NO TITLE
(…………お?意外だ、俺から始められるのか。よし、今の近況報告でもするか。ってかこれは、そうだ、小説だったな、ってことは読んでる人間がいるってことだもんな。
えーっと、何から話せばいいのか分かんねえんだけど、俺だ。んーと、ネイビス、だったっけか、俺の名前。別に気に入ってもないが、嫌いってわけでもない名前だ。
あーんと、いきなり何言ってんだ、って思ってるだろ?ああ、今から話すからちょっと待ってくれ。
ここは酒場…。
ああ、やっぱダメか。一回話終わらせてから、結局また"無"の場所に戻されちまった。確かに、店の外には出たんだがなあ、そっから先、なんもねえんじゃあ歩き回るもクソもねえよ。
俺が出てった武器屋は残ってたよ、武器屋の店主、えっと名前なんだっけかな、…あーケイルディシュだ。そいつと、ガラの悪い3人は固まって止まってたぜ。
え?さっきとちょっと言ってることが違うってか?何も"無"の世界ってのはよくわかんねんだ、俺も。いや、書かれてる時と書いてる時の感覚に差があるって感じだな。今はなんとも言えない感じだ。別に俺は話を進められるわけじゃない。だから、今の状態も、まあなんというか、"書いてない状態"のはずなんだがな、さっきちょっとやろうと思ったことがあってな、それが今やってることなんだけどよ。
最初に俺が生まれた話の時から、次に話が"書かれ始めた時"、結構時間開いてたから、すげえ暇だったんだ。前に"虚無の空間に飛ばされた"って書いてるやつには言ったが、若干違う。ありゃ感覚的なもんで、実際にそうだったわけじゃない。その、言葉じゃあ表しづらいな。まあだからこそああいう風に言ったんだけど。
あと、そうだ、急に酒場とか言うからびっくりしたかもしれねえんだけど、前に話した通り、俺はやっぱり文章に干渉することはできないらしい。目の前に酒場の一つでも出せれば俺も気分が乗るかなって思って試しただけだ。特に気にしないでくれ。
なんていうか、その、分かりづらいかもしれねえんだけど、この小説の中ってのは思った以上に複雑だな。なんていうか、すげえ不便だ。ただ、腹は減らねえ、眠くもならねえ、なんかそういう部分は気にしなくていいらしいな。ただ、それでも"暇"ってのはきついな。ってことでな、俺からこの"話を始める"ってのはできるのかをずっと試していたんだ。しっかし、急にできるようになったぜ。仕組みはよくわかんねえんだけど、まあできたことを今回は喜んでおくか。)
…!?え、ちょっと何やってんの?
(お?あんたか。すまんな、ちょっとだけ話させてもらってたよ。)
……今読んでみたんだけど、君、結構適当に話すんだね、理解するのに時間かかったよ。
(ははは。そりゃあ俺は”話してる”からな、”書いてる”わけじゃあねえんだ。一々全部考えながら喋れねえよ。)
…で、どうすんのさ、一応小説なんだから、一話やるなら進めなきゃだめだよ。
(いいよ、適当なとこで終わらせちゃってくれ。)
…君、その”始める”ってのをやると一話使うの分かってやったの?
(ん?いや、特に感じはしなかったぜ。”一話”とかよくわかんねえし。)
…はあ、あんまりやらないでくれよ?いきなりだったからびっくりした。
(まあいいじゃねえか。ただ、あんたも気を付けろよ?前の時”話し方”、時々ちょっと変だったぜ。)
…話し方?…あ!あー書き間違えてる…。
(書き間違え?おいおい、勘弁してくれよ?)
…ごめんごめん、なんか齟齬とかあった?
(いや、齟齬も何も、そのまま話進めてるのあんただから、なんもなかったんだろうけど、俺はちょっと気になったかなって感じ。)
…今後気を付けるよ。
(おう、そうしてくれい。)
…あれ?
(どした?終わんねえのか?)
…終われない。
(え?ちょっと待て、これ永遠に終わらないとかないよな?)
……まさかとは思うんだけど、君から終わらせようとしないと終わらない?
(え?ああ、俺から”始めた”からか?ちょっと試してみるか。)
…うん、ちょっとやtt