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【14】クロ殿下とヨル殿下



――――クォーツ祭壇に行く直前、俺は久々に体調が安定しているヨルに会うことができた。


「くぉーつに行くの?そこって、とってもとっても遠いところなんでしょ?」


「うん。だけど、騎士になったヴェイセルの空間魔法でいつでも戻ってこられるよ」


「ヴェイセルさん……どんなひとなの?ぼくもあってみたいなぁ」

「えっと……それは」

ヨルは純粋な子だ。こんな純粋な子をあのロリショタコン剣聖に会わせるのは毒だ。きっと体に良くない。


「ヨルリン殿下、クロムウェル殿下。お茶の準備ができましたよ」

ヨルに仕えている執事のコンラートさんが紅茶と俺特製生チョコケーキを持ってくる。とおさんに何となく似ている柔和な笑みを浮かべるコンラートさんは、茶髪に橙色の瞳を持っており、長身痩躯のイケメン。仕草も優雅だし、何でもできるオールマイティー。

くっ!何この完敗感っ!!


「わぁ、おいしそう。これ、ほんとにクロが作ったの?」

「うん、おいしそうでしょ?」

おんなじ顔だけれど、やっぱり弟だから、かわいい。うん。弟っていいよな。


「ん、おいしい」

「でしょ?」


「それで、ヴェイセルさんは今日、いないの?」

「うーん、ヴェイセルは……」


「クロ殿下、大丈夫です。紹介しましょう」

紅消が後ろにいた。うおおぉぉぉいっ!!俺のかわいい弟をロリショタコン剣聖の毒牙にかける気か!


「呼んだー?クロ―!!!」

「ぎゃーっ!!!」

突然空間が切り開いてヴェイセルが現れる。そして拳を握ったと思ったら、その拳にはフォークを握っていた。


「あ、ごめんなさぁい。ついついフォークが……もう、私ったらドジで~」

こ、コンラートさんんんんんっ!!?わざとらしすぎるうぅっ!!


「コンラートったら、おちゃめなところがあるんだね~~!ふふっ」

「ふふふ」

ヨルの笑顔、かわいい。そして笑顔が黒いよコンラートさん。


「もう、コンラートさんったら、お茶目なんだね~」

「ええ~、どうぞよしなに」

ヨルは純粋な子だから仕方がないけど、ヴェイセル、空気読めー!!!


「ところで、変態ヴェイセル」

「紅消さん。俺、剣聖ヴェイセルだよ?」


「ヨルリン殿下を真眼で見ろ」

「え、あぁ……うん?」

ちょっ!それじゃ、ヨルがヴェイセルの毒牙にっ!!


「……」

「ヴェイセル?」


「……っ!!!ヨルリン殿下は……真のロリショタではないっ!!!」

あ、そう。ひどくどうでもいいんだけど。


「ロリショタコンの勘が告げている……ヨルリン殿下は成長するにつれて、大人びていく!!!」


「ろり……しょた?」

「ヨル!変な言葉覚えちゃだめ!!!」


「え?」

「てゆーか!双子なのに、俺たち絶対一卵性だよ!?そっくりなのに俺だけっ」


「ひとのもつ雰囲気のようなものだと思う。あと、性格とか?うぅ~っ」

「あの~、シャドウの紅消……?これ~何の茶番でしょうか?」

笑顔で這いよるコンラートさんにびくっとなる紅消。

そして、紅消はしくしくと涙を流すヴェイセルの首根っこをつかんでヨルに向き直させる。


「ほら、見ろ。ヨルリン殿下のご病気、体質にかかわるものを真眼で見ろ」

そっか!真眼!ヨルは成長するにつれて大人びるけど今は俺と同じ顔。まだ8歳だからロリショタスコープの対象内だもんな。感心したとたんに何か、悲しい……。


「んー……あ」

「何か分かった!?」


「クロの大好きなわふたんぬいぐるみをクロの代わりにヨル殿下に預けるといいよ」

「何で?」


「1日1回。開運、ロリショタ占い」

「……」

占いって何!?スコープにそんな機能ついてたの!?――――というかよく俺がわふたんぬいぐるみ持ってんの知ってたな。


……盗視か!?


「うぅ……ヴェイセルの占いを信じるわけじゃないけど俺の部屋につなげて」

ヴェイセルの出したゲートで部屋からわふたんぬいぐるみを持ってくる。


「はい、寂しくないように」

「ありがとう。クロ」


「きゅぅぅぅーーーん!やばい双子萌えした」

「お前」

萌えるヴェイセルにクナイを突き付ける紅消

さらには。


「え~と、剣聖ヴェイセルくん?」

「ん?だれ?セバスチャン?」


「ヨルリン殿下にお仕えしております、執事のコンラートです~」


「おい、バカ剣聖。謝れ」

「えっ!何で!?」

ぎゃーぎゃーうるさいので後ろを見ると、般若の笑みのコンラートさんの前で、ヴェイセルの頭を押さえつけようとしている紅消がいた。


何やってんだか。でもそんな賑やかな光景を見て、ヨルが笑っていたので……まぁいいか。


――――side


クロたちが退室した後、少しはしゃぎすぎたヨルは再び横になっていた。

コンラートが優しく微笑みながら掛布団をかけてやる。


「まったく、今日は騒がしかったですね。お加減はいかがですか?」

「大丈夫。たのしかった」

ヨルリンはクロからもらったわふたんぬいぐるみをぎゅっと抱いている。


「しかしあの剣聖……殿下に対する言葉も態度もなってませんね。ヨルリン殿下をヨル殿下などと省略しますし」


「ヨル殿下じゃ、だめ?」


「……」


「クロも、クロ殿下。ぼくも、おそろいがいい。コンラート。ヨル殿下がいい」


「仰せのままに、ヨル殿下」

コンラートはとても優しく微笑んだ。


――――


「……で、説明してくれますか?シャドウ」


「……弟は留守だが」


「シャドウは3人でシャドウでしょ?一心同体。説明してください」


「……」

緊迫するその場に、呑気な声が響く。


「やぁ。スコーピオンに、シャドウ」


『長官』


「仲よさそうですね」


「よくありません」

「ふふふ、つれないですね~シャドウったら~」


「……」

無言なシャドウ。それに構わず長官が続ける。


「スコーピオン、お掃除お疲れ様。ヨルが元気そうで何よりだよ」

「ええ。指示通り、ヨル殿下の元に忍び込もうとした者たちは一掃しました」

橙色の瞳の青年が冷ややかな黒い笑みを浮かべる。


「それにしても剣聖の真眼には一体何が映ったのだろうね」

「あの真眼は本物だと?」


「うん、本物だよ。使用条件があるけどね。あの子が初めて私に会った時、何と言ったと思う?」


「……何と?」


「『暗部の長官って何?』ですよ」


「あれには肝を冷やしたぞ」

シャドウが告げる。


「へぇ、長官のステータスが見えたのですか。長官のステータスは並みの真眼では見えないはずですし。あぁ、私のことは見えていないでしょうか」


「うん、スコーピオンはそういう顔じゃない」

「ああ、そうだな」


「なんですか、そういう顔って」

長官とシャドウの言葉にスコーピオンが首を傾げた。


――――


シャドウと長官の元から下がり、コンラートは再びヨルリンの私室へと戻る。


「どこへ行っていたの?コンラート」


「業務連絡ですよ、ヨル殿下」

そう言ってコンラートはいつもの柔和な笑みを浮かべるのだった。


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