SP:エストレラ王国公認王室チャンネル(エル&クロ)
――――ここはエストレラ王国王都放送局。
「だめだ、クロムウェル殿下の噂は知っておるだろう。許可できない」
「何故ですか!プロデューサー!その噂はデマだとわかり、精霊の祝福を受けた王子だと公表されたではないですか!」
「だが、まだ日が浅い。国民は心の整理ができていない」
「だからかそ!メディアが先導しなくては!」
「だめだ、上からのお達しだ」
上……きっと五大公爵家のどこかだ。もちろんクォーツ公爵ではないだろうが。エストレラ王国大人気リポーターの私セシリーことセシーリアは部屋を出てバルコニーで溜め気をつく。
「クロ殿下……」
「また、直談判したのか」
「アッシュ」
アッシュは私の相棒カメラマン兼ディレクターの魔人族の青年。エストレラの魔人族らしく赤紫色の髪をしている。瞳は水色、魔人族特有の黒い角も2本生えている。
「クロ殿下に会いたい会いたい会いたい!ヴェイセルだけずっるーい!!」
「ヴェイセル様はクロムウェル殿下の騎士だろう。というかそのクロ殿下っていうのは?」
「クロ殿下の愛称でしょ!クォーツっ子なのに知らないの?」
「ここ最近ロケで忙しかったからな。あっちにもここ数年帰ってないし。……そろそろ鎮守祭の季節だな」
「鎮守祭……クォーツって鎮守祭の本場よね!?まだ取材したことないよね!?」
「あぁ。でもクロムウェル殿下の取材目的でなら許可下りないぞ」
「うぐ……」
「……そういえばひとつ目玉情報があるんだが」
「なぁに?」
「今年の鎮守祭の司祭はエルヴィス殿下が担当されるそうだぞ」
「……ってことは?」
「エルヴィス殿下に密着すればいいんじゃないか?それでたまたま鎮守祭にも密着したらクロムウェル殿下もいましたって感じで」
「いいかも!でもエルヴィス殿下とどう示し合わせようかなぁ?前に取材したときはなかなか食えない感じだったんだけど」
「セシリーと妙な会をやってる方の兄上殿だぞ」
「妙な会じゃない!エストレラ王国ロリショタ愛好会です!」
「……その、ろりしょたってどういう意味だ?」
「語れば長くなるのだけど」
「早速、取材交渉だな」
「えーん、アッシュったら聞いてよー!!!」
そんなわけで。
――――私たちは早速クォーツ州クォーツ領クォーツ市街へやって来た!
「んーっ!おいっしい!クォーツのカレー!おいしぃ!本場ロンド州からスパイスを取り寄せてアレンジしてるんだっけ」
「そうそう。それでこっちのほうが人気出ちゃったからロンド州に苦言食らったんだ!でも……」
私は早速クォーツの地で協力者……いや同志と邂逅していた。
「でもでも?」
「クロがお気に入りって話したら、精霊の加護を受けたクロ殿下おすすめとしてクォーツ州と共同でロンド州のカレーを売り出す計画を進めるそうだよ」
ふふふんと楽しそうなヴェイセル。
「ロンド州はわかってるわね。クロ殿下のすばらしさ、可能性を」
「そうそう!」
「……エストレラ王国の2大公爵家が手ぇ組むって結構な特ダネでは?」
私とヴェイセルの密会に一緒に駆り出されたアッシュがふいに告げる。
『イエス!ロリショタ!』
「ヴェイセル様、セシリー。何だその妙な掛け声は」
「やーね、アッシュ。合言葉よ」
「そうだよ、アッシュくん。ウチのクロはかわいいんです」
「……本題にはいつ入るんだ。このふたり、ほっとくと永遠にクロムウェル殿下トーク続けそうだ」
「あっはっは……、そうかも!じゃ、話はつけておこう」
「まかせた!」
『うふふふふふふふ……っっ』
「……」
アッシュがびくんと肩を振るわせる。ふふ、私たちの本気を見せてやろうじゃないのっ!待ってて私のクロ殿下ぁっ!
――――こうしてアポを取り付けた私はクォーツ州クォーツ領クォーツ祭壇に来ていた。
「テレビの前の皆さま、こんにちは!おなじみ、リポーターのセシリーです。今週もエストレラ王家の皆さまを週替わりでゲストにお迎えし取材させていただく『エストレラ王国公認王室チャンネル』のお時間です!――――今回はここ、夏の鎮守祭の本場!クォーツ州クォーツ領から、生のお祭りの熱気をお届けします!さて、クォーツ領と言えば……?そう、この方!エルヴィス第2王子殿下が来てくれました!!」
「こんにちは。エストレラ王国第2王子エルヴィス・リィン・エストレラです」
「ご存じの方も多いと思いますがエルヴィス殿下はここ、クォーツ祭壇で司祭をされているそうですね」
「ええ、今年の鎮守祭の3日目には祭祀も担当しますので皆さま是非遊びに来てください」
「クォーツの鎮守祭は3日間にわたって行われますので王都からでもまだ遅くないですよ~!」
「さて。今回は実はもうお一方、ゲストの方がいらっしゃってくれています!」
「先日、クォーツ祭壇の鎮守の精霊であり鎮守祭の主役シズメさまの加護を授かったことを公式発表されたこの方!エストレラ王国第4王子クロムウェル殿下です!」
「こ、こんにちは」
きゃ~~っ!はじらうクロ殿下、かっわい~い!初めての生のクロ殿下に私はうっきうきだ。
「クロムウェル殿下はここ、クォーツでクロ殿下の愛称で親しまれているそうですね。僭越ながら私もクロ殿下とお呼びしても?」
「は、はいっ!」
本人公開公認おりた!やった!!
「ではさっそくクロ殿下はクォーツ祭壇で精霊士になるためのお勉強をされているそうですが、クォーツでの暮らしは王都エステラと比べていかがですか?」
「えっと、クォーツは……その。エステラよりも涼しいかなって。……あと、お祭りがたくさんあります」
「確かに!クォーツ州では1か月に1回は必ずお祭りをやるって言われていますね!」
「だから祭祀はクォーツ州の司祭たちが持ち回りで担当しいるんですよ」
と、エル殿下。
「今回はエル殿下の担当、ということですね」
「ええ。今回はまだ見習いですがクロにもお手伝いを頼む予定ですので私も含めて見にお越しいただけると嬉しいです」
「これから参加される方、お祭りを見に来られない方にも楽しんでいただけるよう総力で取材しちゃいますよ!では、さっそく行ってみましょう!」
――――side:王都エステラ
「や……やりやがったぁっ!セシリーのやつぅっ」
見事にかまされたプロデューサーは頭を抱えるのであった。




