死神が笑った
ソーマは、どちらかと言うと、死神の筈なのに、涙脆く、正義感がある。。。かどうかは、わかりませーん笑
〘はい、大きく深呼吸して。吸ってーーー、吐いてーーーっ!〙
朝食後、部屋に戻った僕は、早速自身の中へソーマを入れ込む事に成功したけど···
「んなっ!!」
〘お、や、す、み、BABY〙
なにがどうなったか?いきなり、ソーマに襲われ、意識を失った。
ポンッ!!
〘遅い登場の仕方ねぇ。リューク〙
【ふんっ!全て取り付けてやったぜ?感謝しろ】
鏡の前で、啓吾の着てる制服を着たソーマ。
〘ちっさいわねぇ!〙
グッと文句を言いたくなるが、飲み込む。
〘さ、行こうかしら?ふふっ〙
部屋を出ると啓吾の母上が、階段を昇っているところ。
「あら、ちょうど良かったわ。いま、あなたを呼びに行こうとしてたのよ」
啓吾の母上は、目のあたりがよく似ていた。婆さまは、母上とあまり似てはいなかったが···
〘な、なに?〙
母上や婆様にバレぬよう、啓吾と似た喋り方をする。
「お友達がね、お迎えにきてくださったのよ」
何も知らない親にしては、今回の件は、酷なことだろう。
だが···
─俺は、苛めってのが超絶許せねぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!
〘わ、わかった。行くから···〙
これまでに何百回ともそれが原因で自殺する子供を見てきたが、いい気にはならなかった。
玄関に向かうと、
「やぁっ!」屈託のない笑顔で軽く手を上げる男がいた。確か···
〘大川?〙
不信気な顔でそう言うと、そいつは、
「そうだけど。お前、記憶でも失った?」
ことにしよう。やりやすい。
〘う、うん。ちょっと···〙
「じゃ、早く行きなさい。先生には、ちゃんと言ってあるからね!」
母上に見送られ、外に出ると朝の散歩から帰ってきた婆様と合った···
「啓吾?あー、今日からか。ようけ頼むな」
しわくちゃな顔で笑って言った。
─まさか、な···。俺らの存在は、人間に知られてはならん。もし見えるとすれば···
〘行ってくるから···〙
そう言い、大川っていうヤローと学校へ向かう···
─んだよな?
教えられた道とは、違う道へ進んでいく。
〘大川···?〙
「いやぁ、助かったよ···。おい、連れてきたぞ」
小さな公園の大きな遊具の影から、数人の男女が出てきた。
〘誰?〙
啓吾から中心人物だけを教えられたから、目の前にいる数人の名前が···
(左から紅月、大竹、木下、大橋···)
〘お前は、黙ってろ···。失礼。えっと、紅月、大竹、木下、大橋?〙
ゆっくりと指を指していく。
「ふぅん。あんた生きてたんだ」
「あのまま死ねば良かったのに」
一歩一歩近付いて来て、僕を取り囲む。
〘······。〙
(逆らっちゃ駄目だよ!)
〘うるさいっ!黙ってろ!〙
「は?なに言ってんの?お前」
「気でも狂ったのか?」
「ま、こんなとこでもあれだからさ」
「おい、啓吾?」
振り向いた瞬間、強烈な痛みが腹にきて蹲る。
続いて、背中にも···
ドサッ···
「おい、それ持ってこい。行くぞ。遅刻する」
目の前にドサッと置かれた学生鞄···
(大丈夫?)
心配そうな声が、耳に伝わる。
〘あぁ···〙
小さく呟き、其々の鞄を持つとかなりの重量だ。あくまでも!
それらを持ちながらでも、大川達は僕の身体を他の人に見られないように、小突いたり、殴ったりしていた。
「お疲れ。じゃ、学校着いたし···」
─やっと解放か?
と思ったが···
教室に入ると騒がしかった中が、一瞬静かになって、皆の視線が一点に注がれる。
「ちっ」
「生きてたんだ」
「へぇ」
「おはよ、死に損ない」
「死ねよ」
と、まぁ朝の挨拶とは違う言葉が飛び···
僕は、花瓶が置いてある机に向かう。
〘ここか?〙
(うん)
邪魔な花瓶を後ろの棚に置き、鞄から教科書等を出して行く。
リーンゴォーン···リーンゴォーン···
朝のチャイムが鳴ると、他の皆は慌てて席に着き、ドアからせかせかした足取りで···
(小林先生。名前、呼ばれないから)
〘うむ〙
何気なく観察していると、貧相な顔立ちで俺だったら好きにならねータイプだ。チラッと目は合ったが···
「今から出席を取る。相川ー?」
「はい」
「井上ー」
「はい」
「後田ー」
と続き···。啓吾の言った通り、僕の名前は呼ばれなかった。
─チェックは、してるんだ。
「全員、いるな。成瀬···」
全員の視線が、僕に集まる。
〘あ、俺···僕か。はい?〙
「お前···」
─何を言うんだ?励ましの言葉か?
