表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼっちのぼっち  作者: 暁庵
3/9

死神が笑った

ソーマは、どちらかと言うと、死神の筈なのに、涙脆く、正義感がある。。。かどうかは、わかりませーん笑

〘はい、大きく深呼吸して。吸ってーーー、吐いてーーーっ!〙


 朝食後、部屋に戻った僕は、早速自身の中へソーマを入れ込む事に成功したけど···


「んなっ!!」


〘お、や、す、み、BABY〙


 なにがどうなったか?いきなり、ソーマに襲われ、意識を失った。




 ポンッ!!


〘遅い登場の仕方ねぇ。リューク〙


【ふんっ!全て取り付けてやったぜ?感謝しろ】


 鏡の前で、啓吾の着てる制服を着たソーマ。


〘ちっさいわねぇ!〙


 グッと文句を言いたくなるが、飲み込む。


〘さ、行こうかしら?ふふっ〙


 部屋を出ると啓吾の母上が、階段を昇っているところ。


「あら、ちょうど良かったわ。いま、あなたを呼びに行こうとしてたのよ」


 啓吾の母上は、目のあたりがよく似ていた。婆さまは、母上とあまり似てはいなかったが···


〘な、なに?〙


 母上や婆様にバレぬよう、啓吾と似た喋り方をする。


「お友達がね、お迎えにきてくださったのよ」


 何も知らない親にしては、今回の件は、酷なことだろう。


 だが···


─俺は、苛めってのが超絶許せねぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!


〘わ、わかった。行くから···〙


 これまでに何百回ともそれが原因で自殺する子供を見てきたが、いい気にはならなかった。


 玄関に向かうと、


「やぁっ!」屈託のない笑顔で軽く手を上げる男がいた。確か···


〘大川?〙


 不信気な顔でそう言うと、そいつは、


「そうだけど。お前、記憶でも失った?」


 ことにしよう。やりやすい。


〘う、うん。ちょっと···〙


「じゃ、早く行きなさい。先生には、ちゃんと言ってあるからね!」


 母上に見送られ、外に出ると朝の散歩から帰ってきた婆様と合った···


「啓吾?あー、今日からか。ようけ頼むな」


 しわくちゃな顔で笑って言った。


─まさか、な···。俺らの存在は、人間に知られてはならん。もし見えるとすれば···


〘行ってくるから···〙


 そう言い、大川っていうヤローと学校へ向かう···




 ─んだよな?


 教えられた道とは、違う道へ進んでいく。


〘大川···?〙


「いやぁ、助かったよ···。おい、連れてきたぞ」


 小さな公園の大きな遊具の影から、数人の男女が出てきた。


〘誰?〙


 啓吾から中心人物だけを教えられたから、目の前にいる数人の名前が···


(左から紅月、大竹、木下、大橋···)


〘お前は、黙ってろ···。失礼。えっと、紅月、大竹、木下、大橋?〙


 ゆっくりと指を指していく。


「ふぅん。あんた生きてたんだ」


「あのまま死ねば良かったのに」


 一歩一歩近付いて来て、僕を取り囲む。


〘······。〙


(逆らっちゃ駄目だよ!)


〘うるさいっ!黙ってろ!〙


「は?なに言ってんの?お前」


「気でも狂ったのか?」


「ま、こんなとこでもあれだからさ」


「おい、啓吾?」


 振り向いた瞬間、強烈な痛みが腹にきて蹲る。


 続いて、背中にも···


 ドサッ···


「おい、それ持ってこい。行くぞ。遅刻する」


 目の前にドサッと置かれた学生鞄···


(大丈夫?)


 心配そうな声が、耳に伝わる。


〘あぁ···〙


 小さく呟き、其々の鞄を持つとかなりの重量だ。あくまでも!


 それらを持ちながらでも、大川達は僕の身体を他の人に見られないように、小突いたり、殴ったりしていた。


「お疲れ。じゃ、学校着いたし···」


─やっと解放か?


 と思ったが···




 教室に入ると騒がしかった中が、一瞬静かになって、皆の視線が一点に注がれる。


「ちっ」


「生きてたんだ」


「へぇ」


「おはよ、死に損ない」


「死ねよ」


 と、まぁ朝の挨拶とは違う言葉が飛び···


 僕は、花瓶が置いてある机に向かう。


〘ここか?〙


(うん)


 邪魔な花瓶を後ろの棚に置き、鞄から教科書等を出して行く。


 リーンゴォーン···リーンゴォーン···


 朝のチャイムが鳴ると、他の皆は慌てて席に着き、ドアからせかせかした足取りで···


(小林先生。名前、呼ばれないから)


〘うむ〙


 何気なく観察していると、貧相な顔立ちで俺だったら好きにならねータイプだ。チラッと目は合ったが···


「今から出席を取る。相川ー?」


「はい」


「井上ー」


「はい」


「後田ー」


 と続き···。啓吾の言った通り、僕の名前は呼ばれなかった。


─チェックは、してるんだ。


「全員、いるな。成瀬···」


 全員の視線が、僕に集まる。


〘あ、俺···僕か。はい?〙


「お前···」


─何を言うんだ?励ましの言葉か?


