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【改稿作業中】クロ殿下と剣聖ヴェイセル  作者: 夕凪 瓊紗.com
ルタ獣王国編

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102/919

【90】クロ殿下とルタ獣王国


――――side:リョクタ


ルタ獣王国に来て最初にたどり着いた街はそこそこ大きな街らしく人だかりも多い。門番に止められるかと思ったのだが、セナさんの考案で黒っぽい毛並みの門番のところから入ることになった。


『急病人がいるんす』と伝えたら、一刻を争うからと通してくれた。一瞬セナさんを見て驚いた顔をしていたのだが。王子も黒い毛並みの狐耳族だっていうし、毛並みの色が近く王子とおそろいだったからかな……?

街中は俺たちを見て怪訝な顔をするものもいたが、冒険者らしい格好をした者も多い。

彼らは多くの国を行き来しているのか外国出身なのか、特に気にしないようだった。


街ゆく冒険者たちにギルドの場所を訪ね、俺たちは何とかたどり着くことができた。


「クロ殿下のギルドカードを使えればいいんすけど。クロ殿下以外でギルドカードと身分証を持ってんのは俺だけなんすよね」

俺は更生して社会奉仕のためのクエストをこなすため、クォーツギルドで冒険者登録を済ませている。セナさんはその身一丁で来たらしく、身分証カードは持っていなかった。ニマはこの世界に来たばっかりだし。


しかし俺の顔を見るなり金髪犬耳の受付嬢が怪訝な顔をするのがわかった。何となくセナさんの方も見ていた気はするけれど……。


「急病人がいるんす。少し場所を貸してほしいんすけど」

「……身分証もしくはギルドカードをお見せください」

俺は自分のギルドカードを提示する。受付嬢の顔色が変わったのがわかった。


「あなた……犯罪を犯していますね」

「だから何すか。祭壇で更生印もらってギルドでも承認されてるんすけど」


「関係ありません!罪人ではないですか!しかも汚らしい狼族!」

どうやら碧狼族というよりも狼種全般を忌避しているようだ。聞く奴を間違えたかとも思うが、周りの受付嬢も怪訝な顔を向けてくる。どいつでもおんなじ結果になったってことか……。


「返してくださいっす。他に行きます」

受付嬢からギルドカードを取り上げ、帰ろうとする。


「きゃあああぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!」

受付嬢が突然金切り声を上げる。


「暴力!この犯罪者が暴力を振るいました!」

いや、自分のギルドカードを取り戻しただけなんだが。


「守衛!この犯罪者どもを捕らえなさい!」

受付嬢が声を張り上げる。

その声に合わせギルドの用心棒と思われる男たちが俺たちを取り囲み、周囲の冒険者たちも怪訝な顔を向けてくる。くそ……っ。俺のせいで……!


「待て」

その時怒気をはらんだような低い声が響く。


「祭壇の更生印が押され、ギルドが認めたギルドカードを否定するのならば。それは世界中の祭壇……いや、ギルドをも敵に回すということだ。このギルドはギルド本部に反旗を翻すということか?」

現れた青年は雑種と思われる獣人族だった。薄いベージュ色の髪に狼耳のような獣耳が伸びているが、先っぽにざんばらな毛が伸びている。


オリーヴ色の無機質な瞳をしており筋肉質で、寒々しいこのルタ獣王国でノースリーブのタートルネックを着ている。後ろからは生えているしっぽは薄いベージュ地に茶色い毛がまばらに伸びていて、茶狼族や黒狼族のしっぽよりも細めで碧狼族に近い。


「シュアンさん、お願いです!そこの犯罪者どもを捕まえてください!」

どうやら、シュアンというらしい。


「私、その狼犯罪者に暴力を振るわれたんです!」

勝手なことを……!


「お願いです!討伐してください!シュアンさんはSS級冒険者です!あなたたちの悪事もそこまでですよ!」

SS級……!?ヴェイセルと同じ……?


