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【16】クロ殿下とクォーツ祭壇の精霊たち


――――エル兄さん……エル兄さんに見えるのだが。だが違う部分もある。普段エル兄さんは翼やしっぽを収納しており出さないこと。そしてエル兄さんによく似た彼の服装が遊牧民風みたいだってこと。


「クロ殿下、こちらはエル殿下ではなく氷の精霊フブキさまです」

「からかって……ないよね?」

あの兄はそういうことが好きである。しかも隣にいる司祭様も恐らく同類だ。判断に困ってシズメさまを見やるとシズメさまが首を横に振る。あ、マジなんだ。


「似ていらっしゃるでしょう?精霊同士はわかりますが、たまにどっちがどっちでショーやってくるので注意が必要です」

司祭様がそういうとフブキさまも悪戯っぽい笑みを浮かべていた。中身までエル兄さんにそっくりらしい。

そしてクォーツ祭壇の愉快な精霊たちの次に案内されたのは祭壇の中庭……訓練場のようなところだった。


「クロ殿下、こちらが闇の精霊士長のギョクハン・チェリクです」

そう司祭様が紹介してきたのはエル兄さんと同じ竜人族の男性だった。角の色は同じ象牙色だが赤髪に黄色いメッシュの入った髪、瞳の色は翡翠色だ。野性的な顔立ちをしていて右目には眼帯をしている。


「おぉ、案内終わったのか?じゃ、さっそく」

さっそくって何?俺あそこのアニキたちみたいなことできないけど。訓練場では闇の精霊士たちが剣やら槍やらで訓練をしており、気迫がすごい。あんな中に俺は入れない。子どもだし。


「制服合わせっか」

ち……違った――――っ!!!よ、よかった。

「クロ殿下も興味あんなら、後で混ざるか?」

ギョクハンさんが訓練している精霊士たちを指して提案してくる。いいえ!絶対無理です!!俺は精一杯首を横に振った。


「クロ殿下。うん、やっぱかわいい」

武闘派闇の精霊士の中では珍しい魔人族の少女だった。黒く長い歪みのある角、赤紫色の髪に、ターコイズ色の瞳。瞳孔はローと同じく縦長だ。腰まである長い髪を下の方で二つに結っている。年齢はローより少し上だろうか。


「ウズメ・デニズです。ギョクハンアニキとおんなじ、闇の精霊士」

あ……アニキ!!確かにアニキって感じ!!


「このサイズ、どう?」

ウズメさんが俺に制服を合わせてくれる。シズメさまは俺の横でちょこんと待っている。かわいい。


ローやリオと同じ黒いゆったりとした、修道士のようなデザインの制服。ひじのあたりまでのケープ、ふちには金色の刺繍があり、その下は修道服のようになっているが、左右横にスリットがあり、その下から黒いゆったりとしたズボンがのぞいている。


ぴったりと合うサイズを見繕ってもらい、制服に着替えたら竜アニキが胸元のケープの留め具のあたりに月の形のエンブレムをつけてくれた。


「見習いは銀色、精霊士になったら金色な」

ウズメさんとギョクハンアニキの胸元には金色の月のエンブレムがある。確かリオとローも銀色だったから、おんなじ見習いってことか。


「ついでに光の精霊士は太陽を象ったエンブレム、司祭様は六角形の星型」

あぁ確か司祭様もそんなエンブレムをつけていたっけ。因みに光の精霊士のエンブレムは丸い形で真ん中に穴をあけたデザイン。わかりやすく言うとドーナツ型だ。


「じゃ、後は見学でもすっか。一日目だしな」


「見学?」

ギョクハンアニキの言葉に横を見れば。


「うらぁぁぁっ!」

「脇があめぇぞ、もっと気合入れろ!」

俺より3~4歳年上だろうか。竜人族の美少年が魔人族のアニキに挑んでいる。ひいいいぃぃぃっ!!!アニキたち恐ええぇぇぇっ!しかもあのおとなしそうなウズメさんまであのごついアニキたちに果敢に挑んでるし。


「……ん」

シズメさまを抱っこしてびくびくしていると、祭壇に初めて来たときに出会った黒い猫耳のアニキが飲み物を用意してくれた。


「あ、ありがとう」

「……めぇが?」

……え?


「うん」

適当に答えてみたら、アニキは嬉しそうに俺の頭をなでなでしてくれた。正解だったらしい。黒い猫耳アニキとたわむれているとリオとローが歩いてくるのが見えた。


「あ、見ろ。今日は魔将アニキが教官してらぁ」

どうやらあの魔人族アニキのことらしい。ローが楽しそうに訓練を見ている。楽しそうと言うかすげぇ恐いんだけど。……あと何?その魔将アニキって。魔王の直属の配下みたいな愛称なんだけど。あ、クォーツだから魔人王か。


「クロ殿下は黒猫アニキと一緒だったん?ちょっと手合わせしよーぜ!」

いや木刀持ちながら何言ってるのリオ。ちょっ!リオったら……そんなの一回も振ったことないのに!!というか……黒い猫耳アニキの愛称はそのまま黒猫アニキ!……似合ってるけど。


「ん、けど……今日は見学」

「えー、ちょっとくらい大丈夫!ね!」

「剣聖の必殺技教えてやるよ」

え、何?それ。ちょっと気になる……?


「秘技!ショタっ子おへそめくりっ!!」

ちょーっ!!!リオ、何じゃその最低な技名はあぁぁぁぁ!?何そのネーミング!意味わかってんの!?リオが木刀を振りつつ素早く俺の横を駆け抜けて着地する。ケープの胸元のひらひらが一瞬ふわっとなる。


「どう!?」

どう……って。これ、ヴェイセルが考案したの?……あの変態め。


「リオ、いきなりは難しいだろ。まずは素振りな」

とローが提案してくれる。


――――5分後。


「はぁ、はぁ、はぁ、もう……ダメ……」


「クロ殿下、体力なさすぎ?」

「魔人王軍の新人訓練よりは軽ぃぞ」

ちょっとロー……ま、魔人王軍?そんなのあんの!?そして何故その新人訓練知ってんだ。


「ん」

黒猫アニキがまた水をくれる。


「あ、あひがと……ぜぇっ」


「体力回復ポーションでももらいに行くべ」

「んだな」

ローと黒猫アニキに勧められて、俺はポーションをもらいにいくことになった。てか……ずっと思ってたんだけど……何かみんな、訛ってない?



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