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【26】クロ殿下と9歳の誕生日


――――暗夜が明けて極夜がやってきた。


『クロ殿下~!誕生日おめでとう!』

俺の誕生日は暗夜最終日。王都で言えば極夜最終日なので実質的には大晦日だ。


けれど俺は大事を取って療養していたため、暗夜の翌日に食堂で精霊士の皆に囲まれていた。

あれ、皆実家でゆっくり過ごすんじゃなかったの?


「クロ殿下のお誕生日ですもの~」

「年に一度の一大イベント!」

いや、たかだか俺の誕生日だよ……?


「これ、光の精霊士からです!」

ラビアンお姉さんが差し出してきたのはブラシだった。


「これでいっぱいふわもふしてくださいねっ!」

ふわもふ用のブラシ!すごい嬉しい!俺的には!!!


「そういえばクロ殿下はお姉さんたちはふわもふしてくれないの?」

ミンお姉さん、何を言い出す。さすがに女性のしっぽは……俺はそっとリオの傍による。


「クロ殿下は俺のしっぽがお気に入り?」

「……っ」

た、確かにリオのしっぽのふわもふは極上だ!


「俺たち闇の精霊士からは、これ」

ローが差し出してきたのは青い精霊石がついたペンダントだった。


「きれい……!ありがとう!」


「俺からは……」

ヴェイセル、何か変なものじゃないだろうな?何故かもじもじしている。


「俺のすべてをあ・げ・る」

……。


……。


…………。


「ケーキできた?」

とりあえず誕生日だからと要求していたケーキが先決だ。スポンジケーキ的なものはこの世界にあったので、地球のショートケーキ的な見た目にしてもらえるようヴェイセルに頼みお姉さんたちがデコレーションしてくれた。


「かわいいケーキよね」

「あーんしてあげようか?」

い、いやそれはさすがに照れるから……っ!


「それはお兄さんがやるー!」

「えー、俺もー!!」

「私だって、お世話係として・・・っ!」

「俺だってお兄ちゃんなんだから!」

ヴェイセルとリオだけじゃなくて紅消とエル兄さんまで参戦してるんだが!?

でもケーキは久しぶりだ!


「はい、あーん」

そんな喧騒のさなかにウズメさんが俺にあーんしてきた。


「うん、おいしい」

ちょっと気恥ずかしい。


「クロ殿下、おめでとう」

「ありがと。ウズメさん」


「……」(!)

そして俺の隣にちょこんと座っているシズメさまも興味津々なようすだ。

「シズメさまも食べる?ほら、あーん」

ケーキを食べたシズメさまは顔を赤らめて、とっても嬉しそうだ。


「おめでとう……クロ」

突然おっきな姿で俺を包み込んだシズメさま。こんな賑やかで楽しい誕生日なんて初めてかも。もちろんとおさんや兄さんたちに祝ってもらった誕生日も楽しかったけど。


「ヨルにも何かプレゼントを考えてたんだけどお菓子もいいかなって。だけどせっかくだし何か記念に残るものをあげたくて」

今までは後宮からほとんど出ることがなかったので中庭で摘んだ花とか、折り紙で作った作品とかをあげた。いきなり鶴を折ったらとおさんや兄さんたちに驚愕されたけど。因みに俺は鶴以外折れない。


「じゃぁ、クロ殿下とおそろいのペンダントとかどうだ?」

「皆からもらった……?」

プレゼントのブラシでリオのふわもふしっぽをふわもふしながら呟いていると、ローが首から下げている精霊石のペンダントを手に取る。


「お店とかで買える?」

「まぁ、魔法石のショップとかならな。でもせっかくだから手作りとかどうだ?因みにそれはアニキたちが採掘して加工したやつだぜ」

て、手作りだったとは!アニキたち、すごい。


「どこで採れるの?」

ゲームの世界とかだと採掘って簡単そうだけど現実は大変そうだなぁ。ダンジョンとかのドロップアイテムとかだったらいいのに。


「ダンジョン」

ほんっとにダンジョンかいっ!!!あ、でもダンジョンだったら危険なモンスターとか色々いるのでは?


「俺、子どもだから難しいかな?」

「だいじょーぶ!俺もついてくし、ヴェイセルも一緒に行けば楽勝だよ」

確かにSS級だからな。ロリショタコンだけど。

ヴェイセルと2人きりなら別の意味で不安があるけれどローが一緒なら……!


「いいなー、ダンジョン!俺も行きたい」

「今回行くのは魔法系のダンジョンだから。リオはお留守番」

茶狼族は基本的に武闘派で、魔法が不得手なものが多い。アスラン兄さんは魔法も剣もできるけどね。


「むーっ」

「がまんしろって。ふわもふブラシでのふわもふ第一番手なんだから」

因みにリオのしっぽをブラッシングしていたら獣人族のアニキたちが羨望の眼差しを向けていた気がする。何故かフィンさんもじーっと見ていた気がするけれど。フィンさんも天人族なので白いふわもふしっぽを持っている。


「そだね!アニキたちに自慢してくる!」

俺たちがダンジョンへ行く準備をしていると、リオは狼アニキに「いぇーい、ふわもふ第一号!」と駆けよっていき狼耳を盛大にふわもふされていた。


「……ロー、耳ふわもふって罰ゲーム的な?」

「いや、別にそうじゃないと思うぞ。ありゃじゃれてるだけだ」

じゃぁ、俺も触っても……いやいやしっぽだけで幸せだから。


「トールの耳はめっちゃ柔らかくてふにふにしてるぞ」

ちょ……ちょっとそんなこと言われたら気になるじゃん!こっちの兎耳族の耳は実際の野生のウサギ(モンスターは除く)の耳よりも厚みがあり、ふっくらしているように思える。


「くっ!私もご一緒したかった!!!」

紅消がものすごく悔しんでいる。紅消は光の精霊士のお姉さんたちとポーション……異世界版インフルの薬作りが忙しそうだったので同行は遠慮させていただいた。


「また、今度一緒に行こう?素材採集とか」

素材採集。ゲームでよくやったけど実際はどんな感じなのかちょっと興味があるし。


「うぅ……ありがたきお言葉……クロ殿下、せめてこれを」

紅消がポーション一式をくれたのでマジックバッグに収納。ついでに何かあったら困るとヴェイセルのマジックボックスに大量に詰め込ませていた。


「そういえばヴェイセルのゲートで移動とかはできるの?」

せっかくのダンジョンなのだし実際に潜ってみたいが、念のため聞いてみる。


「ダンジョン内は空間魔法の使用が難しいんだよ。ダンジョン自体が特殊な空間魔法で構築されているからね。一度ダンジョンに入ってクリアする前ならセーブポイントで出入りできるけど、クリアしたらダンジョン内の転移魔法陣でリセットされるから入り口からじゃないと入れないよ」


「何だ?セーブポイントって」

ローが首をかしげている。ヴェイセルの説明が地球のゲーム的なんだが。分かりやすいけど。うん。



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