「自分のギルドカードを取り返しただけで暴力になるのか……?最初から見ていたが、君が1人でぎゃあぎゃあ騒いでいるようにしか見えないが」

シュアンさんの鋭いまなざしに、受付嬢がひるむ。周りからも『そうだそうだ』『いくら何でも難癖だ!』という冒険者たちの加勢飛び込んでくる。


「お黙りなさい!誰があなた方に仕事を恵んでると思ってるんですか!」

受付嬢が冒険者たちを震える声で怒鳴りつけるが、火に油を注ぐのかごとく冒険者たちが怒って用心棒たちと取っ組み合いをおっぱじめる。


「悪いが、ギルド本部に歯向かうようなギルドの依頼は断らせてもらう。今回の話はなかったことにしてもらおう」


「そんな!助けてください!今シュアンさんに依頼を断られたら……っ!きゃああぁぁっぁぁぁぁっっ!!!」

受付嬢は飛んでくる怒号や物に身をすくめ、恐怖で震えていた。


「……出るぞ。冒険者たちのことなら大丈夫。ここで仕事が見つからなければ他に行くだけだ。冒険者が仕事をもらう場所なら他にいくらでもある」

シュアンさんが冒険者たちの方をちらりと見ると出口へと促してくれる。俺たちはシュアンさんに続いた。どうやらこの人は味方らしい。受付嬢に向けるまなざしは怒気をはらみ、鋭かった。でも何となく、クロ殿下を見つめる視線が優しかったから。


「依頼の件はよかったんすか?SS級冒険者がでる依頼って、相当な……」

「……俺にとってはクロ殿下の方が大切だ」

……!シュアンさんってクロ殿下を知ってる……?ヴェイセルつながりで知り合ったとか?それにこの人は決してクロ殿下の不利になることはしないような気がした。


ギルドの外に出るとギルド用心棒だけではなく、衛兵や騎士と思われる連中まで俺たちを追ってくる。


「何なんすか……!」

「ここはお任せを」

俺たちの目の前に飛び込んできたのは、黒い毛並みにセナさんと同じ獣耳、しっぽを持つ青年とそれに続く獣人族の騎士だった。


何となく追手側が白っぽい毛並みの獣人族、こちら側が黒っぽい毛並みの獣人族に分かれている気がする……?


「そちらは任せた、クロウ。行くぞ」

クロ殿下と名前似てんな。そう思いつつも俺たちはシュアンさんに続いて門へ向かう。

その門は黒っぽい毛並みの門番がいる、街に入った時に通った門だ……!


「急いで!追撃隊が来ます!」

門番だろうか。その青年は黒い毛並みの白豹族……いや、エストレラ風だと豹族か?その豹族に先導され、暗い雰囲気の森に逃げ込む。遠くから騎馬兵だろうか。馬の蹄や騎馬竜の足音が響いて来る。


「奴らはこの森には入れません。それは我らも……ですが、クロ殿下がいらっしゃるなら大丈夫です!」

この人もクロ殿下のことを知ってる……?それにしても入れないってどう言うことだ……?


「俺は、クロウを援護する」

「えぇ、クロウ殿下をお願いしますね、シュアン殿」

今、殿下って……?クロ殿下ではなくはっきりクロウ殿下と言ったよな。


「あぁ……こんなところでみすみす失うわけにはいかない。クロウも、クロ殿下も」

「さ、こちらへ。シュアン殿はSS級冒険者ですから。彼らが束になってもかないませんよ」

シュアンさんが迫りくる追撃隊に向かっていき、俺たちは黒い豹族の青年に続いて森に分け入って行く。


「あの……この森ってイカヅチの森では!?」

セナさん!ここのこと知ってるの!?


「えぇ。下手に分け入れば雷の精霊の怒りに触れるでしょう!」

精霊の怒りに!?大丈夫なのか!?


「しかしクロ殿下はシズメさまの加護を授けられた王子ですから!」

シズメさまの加護。ダンジョンでもそうだったが……それは俺が想像しているよりももっともっととんでもない恩恵があるのでは……!?




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