「生きてたのか···」


 そう言って、その小林と言う教師は笑った。


〘あ?あぁ、はい···〙


(怒らないでよ?おとなしくしてて)


〘うるさいって。少しおとなしくしてろ〙


 傍から見れば、独り言をぶつぶつ言ってるだけだろうが、啓吾と喋っている。


 1時間目は、国語の授業···


〘······。〙


─つまらん。これが授業っていうのか?


 只管、教師が教科書を読み、黒板に書いた物を生徒が書き写していく。


 眠くなりそうな授業が、なんとか終わると···




「記憶喪失?こいつが?」


 机に僕の頭をグリグリ押し付けながら、男が言った。


〘······。〙


「じゃ、私のことわかる?」


〘さぁ?〙


 解き放たれた頭を振りながら見ても、教えられてないから名前するわからない。


「あーん。ショック!彼女なのに?」


─彼女?啓吾に?


(違うから!絶対に違うから!僕、ちゃんと···うん)


〘ほう?〙


「お前、なに言ってんだ?気持ち悪いな」


 2時間目、3時間目、4時間目はの授業は、来る先生が何故か俺の顔を見て安心して、優しく声を掛けてきた。


(みんな僕がされてること知らないから。他のクラスの子も、あの子も···)


 昼休み···


 段々と苛ついてきた俺は、母上手作りの弁当を持ち、奴らの前から消えた。




 パカッ···


「お母さんのお弁当だー。久し振りだ」


〘だな。お前、病院の飯しか食ってねーからな〙


 僕が入院した病院は、院外からの食べ物の差し入れは禁止されていた。


〘その黄色いのなんだ?〙


「これ?食べる?卵焼き」


 可愛い感じの弁当から、1つ四角くて黄色い卵焼きをつまみ、口へと運ぶ。


〘うまっ!!この卵焼き?なんで出来てるんだ?〙


 余りの旨さにほっぺたが緩む。


「何って、卵だよ?知らない?ニワトリの卵」


〘卵?鳥?〙


 あっちの世界にも取り囲むは居るが、可愛くはない。むしろ、啓吾や母上が見たら腰を抜かすが···


「美味しいでしょ?へへっ」


 俺は、啓吾とあって初めてこいつの嬉しそうな顔を見た。自慢の母上であり、自慢の婆様なんだろう。


 卵焼きも隣の肉じゃがという茶色いのも、サラダも全てが美味かった!人間は、こんなのを食ってるのか!と思うと羨ましくなる。


 弁当を食い終わると、のんびりとブロックに寝そべる。グラウンドからは、キャーキャーという声で賑わっている。


 少し昼寝をし、教室へと戻った僕に、大川は後から蹴りを入れて、僕は床に倒れた。


〘······。〙


「お前、どこ行ってた?便所か?」


「なにお前、便所で弁当食ってたのか?」


「きったねー」


 這いつくばって、机に座る。


「へぇ、可愛い弁当箱だな」


〘あっ···〙


 啓吾の母上が、作ってくれた弁当が入ってた箱を奪われた挙げ句、ボキッと箸を折られ箱を潰された。


 ピシッ···


─弁当。美味しい卵焼きが入ってた。啓吾の母上手作りの···


 ピシッ···


〘んなっ···〙


 立ち上がろうとしたが、小林先生が教室に入ってきて、午後の授業開始のチャイムが鳴った。


「5時間目は、急遽自習となったから、成瀬の歓迎会をしようと思う」


─なにこいつ、ニヤニヤ笑ってんだ?


「「「賛成ーーーーっ!!!」」」


???


(気をつけて。僕、ちょっと寝るから)


─お前、安心仕切ってるだろ!


〘歓迎会?何するんだ?〙


 近くにいた男に聞く。


「俺ら全員でお前を歓迎するんだ。お前入院してたからな。回復早かったし?」


〘ふうん。歓迎会···ね。ふふっ〙


 この時、僕が寝ていなかったら、あんな悲劇は起きなかったのかも知れなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