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【改稿作業中】クロ殿下と剣聖ヴェイセル  作者: 夕凪 瓊紗.com
ルタ獣王国編

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【94】クロ殿下とセナの秘密



――――里に走った激震に長のファトマさんの声が響く。


「そんなことをしては雷の精霊の怒りに触れます!」


「それが……雷の精霊の力を封じたと。その証拠に雷の精霊様がお答えになりません」

「そんな……っ!」

里の狐耳族の言葉にファトマさんが驚愕する。精霊の力を封じる……?そんなことができるのか!?


「何か嫌な流れですね。前のクリスタでも隔壁の影響でシズメさまの力が弱まりました」

「まさか、また奴らか……?」

ヴィルさんとアスラン兄さんがいう奴らとは星の使徒のことか。

リョクタも怪訝な顔をしている。やっぱりあんまり思い出したくはないのかな。リョクタが落ち込んでそうなので、なでなでしてあげる。


「クロ殿下……ありがとうっす」

「ううん」


「なでなでなの」

「かわいいっすね。この……ユキヒョウ?」


「ユキヒョウなの!」

こういう状況では癒される。


「あの、クロムウェル殿下……?その子は一体……」

ディアーナさんが目を丸くしている。


「雪の精霊です」

「雪……の!?」

あ、ルタでは雪の精霊はあんまりよく思われていないんだっ。失敗だったかなぁ。


「ファトマ、大変!雪の精霊様がいらっしゃるの!」

「え……!?雪の精霊!?」

周囲もざわめき始める。たまはおれにきゅっと抱き着く。リョクタも俺の前に構えてくれる。


「まぁ、ふわもふ雪の精霊様……!……ではなくどうして動けるのですか!?」

あの、ファトマさん?もしかしてファトマさんってふわもふ好き?セナさんもだし、何か周りの狐耳族の人たちの目も輝いているような。狐耳族はふわもふ好きが多いのか……?それとももしくはユキヒョウ好き……!?


「動ける……って一体……?」

「第1王女一行はこの森全体の精霊の力を封じたと訴え我々に投降を促しております。なので雪の精霊様が動けるということは狂言の可能性があります」

とディアーナさん。

「では何故雪の精霊が答えてくださらないのかしら……」

ファトマさんが悲しげだ。

「えっと、雪の精霊様?」

「たまなの!」

「……まぁ!ステキなお名前ね。たまさま、雷の精霊は今どうしていらっしゃいます?」

たまは雷の精霊を知っているのか?まぁ、雷の精霊のテリトリーにいるわけだしそりゃぁ知っているか。


「……いないの」

「へ……?いない……?」


「いなくて、たま、寂しかったの。でも、クロがいたの。クロ、シズメさまの気配がするの」

俺はシズメさまの加護を授かっている。


「だから、クロのところに来たの」

それで朝、俺の布団に潜り込んでいたのか。


「でも、どうしてたまはイカヅチの森に……?」

「えっとね……んっと……」

たま、照れてる?


「たまさまは、雷の精霊の対となる精霊様です」

じゃぁたまにとって雷の精霊はシズメさまで言うキララちゃん的存在!フブキさまで言うほむらさん的存在!属性精霊の対って必ずしも属性精霊じゃないんだ。まぁ、そりゃぁそうか。属性精霊の対がすべて属性精霊だったら金の属性精霊ズの対が足りなくなる。


何故なら彼らは金、銀、銅、鋼、鉄とかの個々の属性精霊が合わさってザ・金属精霊ズ(ほぼ闇属性、ごく一部光属性がいるらしい)を結成しているのだから。


「ルタでは闇属性で雪害のイメージを与える

雪の精霊様はよく思われません。ですのでここ、雷の精霊様のいらっしゃる禁域イカヅチの森でひっそり隠れて暮らしていらっしゃったのです」

とファトマさん。そうだ……エストレラ以外の闇の精霊はよく思われていないのだ。


「それにしても……何でたまは平気なんだろう……?」

「闇の精霊には効かないとかっすか?」

「確かに、その可能性もありますが……」

ファトマさんがうーんと思案する。

「ファトマ様!殿下が……クロウ殿下が到着されました!」

伝令が飛び込んでくる。


「殿下が!?」

「第1王女殿下と交戦中です。しかしクロウ殿下は雷の精霊の力を使えないご様子。第1王女殿下に押されております」

ついに交戦が始まってしまったのか。


「雷の精霊様の力さえ使えれば……っ!」

どうすれば。クリスタではヒュイさんが教えてくれてシズメさまの力を借りて結界を中から破壊した。同じようなことができればいいんだけど……。あれ、そういえばあの時は精霊が中に入れなかったけど精霊の力を借りられたっけ。前回よりも強力な力ってことか……?だけど第1王女殿下一行とクロウ殿下一行がこの森に入れた。


