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戦士と出逢いと廃坑と歓迎会。

 唐突で申し訳ないが、あれから一年が経った。

 と、さっき聞かされた。


 元々死に体のうえに右腕が壊れているところに、追い打ちで内臓の破壊と左手の消失などが重なり、普通なら既に天に召されていてもおかしくはなかったと言う。


 損傷の大部分はネフェリが治してくれたそうだが、細かい傷はそのまま残ってしまったらしい。どうにも、あの娘の治癒魔法は大雑把のようで、大きな怪我しか対象に出来ないとかなんとか。きっと熟練度が足りていないのだろう。


 そんな訳で、失った血とか内側に残った傷の治癒を促進させる為、俺の体は意識を落とし続ける選択をしたらしい。


 起きた頃には全快していて、お陰で程よく混乱してしまった。


 全治一年。無くなった左手も何故か戻ってきて結果オーライだ。


 そう言ったらレオンハルトに鎚で頭を叩かれた。レベルアップして熟練度の上がった奴の鎚捌きは目を見張るものがあり、お星様が見えた。


 次に気が付いた時はレオンハルトの部屋だった。


 レオンハルトは心底申し訳なさそうに謝罪を口にした。


 どうやら、この一年で彼の鍛冶の腕はめきめきと上達したらしく、もう親父さんを越えてしまったらしい。


 まぁ、親父さんの適性値はB。レオンハルトの適性値はSなのだから、成長値に差が出るのは当たり前である。


 「四つ上だからって上から目線止めろよな」とはレオンハルトの言だ。そのまま鎚を以て挑んで来たので、優しく撫でておいた。戦闘経験はまだ俺の方が高いらしい。


 辺境の村なんだから年齢差なんてあまり意味ないのに、変なところに拘るやつである。


 一年間寝たきり生活だった訳だが、『筋力増加』のお陰か、リハビリが必要になる程筋力は落ちていなかった。


 この技能は端に筋肉を増やし易くするだけの技能だとばかり思っていたが、常時発動の仕様上、常に筋肉を魔力で補強しているようだ。


 俺が廃坑であれだけ暴れられたのも、この技能の恩恵が大きい。


 強靭は、どちらかと言えば姿勢制御の意味合いが強い。怯まないよう、仰け反らないよう、この身を支える役割が強靭だ。補強とはまた違う仕様なのだろう。


 そして派生した鉄壁なる技能。どうやら全体防御力が上がるようだ。熟練度の上がったレオンハルトの鎚で頭が割れていないのがいい証拠である。俺が戦士じゃなければ死んでいたぞレオンハルト。


 でもって、楽しみなのが急加速クイックダッシュなる新技能だ。何故かレベル4とレベル5のスキルを統合して創られたらしい技能である。ログには要請とあるが、最後の辺り記憶が曖昧で覚えていないのよね。


 まぁ、便利だから構わないのだけど。


 技能は特定の箇所を魔力で補強し、耐久力等を高める役割がある。強撃スマッシュ強撃スマッシュとよく好んで使っているが、別に強撃スマッシュを発動させずとも強撃は出来る。だって力一杯振ってるだけだもの。


 例えばもう一つの新技能の乱打。強撃スマッシュを連続して使うのと何処が違うのかと言えば、補強される範囲が違う。

 強撃スマッシュは実際に攻撃に使われる武器や手、そして足を補強するけれど、腕といった筋肉は剥き出しのままだ。

 乱打は武器を振る筋肉まで補強してくれる。

 つまり、力一杯楽に連打出来る。


 補強されるのと補強されないのでは大きく違ってくるのだ。


 要はあれだ。ぶっちゃけ外付け筋肉だ。


 ただ、乱打は棍棒術技能なので、棍棒カテゴリーの武器でしか使えない。打撃武器が有効でない魔物が出た際には使えない技能となる悲しさ。


 さてさて、それよりも急加速クイックダッシュである。


 実際に使ってみて分かる便利さと扱いにくさ。


 どうやらこの技能、一歩目から全速力と同じ速さを出せるようだ。しかも、補強されるのは一歩だけ。その後は自前の脚力で制御するしかないと来た。


 うん。確かに一歩目から全速力を出せるのはいい事だ。相手の虚を突ける。けれど制御が難しい。相手との距離が遠ければ気にはならないが、問題は近距離の場合だ。一歩目から全速力、つまりブレーキ掛けると超滑る。


