その4
ぎゅいんと目の前で突然光の輪が現れる。
青く輝く魔法陣が3つ地面の少し上から間隔をあけて上へと展開されていく。光が円の周りを紫、青、緑、黄、赤と色を次々と変えながら光り輝く様は美しい。
やがて光が集まりパァッと弾ける。
「…っ!」
シャンッシャンッと音が鳴り響くと同時に目の前に包装された物が1つずつ姿を現した。
音を立てながら、大小様々な形の包みが出てくるのを見守る。白い包みには、リボンが巻かれていておりプレゼントといった感じであった。
少しずつ光が収まっていく。
10個出て終わりか、と思うと同時に消えようとした魔法陣が赤くその色を変えた。
金色の光が弾け、中央に箱が現れる。白、黒、金、銀と箱の色が変わっていき、灰色になると箱を残し、光が消えていった。
なんだろこれ?おまけがあるなんて書かれてはいなかったよな…?
取り敢えず白い包みの方から確認してみる。
【世界の旅人初心者グッズ】
私が選んだガチャである。
5つある種類の他は、【世界の武器】【世界の魔道具】【スキルスクロール】【隠れ家】といった中身も便利や凄い物がリストにあるものだが、量が多いのが難点だった。
当たりも多いが、ハズレもまた数多い。
確率から考えると自分の今までの運も考えて怖い、怖すぎて選べなかったのも理由だ。【隠れ家】は、携帯用の持ち歩ける家が一つ必ず当たるとあったので惹かれたが他の9枠が不安すぎた。注釈に最初から家具類は入ってないとあったので。
だが、これを選んだ一番の理由は今一番必要な物であるという事だ。
今、自分の状態を考えると不自然すぎるのだ。
旅道具を持っていない旅人がいるだろうか?
自分にはアイテムボックスがあるが、これは鑑定と同じく世界を渡った時に貰えるギフトである。
この世界の人は、普通に持って旅をしているだろうし、注釈には魔道具と違い容量に制限が無いとあった。
これがそれ
アイテムボックス
◁物をいくつも入れる事ができる。不思議と物同士の接触がおきない空間を形成する。中は時間が止まっているので食べ物を保存する事も可能。この能力と同じ性能を持つ魔道具が存在するが、珍しくそれぞれ容量の制限が違う。魔道具と違い制限が無く、世界を渡った者のみがこの能力を手に入れる。
つまり、アイテムボックスなどというスキルを持つ=異世界の人間である。
人前で使うのは憚れる。
決めている事がある。召喚した者や召喚された者達に気づかれない様に行動する、ということ。
何の理由があって召喚したのは解らないが戻せない事を知らないとは思えない。
召喚をしたという事は、その方法があったかわざわざ作ったか。一度目であるとしても別の世界の人に面倒事をもっていく人にバレたらお前も協力しろとなりかねない、それは嫌だ。
物語定番の今いる世界の危機であるとしても!面倒に首を突っ込む気はないのだ!正直召喚は誘拐だと思う。召喚された当人は逞しく生きてほしい。
なら同じ境遇の人はいいんじゃないかと思うかも知れないが、知らない人と行動するのは疲れる。あれこれ言うのも言われるのも嫌である。何より自分の身を守ることが一番の私には同郷の人と仲間関係を作る事は考えられない。
つまり、普通のこの世界の旅人になり、最初から他人からの疑いの目をなくす。
追い剥ぎにあったので〜などが通じるか解らないし、なら何故お金ある?となりたくないです。
このガチャは17つ種類があり、他のガチャと違って同じ道具が重なる事がないのも決め手だ。セットとある様に中身が旅道具一式にそれぞれなっている。17はセットの種類であり、低ランクの物から便利な物が揃った高ランクのセットが入った実質一回分のガチャである。中身が10個あるだけの10連ガチャとは言えないものであった。
だが、3分の2でいい物が入ったセットがあった。