「生きてたのか···」
そう言って、その小林と言う教師は笑った。
〘あ?あぁ、はい···〙
(怒らないでよ?おとなしくしてて)
〘うるさいって。少しおとなしくしてろ〙
傍から見れば、独り言をぶつぶつ言ってるだけだろうが、啓吾と喋っている。
1時間目は、国語の授業···
〘······。〙
─つまらん。これが授業っていうのか?
只管、教師が教科書を読み、黒板に書いた物を生徒が書き写していく。
眠くなりそうな授業が、なんとか終わると···
「記憶喪失?こいつが?」
机に僕の頭をグリグリ押し付けながら、男が言った。
〘······。〙
「じゃ、私のことわかる?」
〘さぁ?〙
解き放たれた頭を振りながら見ても、教えられてないから名前するわからない。
「あーん。ショック!彼女なのに?」
─彼女?啓吾に?
(違うから!絶対に違うから!僕、ちゃんと···うん)
〘ほう?〙
「お前、なに言ってんだ?気持ち悪いな」
2時間目、3時間目、4時間目はの授業は、来る先生が何故か俺の顔を見て安心して、優しく声を掛けてきた。
(みんな僕がされてること知らないから。他のクラスの子も、あの子も···)
昼休み···
段々と苛ついてきた俺は、母上手作りの弁当を持ち、奴らの前から消えた。
パカッ···
「お母さんのお弁当だー。久し振りだ」
〘だな。お前、病院の飯しか食ってねーからな〙
僕が入院した病院は、院外からの食べ物の差し入れは禁止されていた。
〘その黄色いのなんだ?〙
「これ?食べる?卵焼き」
可愛い感じの弁当から、1つ四角くて黄色い卵焼きをつまみ、口へと運ぶ。
〘うまっ!!この卵焼き?なんで出来てるんだ?〙
余りの旨さにほっぺたが緩む。
「何って、卵だよ?知らない?ニワトリの卵」
〘卵?鳥?〙
あっちの世界にも取り囲むは居るが、可愛くはない。むしろ、啓吾や母上が見たら腰を抜かすが···
「美味しいでしょ?へへっ」
俺は、啓吾とあって初めてこいつの嬉しそうな顔を見た。自慢の母上であり、自慢の婆様なんだろう。
卵焼きも隣の肉じゃがという茶色いのも、サラダも全てが美味かった!人間は、こんなのを食ってるのか!と思うと羨ましくなる。
弁当を食い終わると、のんびりとブロックに寝そべる。グラウンドからは、キャーキャーという声で賑わっている。
少し昼寝をし、教室へと戻った僕に、大川は後から蹴りを入れて、僕は床に倒れた。
〘······。〙
「お前、どこ行ってた?便所か?」
「なにお前、便所で弁当食ってたのか?」
「きったねー」
這いつくばって、机に座る。
「へぇ、可愛い弁当箱だな」
〘あっ···〙
啓吾の母上が、作ってくれた弁当が入ってた箱を奪われた挙げ句、ボキッと箸を折られ箱を潰された。
ピシッ···
─弁当。美味しい卵焼きが入ってた。啓吾の母上手作りの···
ピシッ···
〘んなっ···〙
立ち上がろうとしたが、小林先生が教室に入ってきて、午後の授業開始のチャイムが鳴った。
「5時間目は、急遽自習となったから、成瀬の歓迎会をしようと思う」
─なにこいつ、ニヤニヤ笑ってんだ?
「「「賛成ーーーーっ!!!」」」
???
(気をつけて。僕、ちょっと寝るから)
─お前、安心仕切ってるだろ!
〘歓迎会?何するんだ?〙
近くにいた男に聞く。
「俺ら全員でお前を歓迎するんだ。お前入院してたからな。回復早かったし?」
〘ふうん。歓迎会···ね。ふふっ〙
この時、僕が寝ていなかったら、あんな悲劇は起きなかったのかも知れなかった。