【30】クロ殿下とリオからのお誘い
――――この記憶は……?まだ生まれる前の記憶。懐かしい……記憶だ。
「今日はどのクエストを受けようか」
ヴェイセが見ていた掲示板にはダークウルフの森の討伐とある。
ダークウルフの森って、確かロザリア近くの魔獣の棲む森だったか。うん、ロザリア……?
確かエストレラの南の国境の向こうにそんな帝国があった気がする。祭壇の授業で習った気がするんだが。
それよりも黒いふわもふ狼の討伐か……。俺はそんなことよりふわもふしてじゃれ合いたいんだが。
あれ、ヴェイセル?ヴェイセルはロリショタコン変態オーラなど感じさせない涼やかな笑みを浮かべている。
……ヴェイセル?
何か物足りない。たまにロリショタ欠乏症になって暴れるしよだれ垂らしてるし、腕だけは一流の剣聖なのにもったいないけど。……ただ爽やかなだけのヴェイセルはどこか感情の入っていない抜け殻に思えた。……あ、そうか。
「俺、この世界で本当のヴェイセルに出会ったからか」
「ん?俺が何?」
目を開けると、そこには無機質ではないロリショタ萌えだだもれの剣聖ヴェイセルの顔があった。
「……貴様、クロ殿下の寝所に忍び込むとは不届きものめが!」
さらにはもうひとりのいつもの声がする。
「べ、紅消さんだって入ってるじゃん!!!」
……騒がしいけど、これがいつもの日常だ。
俺の腕の中でもぞもぞしていたシズメさまが顔を出し、おはよとぽむぽむしてくれる。
「おはよ、シズメさま。紅消……ついでにヴェイセル」
「俺ついで?」
「ふっ!まだまだクロ殿下の信頼を勝ち取るには恐れ多い!おはようございます、クロ殿下」
「おはよー、クロ!」
ま、こんな騒がしい日常も悪くないな。
――――クォーツに来て早1年、俺は9歳になっていた。そんなある日のこと。
「クロ殿下、今年の夏休みはウチの実家に遊びに来ない?」
リオが唐突に切り出す。
「弟ツインズかっわい~よっ!!!」
何……っ!?弟ツインズってことは双子の狼耳っ子か!?
是非……是非会いたい!
「行く!!!」
「即決だな。まぁ、いいけど」
ローが苦笑する。
「ローも来いよ。母ちゃん寂しがるから」
「わぁったよ」
口は悪いがローとリオは相変わらず仲良しだなぁ。
「ローもリオの実家、知ってるんだね」
「ローはウチで育ったんだよ」
「え……っ!?」
「俺孤児だったから。リオんとこのイオ兄に拾われて、リオの実家で育ったんだ」
「何か……ごめん」
「謝んなよ。別に悪いこと聞いてるわけじゃねぇし。クロ殿下にならなんぼでも話すし」
ローに頭をわしゃわしゃされる。
何か嬉しい。
「そうだ。リオ、兄ちゃんもいるんだね」
「うん、兄ちゃん2人いんよ。1番上のキオ兄ちゃんは王都でお仕事だから来られないけど、イオ兄ちゃんは久々に実家に顔出すって!」
「へー、何やってるひとなの?」
「アスラン殿下の騎士」
「……へ?」
初耳だ。アスラン兄さんの騎士をしていたなんて。世界は広いようで狭いな。
こうしてリオたちの実家に行くことを紅消ヴェイセルにも話したのだが。
「クロ殿下、ヴェイセルと2人旅なんて危険です」
うん、それは無いから安心しろ紅消。
「リオとローの実家に遊びに行くだけだよ」
「ヴェイセルはウチの双子がなついてるから強制参加だぞ」
そこにローとリオも参戦。しかし大丈夫なのか。この変態ヴェイセルになついているとか。
「ふっふっふ、俺はクロとちびツインズの3人とバカンスを謳歌してくるから紅消はしっかりとポーション素材収集に励みたまえよ!」
「くぅ……っ」
因みに紅消は珍種のポーションを作るために危険度Aランクの森に行くらしい。
「でも大丈夫?Aランクなんて」
「はい。余裕です」
ちなみに、ランクは低いところから高いところまでE~SS。紅消どんだけ優秀なの!?暗部か……異常なのは暗部なのか!?
「よっしゃ~、行くぞ~紅消~!」
紅消がギョクハンアニキに引きずられていく……。
「で……殿下ぁぁぁぁっ!」
そ、そんな悲しまないで。切なくなるから。