 なんとも言えない性能だった。


 兎に角、意識して使用し熟練度を上げ、制御出来るようにしなければならない。実戦で使う事を前提とするなら、特訓あるのみである。


 んで、話は変わるがじっさま率いる長老衆の支持が鰻登りしていた。


 どうやらじっさま自らが率先して救助活動を行った事、そして付与術師としての実力を遺憾無く発揮した結果、若者からの信頼をもぎ取ったようだ。


 流石たぬきじじぃ。一粒を二度美味しくさせやがる。


 ここ最近落ち気味だった長老衆への信頼も取り戻し、じっさまとしては万々歳だろう。


 スポーンブロックの多数獲得も、村を潤わせている。


 我先にスポーンブロックを手に入れようと行商人が行き交う結果、少しずつ移住してくる人が増えてきているらしい。そろそろ村から町という規模になり、正式に認められる日も近いのかもしれない。


 「スポーンブロックが大量発生した原因を特定する為に、王都から研究者を伴った調査団が来る予定だ。研究員が女だった場合、こませ」とはじっさまの言である。


 こませとか、あんた何時の時代の人ですか?


 他にも適当に相手したら捨てろとか、捨てたら若いのに拾わせるとか、かなり酷い事を言っていた。その辺りはとても村第一主義者らしい考えである。


 捕まえた研究者に青空教室でもやらせれば、村の識字率は大きく上昇するだろう。他にも、有している知識は村にとっては貴重だ。


 じっさまとしては、眼光を普段以上に光らせている事だろう。そろそろ隠居したいとか言っていた割りに、結構手と口を出すお人だ。


「なぁ、レオンハルトよ。流石にこれは今更過ぎるだろ。というかしてなかったのかよ。てっきりもうやったのかと思ってたが」


「うるせぇな。アルバートが起きるの待ってたら一年経ってたんだよ。ぐぅすか寝やがって。そんなに長く寝るなら予め言えや」


「えー。もう、この子ったら無茶振りばかりするんだから! 仕方の無い子ね」


「張っ倒すぞ?」


「っは! 強靭と鉄壁を有するこの俺を張り倒す? 無理無理絶対むぅーりぃー、って、鎚を持ち出すのは狡くないかね!? やめ、やめろぉー! 振り上げるんじゃない! 気をしっかり持てぇー!」


「ふん。分かったら生意気な口を利くんじゃねぇ」


「やだっ。この子ったら圧政者みたいな口振りする、コワイ」


「主にその変なお姉言葉が腹立つ訳だけど、その辺分かってんのかオォン?」


「ふぅ。場を和ませようという気遣いを無下にするなんて。わたし、そんな子に育てた覚えはないわ!」


「育てられてねぇよ……! くっそ腹立つ!」


「お母様、と呼んでくれても良くてよ?」


「お前はいちいち俺にツッコマせないと気が済まないのか? このハゲ」


「俺がハゲたら主にレオンハルトの鎚が原因な訳だが」


「なんか言ったか?」


「レオンハルトって足臭いよね!」


「分かった。お前わざとだな? わざと俺を怒らせてるんだな? 良いだろ、分かった。怒ってやんよゴラァアアアア!!」


「ちょ!? 鎚を持ち出すのは反則ぅ!」


「おいお前等、そろそろちっこいのがネフェリの嬢ちゃん連れてくんぞ。遊んでないで準備しろよ」


「こっちは終わってますぅー、レオンハルトが終わってないのに絡んで来るんですぅー」


「あっ、てめっ、汚ねぇぞ!」


「アル坊、この飾りここで良いのか?」


「適当にそれっぽくしてくれればオーケーです。そうそう、そんな感じで」


「親父!? 人の役割盗んなよ! それ俺の仕事!」


「これで締めぇだ」


「嗚呼っ! うぅ、俺の仕事ぉ……」


「ほら、男泣きしてないでクラッカー、クラッカー」


「片手に三本持ちだと? 心臓飛び出ねぇかなあの嬢ちゃん」


「大丈夫でしょう。そら、来たみたいですよ」


「ふが? (バン! バン! ババン!)ふ、ふがぁっ!!??」


「ケケケ、困惑してやんの」


「そりゃ、絶妙なタイミングで鳴らしゃ引っくり返るわな。ほれ、立てるか嬢ちゃん」


「ふがぅ、ふがぅー……」


「ネフェリの歓迎会なんだから、目を回してくれるなよ」


「やったのアルバートだがな」


「それじゃ、改めまして」


『ようこそ! ミュレリッツの村へ!』


















 つづく?

 幕間を幾つか投下して一旦終わりとします。

 某友人がせっついて来るので、例のあれをいい加減書かないとならないので、メンドイ。

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