばったばったと倒したというものがある」


「それ、ねーちゃんがよくよんでる」

「らぶろまんす!」

マジか。レベッカさんもエメラ姉さんと同じ隠れ乙女なのか!?


「こーらっ!どこでそんな話を……!!」

「で、どーなんの?その話。続きは?」

ローの言葉にレベッカさんが再び語ってくれる。ちょっと照れているようだったけどな。

「魔物に囲まれて泣いていた時に、助けてくれた青年に惚れて幸せに暮らしたのだ!」


「ちゅーしたの?」

「いけないことしたの?」

ち、ちび双子ぉっっ!?


「こらっ!誰にそんな話を!!!」

犯人はあのバカ剣聖じゃねぇだろうな。


「その話のいいところはな?姫が兎耳族で青年が茶狼族なんだ!実話をもとにしてるっていうし父さんと母さんみたいじゃないか!?」

きらきらしている目で語るレベッカさん。そういえばお父さんが茶狼族(リオたちの大叔父にあたる)だしそうだよな?お母さんが兎耳族のミミさんだもんな。

……あれ?


「あの、レベッカさん。今実話って言わなかった?」

「あぁ!実際に結ばれた夫婦のなれそめの話だ!実際にあった古いおとぎ話を元にしたのだ」

実際に茶狼族と兎耳族が結ばれたおとぎ話?でもそれは珍しくないんじゃないかな。昨日街中でもその組み合わせのカップル、夫婦をかなり見た。レベッカさんもそうだし……多分トールさんもだよね?レベッカさんやトールさんみたいに髪の色やしっぽの色が種族逆になったり、混じったりするのは珍しいんだが。


「その実際にあった話ってモンスターが大量発生したって話の方では……?」

「スタンピードのことか?」

ローが呟く。この世界にもそういう言葉は変わらずあるらしい。


「ないない、だってシズメさまがいるから」

「シズメさまの鎮守の力でモンスターの暴動も鎮めてくれるんだって」

と、ローとリオ。


「じゃぁ極夜祭の時の傲魔さんたちの襲来は?」

「あれは、双方の合意の元だから」

とローが笑う。そういえばそうだな。


――――シズメさま、戦いたいんで!

――――大量発生して戦っていいっすよね!

――――年に一度のケンカ祭りっす!

――――「……」(ふぅ……もう年末だしめんどくさいから、勝手にやっといて)

やばい。シズメさまとのやりとりが聞こえたような気が。これも加護を授かった効果なのか。


「でも今は外界と隔絶されていて、シズメさまとも連絡取れないよ?鎮守の力も及んでいないとか弱まってることってはないかな?」

「そ、そうであった!!!」

「やべぇ、その可能性もあるな」

レベッカさんとローがハッとする。


「クロ殿下、代わりに使えない?」

いやいや、リオ。無理だって!何もコマンド出てこないし!


「とにかくヴェイセルにそう伝えないと」

「父と母にも急ぎ伝えよう!」

こうして俺たちは祭壇に向かった。




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