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【改稿作業中】クロ殿下と剣聖ヴェイセル  作者: 夕凪 瓊紗.com
クォーツ祭壇編

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【23】クロ殿下と鎮めの祭り


――――やっと、やっと正常に戻った。

3日目の夜はやはり前世の灯篭流しとよく似ていた。魔法で光を灯した球体を川に流す。


そしてエル兄さんが祝詞を唱える。そういえばエル兄さんって司祭やってんだっけ。俺はエル兄さんに祝詞の巻物をめくって渡す役だ。


そしておっきい本性のシズメさまが謳うと川からキラキラと光が生まれて、夜空へと消えていく。


「きれい……」

夜闇と温かな光が織りなす幻想的な風景だった。


「でもやっぱり灯篭流しの前に何で騒ぐんだ?」

ヴェイセルやリオ、ローたちと祭壇に帰り、線香花火をしながらふと理由を聞いてみた。


「ふっふっふ!それには深―い理由があるのさ。ね、ロー」

「リオ、言い出したくせに俺に振るなよ。んーと……」

ローが語ろうとするとちったいシズメさまが俺の身体をべちべちと叩いている。


「シズメさま、恥ずかしいのか?」

「お互いをよく知るのは、仲良くなるコツだよ」


「……!!」(ハッ)

リオとローの言葉にハッとしたシズメさまは俺の横で静かに見上げてきた。


「うん。俺もシズメさまのことたくさん知りたい」

こくっと頷くシズメさま。やっぱり癒されるなぁ。なでなでなで。


そしてローが教えてくれる。その昔クォーツ地方には精霊が住み着いていなかった。そこに南から北上してきた氷の精霊フブキさまと精霊狼たちや、黒狼族と共に天山山脈を渡ってきた生命の精霊キララちゃんが住み着いたのだという。


――――クォーツの民が問う。

「精霊様、精霊様。この寒いだけの凍てつく地にどうして居を構えてくださったのですか?」


――――フブキさまが言った。

「この地には鎮守の精霊がいる。他の精霊に疎まれることなく静かに暮らせる」


――――キララちゃんが言った。

「この地にはわたしの対となる鎮守の精霊シズメさまがいらっしゃるのれす。わたしわシズメさまのお傍にいると落ち着くのれす」


……ん?

鎮守の精霊シズメさま?


「しかし、精霊様方。我々はその鎮守の精霊様にお会いしたことがありません」


「鎮守の精霊は引き籠っている」

「シズメさまわ、かなしいことがあってしばらくひとりにしてくれって、いっているのれす」

フブキさまとキララちゃんの言葉にクォーツの民たちは思い付きます。


「んなら、我々でシズメさまを元気づけるぞ!」

「そうだ、そうだ!」


「ひゃ……ひゃひっ!にいさま、どうしましょう」

キララちゃんはフブキさまを見やる。


「いいんじゃない?面白そうだし」

フブキさまが苦笑する。

「はうぅぅぅっ!」

フブキさまの援護にキララちゃんは驚きつつも、しかし対の精霊シズメさまを想う気持ちは同じだと喜んだのだった。


――――――


「……ってことで、シズメさまを元気づけるために始めたのがこの祭りってわけだ」

「励ますためには賑やかにしないとね!」

ローの説明にリオがじゃーんっとトリを決める。いやいやいや、それで騒ぎとおしたの!?まぁ賑やかにして引き籠りを脱却させたっていう古い神話を前世で読んだことあるけれども。

しかし氷の精霊フブキさまもノリ軽いぃぃぃっ!!


「けどそれでシズメさまは出てきたから今ここにいるんだよね?」

「うん。3日目の夜にひょっこり姿を現してくれて、シズメさまの謳でクォーツの地が清浄で豊かになったって言われてる」

とリオ。

「清浄、豊か……?」

アンデッド被害でもあったのか?一般的にエストレラ王国はアンデッド被害が少ないと言われ、それはシズメさまの力のおかげと言われている。そしてそれがエストレラ各地で鎮守祭を行う理由だそうだ。


「クォーツ地方ってさ、昔勇者が大鬼(おおおに)に討たれたって地なんだよねぇ」

初代勇者と大鬼……前世で言う神話的な昔話だったか?ひとびとを苦しめる鬼族が初代勇者に討伐されて、赤髪の大鬼族(おおおにぞく)が初代勇者を倒したっていう。英雄譚かと思えば勇者負けてんじゃんっていう残念な話だ。この話の教訓は功を欲ばりすぎると損をする。


「それ以来、犠牲となった魂を雪や氷で封じ込めたっていう不毛の地」

「……っ!?」

そんな重い歴史背負ってたの!?お気楽、お祭り好きのクォーツ州民性からするととても考えられないよ!


「でもシズメさまが出てきてくれて、今みたいに緑あふれ精霊あふれる土地になったんだって」

とロー。

「だから、シズメさまは特別な存在なんだー」

リオはのほほんと笑いながらシズメさまを愛でる。

「そうだぞ。だから、騒ぐ!これからも!」

ローが拳を握って宣言する。祭りで騒ぎたいだけじゃないのか。でもこの土地のひとびとがシズメさまを大切に想っているのは今回の祭りでも分かったなぁ。


皆、シズメさまのこと拝んでたし。でもついでに俺のことも拝んでたのは何故?


俺もシズメさまをなでなでしようとしたら、シズメさまが突然おっきい本性になって俺を抱きしめてきた。


「……ん、シズメさま?」

俺もなでたかったのだが。

「クロ……」

なでなでなで。シズメさまが頭をなでてくる。うん、シズメさまになでなでされるのも……好きかも。


「もう、悲しくない?」

「ん」

そっか……良かった。


「でもさーシズメさまが何年か前に引き籠っちゃった時はクォーツに激震走ったよね~」

ふとリオがそんなことを言い出して驚く。ちょ……シズメさまに何が!?


「それを救ってクォーツを救ったのが、クロ殿下だぜ」

え?ロー、俺なんかしたっけ。まったく身に覚えがない。


「ん」

……シズメさま?何か顔赤らめて恥ずかしそうにしてる。


「め」


「その話はまだ駄目なの?」

ヴェイセルが悪戯そうに微笑む。


「ん」

気になる、気になるんだけど。シズメさまがかわいくって、もっふもふなのでまぁ良しとしよう。……うん。


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