「今回のは結界じゃないのか……?」

「クロ殿下、ここは私が」

……セナさん?セナさんは屋外に出て何やら紋様を描いている。それは魔法陣のようだが丸い形ではなく、四角かった。


「これはまさか……」

ファトマさんが驚いている。召喚の時とは違い、セナさんが方陣の中央に立ち祝詞を謳う。


「我が問いに応えよ。雷の精霊を目覚めさせ、彼の王子に雷撃を授けるすべを標せ」

方陣が光り、セナさんの群青色の毛並みが光を帯びていく。


「これは……王の……」

「やはりこの御方は……」

「やはり我らが王……」

その様子を見ていた狐耳族の人々がセナさんに平伏していく。


「私は皆さんの王ではありません。あなた方が使える王は私ではありません。あなた方が支持したのはどなたですか?」


「それは……」


「私を毛並みの色でそう決めつけるのは第1王女殿下の主張する白色絶対主義と何ら変わりはありません。あなた方は何をもってクロウ殿下を自らの主君とみなしたのですか」


「セナ様のおっしゃる通りです。皆さん……セナ様に失礼ですよ」

「ファトマ様……」


「申し訳ありません」

「我らは第1王女と同じことを……」

「どうか非礼をお許しください」


「……ご理解を得られたのでしたら構いません。私はクロ殿下のために最善を尽くします。あなた方も自らの主君のために最善を尽くしてくださいね」


『は……はい!』


「セナ様、この度は重ね重ね……」

「構いません。貴方はとてもよい長殿のようです」


「ありがとうございます、セナ様」

「それと、雷の精霊のことがわかりました」


「やはり先ほどのは……託宣術ですね」

とファトマさん。

「巫女が授かる宣託みたいなもの……?」

だらうか?


「えぇ……ですが巫女は祈り、必要な時に宣託を授かりますが、託宣術はそれを強制的に導き授かる術なのです。一部修業を積んだ巫女も使えるそうですが……狐耳族の中には代々その力を受け継ぐ王族が多く存在しました。尤も子孫の中にも稀に出ますからお気を悪くなさらないでくださいね、セナ様」

「いえ、それもまた事実ですから」

セナさんはファトマさんに笑みを返すと、再び真剣な面持ちに戻る。


「雷の精霊は……雷の力を封じられ、この地に縛り付けられ身動きが取れません。しかし雷の精霊のみが標的とされたためたまさまは無事だったのです」


「どうすれば雷の精霊様を助けられるのでしょうか」

「より強い雷の力を地に打ち付ければいいのです。そうすれば力を取り戻した雷の精霊が目覚めます」

だけどクロウ殿下は雷の魔法を封じられているはずでは……?


「鬼道です」

魔法の理の外にあるそれなら。でもどうやって扱うの……?扱える人なんて……いや、モンスターなら……?


「そのためにはもう一度クロ殿下にスイランさんを召喚していただく必要が出てきます」

もう一度スイランに会えるのは嬉しいけど……。


「しかしせっかく回復したクロ殿下のお体に負担がかかります」


「……大丈夫、だって……セナさんたちもいるし今回はアスラン兄さんたちもいる。俺は大丈夫だよ。体力・MPおおよそ回復したし」


「そうだぞ。クロ、何があっても兄ちゃんがいるからな」

アスラン兄さんの大きく優しい掌が俺の頭をなでてくれる。これだけで不安も疲れもすべて吹っ飛んでしまいそうだ。


「少しだけでもクロ殿下の負担を減らすため、リョクタ……貴方にも協力してほしいのです。あの力で、雷の精霊を縛り付けている術を……」

「分かったっす」

光の魔法も闇の魔法も通じない理の外にあるモンスターたちをも撃破したあの力。だけどそれはリョクタの体に負担がかかる。


「クロ殿下、俺も一緒に頑張るっす」

「……うん。一緒なら心強いよ。でも、絶対無理はしないこと!」


「……クロ殿下もっすよ」

は……はい。肝に銘じます。うぅ……。


「ニマくん、ニマくんは炎魔法の魔力を地面に溜めてください。雷魔法に近い炎魔法の魔力でしたら雷の精霊の力になります」


「分かったよ」

ニマの答えに頷いたセナさんだったが、セナさんの身体がよろけるのがわかった。


「セナさん……!?」

もしかしてダンジョンの時からずっと無理をして……!?


「託宣術は身体に負担をかけるのです。強制的に宣託を授かる代償なのです」

ファトマさんが説明してくれた。


「セナ様のことは、私たちにお任せください。私は戦場に出る力はありませんがヒーリング魔法を扱えますから」


「お願いします」

「はい、お任せください」


「クロ、これだけは先に伝えておく」

「アスラン兄さん……?」


「エストレラは他国の王位争いには介入しない。だから直接クロウ殿下の加勢はできない」

「でも、それじゃぁ雷の精霊が」

「そうだ。だから俺たちは加勢ではなくあくまでも雷の精霊を目覚めさせに行くだけだ」

「……うん!」


「後はクロウ殿下がどうにかするだろうしな」

何か他人任せだけど、俺たちは俺たちでできることをするだけだ。





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