2、ミミリー侯爵令嬢VS茜という女性①
「あの~、団長?お部屋の用意ができたのですが?どうしましょう?」
「・・・・。」
「・・。団長?」
「・・・・。」
「団長!!!」
「聞こえている!」
なら早く返事をしてほしいと鉄格子の向こうで少しだけ不満そうな顔をしている男は鉄格子の向こうにいる銀髪の男に見えないのを確認してからさらに不満の顔を色濃くしていた。
第三騎士団団長をつとめるこの男、流れるような銀髪に明るい黄色見が入ったライトブラウンの男は、隣でスヤスヤ眠る女性に戸惑っていた。
時は、2時間ほど遡るー。
「じゃあ、私の他にあと二人召喚されてるの?」
「ああ、そうだ。」
今私たちは、この国の聖女召喚の魔方陣が書かれている洞窟にいる。目の前の第一騎士団のカイルという男が言うには、私の他にすでに二人召喚されているらしく、こんな短時間で数人の候補が召喚されるのは初めてらしい。
その為、バタバタしているらしく部屋にすぐ案内できないらしくこの聖女召喚の神殿で待ってもらうことになったらしい。
私的には、ここは神殿というより、地下牢に感じるんだけど、しかも魔方陣かいてあとは無人ってなんだか◯◯◯◯ホイホイを連想してしまう。ブルブル、想像して少し寒気がした。まさか、本物いないよね?因みに言葉は自動的に翻訳してくれる魔方陣が組まれているらしい。便利だな魔法。
「どうした?」
いきなり疑問系がきたのでキョトンとしていると
「足がどうかしたのか?召喚されるときに痛めたのならすぐに医師を呼ぶが?」
「あ~、地面の上にそのまま座ってるから足が冷えるな~と、でも大丈夫・」と言いながらバッグにいれておいた膝掛けを取ろうとしたら「なるほどわかった。」と素っ気なく言ったかと思うと右手を床につけた。その瞬間フワッと床が暖かくなった。なにこれ?!暖かい、床暖房みたい。驚いているとふっと笑われた。
床はポカポカ膝の上はブランケットそしてすることがない今の現状、当然やつはやって来た。睡魔だー。
隣の美丈夫をみると片ヒザを立てて黙ったまま座っている。質問すると素っ気ないがキチンと答えてくれるがそれだけだ。知り合ってまだ数分で打ち解けるわけもなく、こちらも現状がわからないのであまり自分のことを喋るのは得策ではないと思い黙ってしまう。こちらのことを気にして床暖にしてくれたので悪い人ではないと思うが安心材料にはならない。だって、異世界召喚て本人の意思無視で連れてこられてるから誘拐だよねこれ?
私は、ボストンバッグを枕がわりに寝ようと寝床を整えキャリーケースに手をおいて膝掛けを膝の上にかけ直し近くにいる銀髪の男に「することないし時間かかるみたいだし、少し寝るね。準備できたら起こしてください~。」と言い残し仮眠をとることにした。一泊二日の温泉旅行にしては多すぎる荷物も一緒に召喚されてたので、少しホットしながら眠りに入った。
その姿を見た銀髪の男は
「は?」
と、とても驚いた声をあげていたが、睡魔にはかなわずとりあえずこれから先のことは起きてから考えることにした。
ーーなんか、ボソボソ喋る声が聞こえる。
まだ、重たい瞼をうっすら開けると、そこには男二人が会話をしていた。 ああ、そうだった、異世界召喚で暇だったから寝たんだった・・・。ぼーっとする頭を左手で支えながら向くりと起きた。
「あ、聖女候補様。よかった。お部屋が準備できましたので移動をお願いします。」そこには先程部屋を用意すると行って走っていったワン子系騎士君の姿があった。
「大丈夫なんだろうな?」
「一応部屋ははなしましたけど、大丈夫かどうかはわかりません。結構好き勝手に動き回っているみたいですし。」
銀髪の団長さんがワン子系騎士君が答えると訝しげな顔をして大きなため息をついた。
地下の神殿を出て外に出るとやっぱり見慣れない景色が広がっていた。広い空間、庭園みたいな場所だけどそれなりに広い。
やっぱり違う世界に来てしまったんだなぁと思いながら徒歩を進めた。
カラカラカラ。自分のキャリーケースの音が響く。建物に入り下が硬い石のような床になったからだ。床がボコボコしているせいか歩きにくくはないがキャリーケースは押しにくい。先程ワン子系騎士君が荷物をもってくれると言ってくれたがそれは断ったので二人とも進みが遅い私を待ってくれている。
「こちらが聖女候補様のお部屋です」
とワン子系騎士君が指してくれた扉は中々重みがありそうな洋風の開きドアだった。
ーーなんか、結婚式とかで見たことあるドアに似てる。それか、テレビで見るスウィートの扉とか・・・。白い扉に扉の縁には金の細工、そして持ち手も金色。
うん。たまにはいいかもしれないけど、毎日この扉を見て出入りするのはなんだか落ち着かない気がする。
扉を開けると(正確にはワン子系騎士君が開けてくれた)そこにはやはりという部屋が広がっていた。
ホテルの最上級の部屋がここにある感じだ。泊まったことはないのでテレビで見た知識のみだけど・・・。
とても広い室内を唖然として見ていると銀髪の男が一瞬ピクリと動いた。「どうかしましたかー」と声をかけてる途中で、ヒールの音が聞こえたかと思うと段々大きくなり誰か来たのかな?と扉の方を振り替えると
「カイルさま~!!」
と、とても勢いよく銀髪の男に抱きついている女性がいた。