表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦哮の暗黒騎士  作者: 玻璃 奇石
入団前編
5/16

第五話

「ん……ここ、どこだ…?」


目が覚めたのは医務室、だろうか。


治癒の魔法が掛けられており、体中の痛みは和らぎ、木の細剣で突かれた箇所は生まれたての様に綺麗になっている。

とは言っても、体は怠いし関節などはまだ痛む。


一番新しい記憶。


俺が相手の技をくらい、倒れ伏せるという場面。


右手を開いたり握ったりする。


俺は負けた。


その事実が頭に焼け付いて離れない。

師匠に十年鍛えてもらって、バンには毎日美味い飯を作ってもらって…


だけど俺は負けた。


あの金髪の少女に。


俺は何故自分が負けたのかを分析する。


一つ、自信過剰になっていた。


確かに俺は師匠に鍛えてもらって『自分は強い』と思い上がっていた。


一つ、相手の使った技。


多分これが原因だ。俺は努力してきたし、訓練や鍛錬を怠ったことなど一度とてなかった。


ならばこの技とは何なのか。


問題はそこだ。


確か相手が何か言葉を発してから俺は地に伏した。


テンピーシン。確かに相手はテントラストと言った。


いくら教養のない俺でも意味は分かる。


テンは十。ピーシンは……分からない。

だが大凡の想像はつく。相手が使っていた武器種は細剣、レイピアだ。

細剣とは突く武器。

ならば必然的にピーシンとは突くとか射抜くとかそんな意味合いだろう。


だが、技とは普通、騎士でも上位に位置する人間が使えるものだ。と師匠に聞いたことがある。


だが俺と良い勝負をしていたと考えると、その理屈は通じない。


ならば後一つ、考えられるとすれば……



「貴族、か……」



部屋に俺の声が残る。

しかも貴族でも技が使えるのは限られた者のみ。


技が使えて可憐で、まるで物語の主人公の様だ。


羨ましい、俺にも技が使えたら。

妬ましい、何で俺じゃないんだ。


醜い思想が頭の中を埋め尽くしていく。


「気分はどうだ」


途端、声が聞こえた。

声の方を向くと、ドアにもたれ掛かった黒い鎧を身に纏った女性がいた。


「っ!」


驚いた俺は咄嗟に身を起こそうとして、


「いっ!」


激痛が奔った。


「何、怪しい者じゃない。安心したまえ、私が君の命を狙う者だったら今頃君は生きていない…そうだろう?」


黒鎧の女性の言葉は最もだと思った俺は再びベッドに身を委ねた。


「…貴女は一体何者なんですか…」


俺は和らいでいく痛みを堪え、問う。

黒鎧の女性はゆっくりと口を開いた。


「私は暗黒騎士団の長をしている、シャーロットと言う者だ」


はて、暗黒騎士とは?


「さっぱり分からないという顔をしているね…。まあそれが普通の反応なのは分かり切っていることなんだけど……」


最後の方に行くに連れて声が縮んでいく自称暗黒騎士団長。


「……暗黒騎士について知りたいならば、歴史の成り立ちから知らないといけないが、君は歴史、分かる?」


首を横に振る。


「ならば歴史から話そうか…時はーー」


時は未だ、人界と魔界が同じ地にあった頃。人間と魔人は対立していた。

彼らは些細なことで争っていた。

航海費が高い、物価が高い、領土を寄越せ。彼らは相手を屈服させ、配下にしたかったのだろうとも言われている。

ある日、人間の領域で魔人の死体が見つかった。

魔人は怒り、人間は自分たちは何もしていないと抗議した。結果は乏しく、両者は戦争の道を選んだ。


魔界からは魔装兵士。


そして人界からは、


暗黒騎士を。


闘いの末、勝ったのは人間だった。

敗北した魔人たちは儀式を行い、魔神を復活させ、『人間のいない世界へ』と祈り、別の世界へ行った。



「まあ、簡単な話。この時の暗黒騎士というのが私の七代前の団長さ」


言い終えた暗黒騎士団長は俺の顔を見る。


「分かって貰えたかな」

「ええ…」


理解はしたが、何故そんなことを俺に話すのだろう。


「あー、君。きっと今、何でそんなことを俺に話すのか?って思っただろう。その理由は至って簡単ーーー




ーーー君、暗黒騎士団に入団することになったから」



へ?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